人間はみんな御仏になれるとおまえは言った。じゃあ、それはおまえの声だ。おまえの中の、御仏の前借りだ。

第六特異点 神聖円卓領域 キャメロット

マシュ「あの……

一つ、尋ねてよろしいでしょうか?

西遊記を読んで気になっていた事なのですが……

三蔵さんは、どうしてそこまで旅を続けたのですか?

玄奘三蔵の伝説には、その、貴方の動機があまり描かれていなくて……」

三蔵「もっちろん、有りがたいお経を取ってきて、偉くなって、雷音寺で左うちわの生活をするため!

……なんて、それもホントだけど。

あたし、諦めが悪いの。

凄く悪いの。

三度、九度生まれ変わったぐらいじゃ全然懲りないの。

あと“天竺に行こう”とは思っていなかったわ。

“絶対に天竺に行く”そう誓ってた。」

マシュ「誓い……

仏教における誓願、というものですか?

自らが解脱する為につける条件、といった。」

三蔵「ううん。

誓願はまた別よ。

……あたしね、仏様のお声が聞こえる時があるの。

それが聞こえちゃったらもう止められない。

あたしは臆病で、泣き虫で、我が儘だけど——

仏様のお声を聞いちゃったら頑張るしかないでしょ?

“天竺に行きなさい”

“悟空をこらしめなさい”

“この聖都から出なさい”

“砂漠を越えなさい”

そんな感じ。

だから今回も砂漠を越えたわ。

悟空は“それは天の声だけど、天からの声じゃない”

“おまえの胸の裡から生じる声だ”って言ってた。

“人間はみんな御仏になれるとおまえは言った”

“じゃあ、それはおまえの声だ。

おまえの中の、御仏の前借りだ”

バカ弟子のクセに格好いいコト言うのよね、たまに。

ま、どっちでもいいわ。

とにかく、あたしの行動にはあんまり理屈はないの。

やりたい事をやりたいようにやるだけ。

ううん——

やるべきだと感じた事を、胸を張って信じてるだけ。

貴方も同じよ、きっと。

あたし、高僧だから分かっちゃう。」

マシュ「……そうかもしれません。

以前、お世話になった方——

ドレイクさんもそう言っていました。

わたしはもう自分の願いを持っている。

けれどそれを自覚しなくてもいい。

その理由を知るのは最後でいいのだと。」

三蔵「?

よく分からないけど、あれかしら。

“私はこのために生きているんだ”

ってお尻を叩かないと走れない人間と、

“私はこのために生きていたんだ”

って、最後に納得できる人間の違い?

いいこと言うけど、そいつはあたしたちとは正反対ね。

きっと物欲まみれの英霊に違いないわ!」

マシュ「はい。

たいへん魅力的な方でした。

自分の欲望のまま世界を救ったのですから。」