座長さんもまた、旅立たれる身だから…私の指先ですら届かない、宇宙と虚空の狭間に向けて長い航海に出てしまうから…

幕間の物語(女性鯖)

アビゲイル「……ぐっ……!

……痛い……」

ジェロニモ「——侵蝕した呪術的結線を引き剥がした。

マスターにも、そちらの彼女にも苦痛を与えてしまった筈だ。

許してほしい。」

アビゲイル「どなた……?

カルデアに属するサーヴァント……

その民族衣装は……新大陸の先住民ね……?」

ジェロニモ「そうだ。

ジェロニモと呼ばれている。

アビゲイルの身に、その魂を重ねし少女よ。

今の遮断効果は“アサビケシン”と云う、夢を捕らえる呪具によるものだ。

本来はオジブワ族のものだが、私にも原理はわかる。

カルデアの工房であれば製作も出来る。」

アビゲイル「そんな周到な罠を、前もって……?

いえ……当然ね。

カルデアには優秀な用兵家がいらっしゃるんだもの。

……はっ……もう一人?」

哪吒「——あびー。」

アビゲイル「哪吒………あなたなの?」

哪吒「——是(いえす)。

暫く あびー。

じぇろにも じる・ど・れぇ 二人の力を拝借し 主(ますたー)の警護に一枚 噛ませて もらった。

ましゅや また・はり達も同じく 星辰の脅威に 備えていた。

眠りの門を預かったのは ボクと じぇろにもだ。

如何にも 此は 夢なり。

実態はボクも じぇろにもも 寝所で眠りこけている。

夢寐(むび)の郷を 架け橋に かあるであと異界をつなぐ 誑惑の術とは——

大いに 驚嘆……!

その手腕の成長を 称賛!

然れども この中壇元帥の 火尖の槍の先では 決して看過は 許さじ!

……こんな再会は 出来れば 避けたかった。」

アビゲイル「そうね……。

私もつらいわ……。

(触手の蠢く音)

でも、あきらめきれない……。

今夜はたぶん……最後の機会なの。

座長さんもまた、旅立たれる身だから……

私の指先ですら届かない、宇宙(セカイ)と虚空(ソラ)の狭間に向けて長い航海に出てしまうから……。」

哪吒「あびーは ボクの 無二なる友朋だ。

だからこそ 見逃しはしない。

過ちあらば 我が身を賭して その根源を絶つ!」

アビゲイル「…………くすっ。

そうだったわね、あなたは。

好きよ、哪吒。」

哪吒「……………………。」

「アビー、それに哪吒までもが臨戦態勢に……!」

ジェロニモ「哪吒は正面切って槍を交える意志だ。

果たしてそれでよいのかね、友よ?

君も交戦を望むかね?」

「きちんと叱ってやらなくちゃいけない時もある。カルデアのアビゲイルを傷つけないように」

ジェロニモ「簡単に言ってくれる!

この仕組まれた夢においては非常に困難な行為だ。

だが——

それは私の望みでもある——

やってみせよう。」

(戦闘後)

哪吒「——あびー! 思い止まれ!」

アビゲイル「逃がしはしないわ……逃れられはしないわ……。

私を追い込むほどに、絆はより深みへと押し沈む。

座長さん、あなたを絡め取っていく。

このまま私の下へ、あなたをたぐり寄せましょうね。

さあ、

開け——門よ——。」

哪吒「あびー!」

ジェロニモ「むっ……

さらなる外敵を呼び寄せたか!」

(戦闘後)

ジェロニモ「視界内の敵は打ちはらったが……

今度はアビゲイルの姿が消えた。」

哪吒「基地の奥へと 逃げ込んだ!

このまま追討する!」

ジェロニモ「だが……。」

(怪物の唸り声)

哪吒「魑魅魍魎ども 蔓延 跳梁!

我が物顔で跋扈させる前に 殲滅する!」

ジェロニモ「いや、呑まれてはいけない。

これはあくまで夢なのだ。

互いの干渉がせめぎ合いながらも主導権は依然としてあちらにある。

戦闘を経て直感した。

ここでは体感時間すら不確かだ。」

哪吒「では 後方に状況を伝え 増援を呼ぶべし。

どちらが現世に 一時帰還する?

この先も 魍魎が待ち構えるは 必至——。」

「——待った。ここはオレだけに任せてくれないか」

哪吒「……!? 主、正気か!?」

ジェロニモ「……真意を聞かせてくれ。」

「自分だけでアビーを説得させてほしい。

——アビーはまだ、未完成な存在だと思うから。苦悩してくじけそうになることもある」

ジェロニモ「つまり……セイレムのアビゲイル、そしてカルデアのアビゲイルもまた同様に、成長途上の人格を持つ存在だと、いうのだね。

……確かに、魔女裁判の渦中にあった多感な娘の姿での顕現には、深い意味があるのだろう。

サーヴァントとはいえ、酷な仕打ちだ。

召喚の宿業を私は恨むよ。」

哪吒「ボクに 言わせるならば……

それは 顛墜だ。

成長でも昇華でもなく 堕落だ。

悪徳への 耽溺だ。

ふぉーりなーは 危険で 異質だ。

深淵の魔に 魅入られている。

目をくばらせ 厳しく律するものが 傍らにいるべきだ。」

「道に迷い、見失っているのなら。正しさで追い詰めてしまってはだめだ」

哪吒「……むぅ……。」

ジェロニモ「……では友よ、君自身が、疲れ果てた旅人を迎え、その身を癒やすテント(ティピー)になると言うのだな。」

「そんなに偉そうなつもりじゃないが……彼女を励ませるように、努力してみる」

ジェロニモ「……了解した。

私はマスターの指示に従おう。」

哪吒「——!?

じぇろにもも ボクも 主に任せて この夢を立ち去るのか?」

ジェロニモ「アビゲイルの警戒を解くならそれが最善だろう。

私が武器を手に乗り込むよりもね。

ましてや、セイレムの彼女を救ったのは私ではない。

マスターや哪吒、君たちだったのだから。」

哪吒「…………熟考……了承……渋々、同意。

されども 異変あらば またすぐ戻る。

主、あびーを 頼む。」

「ああ、みんなにもよろしく」