完全な起動を果たす前に、叩く必要があります。 封印されていたアレが完全な実体化を果たせば、第六架空要素の——

幕間の物語(男性鯖)

パラケルスス「リージェントパーク・エリアの南端、その地下にあるこの空間……。

ここは、魔術協会——

時計塔と呼ばれる組織の地下施設、その一部です。

隔離区画のひとつと言ってもいいでしょう。

ここには、あるものが封印されています。」

マシュ「あるもの、とは?」

ロマニ「危険な魔術書とか、危険な魔術礼装とか、危険な触媒とか、そういう……ものかな……?」

パラケルスス「はい。

魔術書——

そう呼ぶのが最も近い。

かつて世界に実体化しかけた邪悪なるものの、強大なるものを封印した、それは、一冊の本です。

その本は、他の多くの危険な魔術書と共に、極めて強大な魔術によって厳重に封印されていました。

魔霧の蔓延にあっても、本の封印が解かれることはありませんでした。

他の多くの危険なものと同じく。

ですが……。」

マシュ「その封印が解かれた、と、あなたはそう考えているのですね。」

パラケルスス「はい。」

「すっぱり断言したね。理由は?」

マシュ「はい、先輩。

わたしも彼の確信の様子が気になります。」

パラケルスス「……簡単なことです。

もしも未だに計画遂行を諦めず、このロンドンに実体を伴って存在していれば——

——私は必ず封印を解くからです。」

マシュ「……っ!」

ロマニ「え!?

そ、それって、つまり、これから封印を解きますよってこと!?」

フォウ「フォーウ!!」

パラケルスス「いいえ。

封印を解くのはこの私ではありません。

如何なる理由か、未だ、この地に残る——

——こちらの私、と言う訳です。」

マシュ「この声——

いえ、新しいサーヴァント反応です!」

パラケルスス「姿を見せなさい。

悪逆を厭い、憂い、しかして悪逆そのものである者。

愛し子を抱かんとするその同じ手で、あらゆる命を握り潰さんとする……許されざる者。

汝は我。我は汝。

汝の名、我が名——

ヴァン・ホーエンハイム・パラケルスス!

悪逆の介添人!!」

パラケルスス?「……何とも、はや。

自身を相手に随分と酷い物言いですね。」

マシュ「!?」

「パラケルススが二人!」

パラケルスス?「混乱させるのは容易いですが、ええ、ここは敢えて真実のみを申し上げるとしましょう。

どちらも本物

我は汝、汝は我であるのです。

貴方たちが正当に召喚し、契約したサーヴァント・パラケルススであるそちらの私。

貴方たちに倒され、魔霧へと還元されたサーヴァント・パラケルススの魔力が生んだこの私。

どちらもヴァン・ホーエンハイムなりし者。

どちらも本物ですとも。

強いて言えば、この私は、いささか存在が不安定ではあります。

何せ、既に聖杯はない!

英霊を召喚する機構がない状態での現界です!」

ロマニ「……彼の言っていることは正しいみたいだ。

観測結果からすると、そっちの彼は魔力が薄い。」

マシュ「魔霧の生んだ……

最後の魔霧の英霊……?」

パラケルスス「ええ、ええ。

ですから、私は急いでいます。

急ぎ、この時代を破壊しなくては。

このままでは時代が完全に修正されてしまう。

そうなれば、この手での破壊は不可能。

私の存在も消えるでしょう。

ですが、それはいけない。

世界と人類の焼却を運命と私は受け入れた。

抗うことはできない。

ならばこそ——

——最早、こうする他にないのです!」

(獣の咆哮)

ロマニ「な、何だ!?」

マシュ「巨大な魔力反応!

彼の向こうに、何か——います!!

どうやら、封印が解かれてしまったようですね。

あちらの私は手際が良いらしい。

急がねばなりません。

完全な起動を果たす前に、叩く必要があります。

封印されていたアレが完全な実体化を果たせば、第六架空要素の——いえ——

——破壊します。

それを阻む、あちらの私も諸共に!」

(中略)

パラケルスス?「無念——

諦めた私は、そう言わざるを得ない。

世界は焼却されるのだから。」

パラケルスス「いいえ。

貴方は間違っている。

諦めることを止めた私は、そう言いましょう。

世界はきっと救われるのだから。」

パラケルスス?「……ふふ、滑稽なことです。

まさか、この私が。

望まぬ悪逆を選び続けた私が、こうして、自分自身の手で……断罪を……。

受ける、とは……。

ああ……。

この、醜く哀れな私の末路を……。

私は、貴女に捧げよう……美沙夜……。」

(消滅する音)

マシュ「敵性サーヴァント、完全に消滅しました。

……戦闘終了です。」

フォウ「フォーウ!」

ロマニ「流石は魔術協会のお膝元と言うべきか……。

とんでもない相手だったね、あれは、うん。

ファヴニールにさえ並ぶ大物中の大物だ。

倒せたのは、僥倖だったとしか言いようがないよ。」

パラケルスス「いいえ——

貴方たちは勝利することができる。

たとえ再び、アレが目覚めることがあっても。」

ロマニ「うん??」

パラケルスス「貴方たちは悪逆を斃す者。

私の信じた、正義の味方に他ならないのですから。

ならば、きっと。

如何なる強敵に出会ったとしても。

如何なる裏切りを経たとしても、如何なる絶望の果てを目にしたとしても。

負けることなど、有り得ません——」