多くの理不尽。多くの無慈悲を、神様のせいにして日々を大らかに生きていける。私はそんな在り方を善しと信じた。

第七特異点 絶対魔獣戦線 バビロニア

「……えっと、なに……?」

イシュタル「別になーにも。

なんとなく見てただけ。

まさかイシュタルを味方につけるとはね、って。

予想外すぎて、まじまじと見てみたくなるじゃない?

それとも単なる一目惚れかしら?

なに、未来の人間ってそんなに節操ないの?」

「そう。カルデアは未来に生きている」

イシュタル「へ、へぇ……

否定はしないんだ。

……ふーん……

そうか、脈アリかぁ……

……と、ちょっとタイム。

こんな薄着だからかしら、寒気が……

は、は、くしゅん!」

「——!? なん——だと——?」

イシュタル「……なによ、今の態度。

私から逃げようとしなかった?

いえ、間違いなく逃げようとしたわね。

腰が引けたもの。

そういうの、何度も見てきたもの。

……そうなんだ。

……やっぱり、アナタも私を怖がるの?」

「——いえ、別に。今のはクシャミです(……そういう権能もあるのか!)」

イシュタル「……ホント?

本当に私が怖くない?

女神だからって嫌わない?」

「種族では嫌いません。女神でも酷い女神は酷いと思います」

イシュタル「……って、そうじゃなくて。

時間がないんだから、本題に入らないと。

アナタは『三女神同盟』と戦う気のようだけど。

実際の話、彼女たちをどう思っているの?

魔獣の女神は……

そうね、彼女はどうしようもない。

始めからアナタたちと和解する選択はない。

密林の女神は、正直分からない。

文化圏が違いすぎて、彼女が『善い』と感じる事柄は、私たちの世界では『悪い』と感じる事柄かもしれない。

なにしろ他天体の末裔だし。

それで、問題の三柱目。

言うまでもなく私の事だけど……

私は今のメソポタミアを許さない。

神々を棄て、自分たちだけの世界を作ろうとする人間たちを認めない。

だってそれ、苦しいだけだもの。

人間は生の苦しみ、死の恐怖から逃げられない。

現実をありのままに受け入れるには、あまりに知性を成長させすぎた。

でも神代でならその苦しみも緩和するわ。

だって“人間では理解できないもの”が居るのだもの。

多くの理不尽。

多くの無慈悲を、神様のせいにして日々を大らかに生きていける。

私はそんな在り方を善しと信じた。

今まで何千年、何万年もそうやって我慢してきた。

だから——

今回の同盟にも参加した。

人間たちの世界が、人と神の世界になるように。

私は人間の敵じゃなくて、人間たちの世界の敵なの。

そのあたり、藤丸にだけ教えてあげたわ。」

「そうだったのか……優しいんだな、イシュタル」

イシュタル「…………わ、私が言いたかったのは以上だから。

あ、あくまで今夜のところは、だから。

それじゃあおやすみなさい、私もそろそろ眠るわ!

アナタも夜更かしはしないよーに!」

(去っていく音)

「おやすみ、女神さま」