吾と似たような炎だな。 自らが燃え尽きるほどの炎で、諸共に敵を焼き焦した—— そのような苛烈な念が見える。

幕間の物語(女性鯖)

茨木童子「——は。

臭う、臭うな。貴様か。

鬼の臭いがするぞ、女武者——!」

「!?」

茨木童子「今の吾には薄らぼんやりとしか分からんがな。

貴様らは知っておるのではないか?

かつて、この地に召喚され、倒された英霊がおったはずだ。

周りの戦跡からすると——

炎か。

吾と似たような炎だな。

自らが燃え尽きるほどの炎で、諸共に敵を焼き焦した——

そのような苛烈な念が見える。どうだ?」

マシュ「ウルクで死んだ……女武者。

ええ。

わたしたちは、お会いしてはいませんが……。

情報としては知っています。

巴御前なる方が、魔獣戦線の司令塔・ギルタブリルを相打ちの形で仕留めたと。」

茨木童子「ほう。

であれば、あれはその燃え残りのようなものであろうな。

知っておろう?

鬼とは生き汚さの極致。

然も有りなん、というやつだ。」

ロマニ「巴御前は鬼だったっていうのかい!?」

茨木童子「臭いの質からして、そのものではない。

血を引いておる、ぐらいのものであろうな。

あの風魔の小僧よりは濃いと思うが。」

巴御前?「アア……アアア……!

アアアア!」

茨木童子「意志はなく、ただ暴れようという方向性のみ。

これは……あるいは。

その、べるぎーわっふる? の力の一端でも取り込んでおるのかもしれんな。

共に灰となるまで燃えてしまえば彼我の区別もなくなろうというものよ。」

「美味しそうな名前の敵だね……」

茨木童子「くはは、名前だけはな。

だがこの臭いからするとそう美味そうでもない。

これは所詮、紛い物の鬼よ。

燃え残りが苦し紛れに足掻いておるだけにすぎん。

いや。

吾は酒呑の鼻にこの悪臭が届く前に、その元凶を処分しようと思ったに過ぎぬ。

何が臭っていたかなど知る由もない。」

ロマニ「処分って……巴御前が鬼種の血を引いているなら、仲間みたいな感じにはならないのかい?」

茨木童子「本人ならばともかく、あれはただの滓ぞ。

余計なものも交じっておるようだしな。

そのようなものを有り難がるわけもあるまい。

人よ、貴様らが吾の立場だったとしたらどうだ?

同族の臭いがする臭い死体の滓が、なぜかよくわからんものと交じった形で、なおも生き汚く、ただ暴れようという意志だけを見せて蠢いている——

そのような状況をどう思う?」

「うーん、ホラー……ゾンビものっぽい……」

マシュ「……なるほど。

そう考えるなら、茨木さんが解決しようと考えるのも納得です。

わたしには鬼の臭いは勿論わかりませんが——」

巴御前?「グ、アア、アアアッ……!」

マシュ「あれが、このままここに放置していい存在でないという事だけはわかります。

たとえ彼女が、魔獣戦線の侵攻を押し止めてくれた、わたしたちにとって大恩あるサーヴァントだとしても。

あれは、修復されつつあるこの時代に遺された——

ただの脅威です!」

ロマニ「まずい、意識がキミ達のほうに向いた!

どう考えても友好的じゃない反応だぞ!」

茨木童子「くく……そちらも吾の臭いに気付いたか。

吾を喰ろうてその身の肉にする気か?

なれば、鬼たる吾があえてこう言おう——

なんと浅ましい、浅ましい、浅ましい!

身の程を知るがいい。

喰らうのは吾よ!

吾が名は茨木童子——

平安たる京の都を恐怖と暴虐で塗抹せし、大江山の鬼の首魁ぞ!」

(戦闘後)

巴御前?「イバラ、キ——

ソウ——

戻ッテ、キタノデスネ、イバラキ——」

茨木童子「……?」

巴御前「——ソレハ頼モシイ——

アナタヲ、認メル事ガデキナカッタ——私ヲ——

人ヲ 理解シヨウトスル オニ ナド、イル筈ガナイ、と——

私、ヲ、美シイ、ト、言ッタ、ギルタブリル ノ、心を——

踏みにじった、鬼以下の、私を——

どうか、笑ッテ、クダサイ——」

(消滅する音)

ロマニ「……脅威反応、完全に消滅だ。

お疲れ様。」

茨木童子「なんだ、こいつ。

……吾と面識でもあったのか?

……まあよい。

やはり、楽しくもなければ美味くもなかった。

こんな些事で酒呑の手を煩わせるような事がなかったのだけが幸いだ。」

マシュ「マスター、見てください。

茨木童子さん……

さっきの敵が倒れていたあたりを見つめて。

なんだか、寂しそうな目をしてらっしゃるように思います。」

「さっきまで仲間の話をしてたからかな……」

マシュ「そうですね。

口ではああ言っていましたが、やはり同族。

何か思うところがあるのかもしれません……。」

茨木童子「……汝がただの残滓でなければ。

正しく鬼の血を流すものとならば、大江の山に来よ。

吾は鬼どもの首魁ぞ、無下にはせぬ。

気が向けば人の胆のひとつ、いや、忌々しいが美しい、異国の菓子のひとつでも馳走してやろう……。」