もっとも、人理を修復する程の非常事態でなければ、召喚される可能性は低いでしょうが……。

幕間の物語(男性鯖)

天草「落ち着いて下さい、マスター。

急いては事をし損じます。

じっくりと待つことも大事ですよ。

六十年待った自分が言うのですから、確かです。」

マシュ「……六十年……?」

ロマニ「そう言えば以前から、不思議だったんだけど。

天草くんはどうして、黒鍵を使っているんだい?

それ、キミの時代のキミが住んでいた土地には存在しないものだろう?」

「こっけん?」

ロマニ「聖堂教会の概念礼装でね。

詳しくは知らないが、聖書の断片を刀身とする投擲武器だとか。

キミが聖堂教会に所属していたという記録はないし、当時の日本で、この技術が輸入されていた訳もないし……。」

天草「ああ、それは簡単です。

この私はある聖杯戦争で受肉し、聖堂教会に所属した経験がありますから。」

マシュ「な。」

ロマニ「なんだってーー!?」

マシュ「受肉……

一部のサーヴァントは、聖杯によって肉を持った経験があると確かに記録がありましたが……。」

天草「とはいえ、こちらの世界の記録とは完全に矛盾しているので、恐らく別の、有り得ない過程を辿った末の出来事です。

ですが、サーヴァントとして一番役立つのは、間違いなくこの状態です。

本来、私はルーラーにすら成り得ない三流サーヴァントですからね。

頑張って、キャスターに引っかかるかどうか、というところです。」

「メディアさんに教えを乞う?」

天草「ははははは。

無理です死んでしまいます。

神代の魔術師さんたちはこう、こちらが自転車なところをバイクでカッ飛びますからね。

まして私はどちらかと言えば、魔術使いの類。

魔術を魔術と考えず、『ただ役立つもの』としか認識できないタイプです。

……まあ、他サーヴァントにもそういう感じの人がいらしゃるようですが……。」

ロマニ「しかし、ルーラーとして召喚される資格がないなら、どうして今のキミはルーラーなんだい?」

天草「ああ、それは簡単です。

受肉した例の聖杯戦争において、私のマスターがルールを逸脱したのですよ。

本来、ルーラーとは聖杯戦争を調停するために召喚される、第八のクラスです。

その為、ルーラーのマスターは『聖杯』であり、中立的な立場であることを求められます。

しかし、私のマスターは聖杯戦争に勝利するために、ルーラーを召喚しようとしたのです。

通常の聖杯戦争で召喚されたルーラーには、参加したサーヴァント全騎に対する令呪があります。

本来、令呪はサーヴァントへ自害すら命令できる強力なものですので、ルーラーのサーヴァントさえ使い魔にしてしまえば聖杯戦争には勝ったも同然、という算段だったのです。

そうやって私は、反則的な行為でルーラーとして召喚された……されてしまった。

その事があり、私はルーラーとして召喚される資格を得てしまったのでしょう。

もっとも、人理を修復する程の非常事態でなければ、召喚される可能性は低いでしょうが……。」

ロマニ「なるほど。

資格があったから、召喚されたのではなく。

そうやって召喚されたからこそ、資格があるのだと誤認したという訳か。

どうあれそういう記録があるのなら、呼び出す経路が確立しているということ。

二度目の召喚は容易だろうからね。」

天草「召喚された聖杯戦争では、勝利できませんでしたが偶然の積み重ねで私は受肉を果たしました。

……と、昔話に興じている場合ではないようですね。」