マナはとてつもない魔力量であり、オドはほんのわずかな魔力量となる。 西暦以後、このマナは減少の一途を辿っている。

第七特異点 絶対魔獣戦線 バビロニア

ダヴィンチ「さて、私の出番かな?

サークル設置時のミニ教室、魔術世界のマメ知識講座、今回は——

神代と神霊について。

せっかく神代の終わりと言われる紀元前なんだから、これはもうピッタリの内容だ。

神霊の話は前にも聞いただろうけど、神代というのは簡単に表現すれば『神々の時代』だ。

魔術世界において、大気中の魔力は大源(マナ)と呼ばれる。

これは過去に遡るほど多くあったそうだ。

ようは地球そのものが持つ魔力だね。

人間にとっては使い放題のガソリンのようなものだった。

対して、魔術師や英霊の持つ、個人の魔力は小源(オド)と称される。

魔術回路と呼ばれる特殊な神経組織から生成される魔力だが、人間と地球とでは存在規模(スケール)が違う。

マナはとてつもない魔力量であり、オドはほんのわずかな魔力量となる。

西暦以後、このマナは減少の一途を辿っている。

結果、二十一世紀の魔術師は生命体から取れる魔力……

小源だけで神秘学を実践している状況だ。

なぜ大源が減少したかは今回は割愛。

ブリテン島にも関わりのある話だから、いつかテーマになる時も来るだろう。

ともかく、神代には大源たる魔力が溢れていた。

そして量だけでなく、その質も違っていた。

西暦以後の大源は第五架空要素と呼ばれる、人工的な魔力でね。

西暦以前、まだ人間の文明が未発達だった頃の魔力はこう呼ばれていた。

真エーテル。

惑星を生む力、天体を成すもの。

第五真説要素、とね。

この真エーテルこそ神を成立させる根源だ。

この時代を統べていたのは人間じゃない。

神々だ。

自然や概念とも言い換えてもいいかな?

空に神あり、地に神あり、海に神あり。

愛は神であり、恨みは神であり、戦いや死も神。

自然法則は神々の振るう権能そのもの。

世界は神々のものであり、神々そのものであったとも言える。

現代にも残る世界各地の伝説や信仰、宗教における神々とそれらが正確に同一なのかは諸説あるとして——

少なくとも、現代の魔術師たちは、伝説の多くを神代の解釈であると見なしている。

神々は確かに在った。

しかし——

人の時代の訪れと共に姿を消していった。

この消失は三段階に分かれていて、衰退、決別、契機とになる。

契機は紀元前七世紀頃だと観測されている。

衰退は一万四千年前に大規模な災害があり、そこから先史神話文明は衰退したのでは、ともね。

キミたちのいる紀元前2600年はそんな神代の終わり、神々が消える決別の時だ。

それはメソポタミアも例外じゃない。

いや、メソポタミアの神々は独自の方法で神の時代を続けようと画策したが、それは一人の王によって台無しにされた。

人と神を繋ぎ止める為に作られた王。

神と人の混血。

天の楔と期待された男。

——英雄王ギルガメッシュ。

彼はあろう事か、神々に与えられた使命とは真逆の道を良しとした。

即ち、神からの卒業だ。

ギルガメッシュの反抗によってメソポタミアの神々はその力を次第に失い、地上から姿を消した。

その時代でさえ、もう神々はいない。

役目を終えこの世界から消え去った。

ここではない高次にて、虚ろな神霊として世界を見守っている……というのが現在の定説だ。

主神たちは地上から姿を消し、その名残が残っているだけだろう。

それもあと1000年もすれば完全に薄れ、やがて人々の意識には“伝説”としてすり替わる。

なので“生きている”神々と出会う事はないと思っていたけど、まさか、女神同盟とはね。

先ほどのデータを見ると、女神イシュタルはかぎりなく“本体”に近い霊基を持っているようだ。

……神の“権能”は魔術を上回る神秘。

全知全能の発現と言っていい。

まだその時代の“敵”がなんであるのかは判明していないが、女神が敵勢力である事は確かだ。

くれぐれも気をつけて、藤丸君。

そうはいかないのは目に見えているけど、あまり無茶はしないようにね!」