“どうしているのか分からないが、事件とは無関係の、別にいてもいなくてもいい傍迷惑な謎の人物”

第六特異点 神聖円卓領域 キャメロット

マシュ「聖杯を……

手に入れていた?

人理焼却が起こる前……

レイシフトを行う前の状況で、ですか?」

ホームズ「イエス。

そして記録には続きがある。

聖杯戦争時、マリスビリーは助手を連れていた。

その人物は聖杯戦争の翌年、特例としてカルデアのスタッフとして招かれている。

22歳で医療機関のトップとは、まさに異例の抜擢だ。

正常な人事である、と公言するのが憚れるぐらいには。」

「……医療機関のトップ……」

マシュ「……ロマニ・アーキマン、ですね?

ドクターは……

カルデアに来る前から、前所長と知り合いだったと?」

ホームズ「イエス。

そして、更におかしな事に。

このロマニ・アーキマンという人物の経歴は一切不明だ。

どう調べても聖杯戦争以前の記録を見つけ出せない。

ヘルメスをさらに使えば判明するだろうが……

年ごとに更新される何十億という個人データからたった一人の人生をサルベージするには時間がない。

それがドクター・ロマンを信用していない理由だ。

彼は間違いなく人間であり、魔術師ではないが……

何かを隠している。

それもとびきり、真相に近い何かをね。」

マシュ「………………。」

三蔵「あのー……

ちょっといいかしら。

いい加減黙ってるのも疲れたから茶々を入れる……てワケでもないんだけど……

そのマリスビリー?

とかいう人は聖杯を手に入れたのよね?

その人は、いったい何を願ったの?」

ホームズ「——さて。

残念ながらヘルメスには個人の願望は記録されていない。

残されているのは結果だけだ。

ヘルメスによると、マリスビリーはその後、魔術師として大成している。

時計塔において、カルデアとアニムスフィア家の理論は『机上の空論に過ぎない』と軽視されていた。

しかし、度重なる成功によってその評価は覆された。

英霊召喚システムの確立。

未来観測だけでなく、レイシフトという時代への干渉を可能とさせる仮想実験。

2004年を境に、天文台にすぎなかったカルデアは研究施設ながらの設備を持つようになった。

常識的に考えれば、マリスビリーが望んだものは富だろう。

彼には人理焼却を望む理由がない。

資料から読み取れる彼の性質は“良識”だ。

人並みの欲があり、人並みの妬みを持ち、人並みの幸福を愛する——

そんな人物だ。

となれば、彼は第三者に利用されたか、あるいは——

本人が気づかないまま、破滅の地雷を踏んでいたか、だ。」

マシュ「第三者……

それはレフ教授……

なのでしょうか?」

ホームズ「レフ・ライノールがカルデアに赴任したのは1999年。

観測レンズ・シバの技術提供時期と一致する。

レフ・ライノールは魔術王の手の者だった。

それは疑いようがない。

……実はここが私のもっとも頭の痛いところでね。

レフはカルデアに目を付けて潜りこんだのだろう。

となると、2004年の聖杯戦争以前からカルデアには何かの問題があった事になる。

2004年の聖杯戦争はマリスビリーにとってただの資金繰りで、人理焼却とは関係がない、という可能性だ。

そうなると……

実に口にしたくないのだが……

ロマニ・アーキマンは、あれだ。

“どうしているのか分からないが、事件とは無関係の、別にいてもいなくてもいい傍迷惑な謎の人物”

……という結論も、出てきてしまう訳だ。」

三蔵「なにそれ! おっかしー!」

「いてもいなくてもいい謎の人物……! ロマンらしい!」

マシュ「はい、とてもドクターらしいです!」

ホームズ「私としては、彼は依然として重要参考人なのだがね。

諸君もここでの話を彼に伝えるのは控えてくれ。

彼の秘密が明らかになるまで信用はできない。

少なくとも、ロマニ・アーキマンは聖杯戦争の結末を知った上に、キミたちに黙っているのだから。」