女神は生命を育むものだが、混沌に落ちた女神は人間と敵対する魔獣たちの母となる。百獣母胎と呼ばれる権能だ。

第七特異点 絶対魔獣戦線 バビロニア

アナ「ムシュマッヘまで現れました……

北からの魔獣は数を増す一方です……」

マーリン「そうだね。

『十一の子供たち』がここまで出てくると、北に巣くう『魔獣の女神』をティアマト神と同一視する輩も出てくるというものだ。」

「十一の子供たち……?」

アナ「メソポタミアの創世神話にある、神々の母ティアマトの、最後の子供たちの事です。」

ロマニ「ティアマト神はメソポタミアにおける原初の神だ。

いや、第一世代の神、と言うべきかな。

メソポタミア神話では宇宙をアンキと呼ぶが、アンとは『天と男神』、キは『地と女神』を意味する。

女神は生命を育むもの、男神はそれを支配するもの、という関係だね。

上ではまだ天が名付けられず、下ではまだ地が名付けられていなかった頃。

男神アプスーは女神ティアマトと交わり、多くの神々を創り、子供たちとした。

けれど子供たちが成長すると、権力を欲し、世界をより広くする為にティアマトに反逆する。

ティアマトは自分の子供たちに裏切られた事を怒り、哀しみ、新しい子供たちを作り上げた。

しかしそれはアンの欠けたキだけの創造だった。

結果、生まれた子供たちは神ではなく、恐ろしい合成獣となってしまった。

これが『ティアマトの十一の子供たち』だ。」

マーリン「七つの頭の蛇たち、ムシュマッヘ。

凶悪な獣たち、水の蛇ウシュムガル。

毒の蛇、竜獣バシュム。

恐ろしい蛇、バビロンの竜ムシュフシュ。

謎の多い子供、相貌の獣ラフム。

こいつはどんな姿だったのか伝承にはないので何とも。

大いなる日、巨大な獅子ウガル。

獅子犬ウリディンム。

蠍(サソリ)の人、知恵者ギルタブリル。

三ヶ月前まではこいつが魔獣戦線の司令塔だった。

巴御前の捨て身の一撃で倒されたがね。

そのおかげで戦線は今も健在だ。

苛烈な嵐、悪霊たちウム・ダブルチュ。

翅持つ魚人クルール。

太陽の随獣、人牛クサリク。

……うん、これで全部かな?

メソポタミアの創世神話において、これらの子供たちと共にティアマトは神々と戦った。

十一の子供たちを指揮するのは、ティアマト神に見いだされたキングゥ神。

しかし神々の軍勢、とくに新しい神マルドゥークの力は凄まじく、キングゥ神は敗北。

ティアマト神もマルドゥーク神をかみ砕いたものの、マルドゥーク神の起死回生の一弓で敗北した。

神々は倒れて動かなくなったティアマト神の体を裂き、これを海に浮かぶ大地とした。

これがこのメソポタミアの大地。

神の亡骸の上に作られた世界、という訳さ。」

ロマニ「まあ、一般的な創世神話だよね。

大地母神を世界の土壌にするのは他の神話体系にも多く見られるパターンだし。

女神は生命を育むものだが、混沌に落ちた女神は人間と敵対する魔獣たちの母となる。

百獣母胎(ポトニア・テローン)と呼ばれる権能だ。

この権能を持つものは生命の種……

資源さえあれば無尽蔵に魔獣たちを生産できる。

魔獣たちの数からして、北の『魔獣の女神』はこの権能を持っているんだろう。」

マーリン「ああ。

その結果、ウルクの人々は『魔獣の女神』をティアマト神に重ねて恐れてしまっている。

いや、無理もない話だが。

本当にティアマトの子供たちが揃ってしまったのだから。」