巫女長は“女神の神格に適合する魂”をまず召喚し、その魂にイシュタルを召喚しようと試みた。

第七特異点 絶対魔獣戦線 バビロニア

マシュ「……牧場主さんたちの証言は以上でした。

女神イシュタルによる無差別爆撃、牧場運営の妨害、および運営者への恐喝……

もう疑いの余地はありませんね……

女神イシュタルは豪勢(スペシャル)な悪魔のようです……」

「……まさに金の亡者という事か……」

ロマニ「金星を司る美の女神が守銭奴なんて……

確かにイシュタルは財宝を愛する女神だけど、要求する相手はたいてい自分より上の神にであって、人間から巻き上げるような逸話はなかったぞ……?」

マーリン「ああ、それに関しては面白い事が分かっている。

実はあのイシュタルは通常のイシュタルじゃなくてね。

北部に魔獣が現れだした頃、ウルクの巫女所では王様に黙って、ある儀式が行われていたそうだ。

ずばり、都市神イシュタル召喚の試みだ。

ウルクは王政だが一枚岩ではない。

王権と祭祀場と巫女所、この三権分立だ。

このうち、巫女所は王であるギルガメッシュ王より都市神を優先していてね。

この時代が特異点になる兆しを見せ、時空が不安定になった事を好機とみたんだろう。

ギルガメッシュ王がバビロンの蔵を開放し、ウルク北壁に城塞を作っている隙に、巫女長は“女神の神格に適合する魂”をまず召喚し、その魂にイシュタルを召喚しようと試みた。

カルデアで言うところの疑似サーヴァントさ。

この儀式がうまくいったかどうかは分からない。

だが事実としてウルクの都市神、イシュタル女神はああして顕現している。

基本的に、メソポタミアの神々は金髪だ。

一方、人間は黒頭……

黒髪とされている。

あのイシュタルの髪が黒いのは、間違いなく『元になった』少女がいるからだろう。」

ロマニ「それは……

もう驚きを通り越して、ご愁傷さま、といったところだね……

こちらが観測したデータだと、あの女神イシュタルは紛れもなくイシュタル本人だった。

その少女はきっと、もともと『すごくイシュタルと気が合う』人間だったんだろう。

もう完全に二つの自我が融合して、まったく新しい、それでいて元のままの“女神”として成立している。」

マーリン「ああ。

でもそのおかげで藤丸君は生きている。

イシュタルが神話にある通りのイシュタルだったら、バビロンの時点で藤丸君は殺されていたとも。」

アナ「……そうかもしれません。

女神とは相容れませんが、あのイシュタルは少しだけ、人間らしいです。」