あのとき確かに、私たちの中に、悪魔は、いたのよ! 私は……忘れないわ……。無かったことになんてしない。

幕間の物語(女性鯖)

「……いた! アビー……村人たちに囲まれて……?」

少女たち「わたしたちには何の罪も無いわ!?

だって、知らなかったんだもの。

何ひとつ聞かされていなかったんだもの!

あ、あんなことになるなんて——

本当に大人たちが……

い、幾人も幾人も、縛り首にされてしまうなんて!

そうよ……!

ぜんぶ、ぜんぶ、ア……その子が……!」

アビゲイル「……………………。

——私は知っていたわ。

語られぬ言葉に、じっと耳を傾けていたわ。

これから何が起きるか、わかっていたし過たず感じ取っていた。

知らなかったのは……そう……

あなたたちが……こんなにもうつろいやすい、いい加減な心の持ち主だったってこと……。

……ちがって?」

少女たち「……ひっ……。」

アビゲイル「悪魔が取り憑いたの。

無垢な私たちを悪魔が誘惑したの。

みんなにも見えたでしょう?

公会堂の梁に飛び乗った、黒い悪魔の姿を確かに見たでしょう?」

少女「……そ、それは……。」

アビゲイル「今さらなお話ね……。

そんなことを言いだすなんて。

それとも……

まだ、悪魔はセイレムを去ってはいないのかしら?

今度は誰を縛り首にしようとしているのかしら?

ねえ、どう思う?

あなた……?

それとも、あなた……?」

少女「いやっ……

ち、近寄らないで……!」

「(彼女は、アビー……なのか?)」

村人(男)「だまれ、だまれ子供たち!

口を塞げ! 耳に砂を詰めろ! 

もうたくさんだ!

もはやどうやっても、取り返しのつかないことだ。

絞首刑台に送られた者たちは帰ってはこない!

俺たちに、あの忌まわしい日々を思い出させるな!」

村人(婆)「ええ……夢を見ていたのです、私たちは。

恐ろしい悪夢におびかされていたのです。」

アビゲイル「フフッ……。

夢——?

あれは夢だったの?

ご冗談はやめてくださいな?」

村人(爺)「裁判の判決は誤りだった。

その発端からすでに、神の御心に反するものだった。

告白は強制された不当なものだ。

証言は健康をそこなった精神になされたものだ。

裁かれた魔女など……いなかったんだ。

時間はかかるだろうが……

不当な刑罰を受けた受刑者の名誉は回復されるだろう。

これもまた……神の試練だった……。」

アビゲイル「試練……。

びくびくと夜に怯え、ただ口をつぐむばかりの……

そんなものが試練といえるの……?」

村人(爺)「くっ……。

それでも、祈りを忘れてはならん。

神への感謝を失っては——」

少女たち「そうよ。そうよ。

悔い改めて、今度こそ……」

アビゲイル「そんなお祈り、ただ自分にいい聞かせているだけの嘘じゃない。

知らないフリをしていただけね。

それが気持ちよかったのよ。

取り返しのつかない事態が、転がり落ちる雪玉みたいに膨らんでいくのが楽しかったのよ。

いつも偉そうにしている大人たちを振り回したかったのよ。」

少女「いや、やめてっ……もうやめて!」

アビゲイル「あなたたち、結局誰も、私と同じものを見てはいなかったのね?

悪魔の声を海風の唸りだってうそぶくのね?

屋根を飛び交う影は、ただの煙だったって云うのね?

あのとき確かに、私たちの中に、悪魔は、いたのよ!

私は……忘れないわ……。

無かったことになんてしない。

夢なんかじゃないわ。

たとえ生まれ変わったとしても、ずっと、永遠に、永劫に、この罪を背負っていく。」

「……アビー!」

アビゲイル「叔父様はすっかり気が塞いでしまって私とは口も利いてくださらない。

ベティまでも私を無視する……。

恥ずかしい物でも目にするかのように。

怯えきって……。

そして彼女……ティテュバは……

まだ暗い牢の中にいるわ。

懇願しても彼女には面会させてもらえない。

謝罪の言葉を伝えさせてはもらえない。

もう……私の名(ギヴンネーム)を口にする人すらこの村にはいない。

でも……それでいいんだわ……。

私を見て、避けて、そのたびに思い出すのよ。

セイレムに確かに魔女はいたって!」

「——アビゲイル!!」

アビゲイル「…………はっ……?

どなた……?

いえ……

……マス……ター……?

私……どうして、またセイレムに?」

「これは夢だよ、アビー。悪い夢だ。きみの罪はもう過去のものだ」

アビゲイル「夢……?

これは……

私はこんな事、決して望んでは——」

少女「嫌いよ、アビゲイル・ウィリアムズ……!

あなたなんて、どこへだって船に乗って消えてしまうがいいわ。」

少女たち「そうよ、そうよ!」

アビゲイル「…………!

……言われなくたって私はまっさかさまに堕ちていくわ!

でも……!」