君は君ではなく、似たような誰かの為に、何かの救いを求めて私達から答えを得ようとしている。違うかい?

幕間の物語(男性鯖)

モリアーティ「やれやれ、さっきから聞いていれば、君は呆れる程に愚直だな、エルキドゥ嬢(君)。」

マシュ「教授?」

モリアーティ「ああ、エルキドゥ嬢(君)はまさに生まれたての無垢な人形サ。

私のような悪党からすれば絶好のカモだ。」

エルキドゥ「興味深いね。

確かに、権謀術数では教授には遠く及ばないだろうけど。」

モリアーティ「そんな当たり前の話題でドヤ顔したわけじゃあないよ。

先ほどからの君の、キングゥとこの世界への態度の話サ。」

エルキドゥ「キングゥと……この世界への?」

モリアーティ「キングゥが君の姿で暴れたのだ。

ウルクの民が君を見たら、まず間違いなく『また敵が現れた』と思うだろうネ。」

ダヴィンチ「まあ、混乱は起こるだろうね。」

エルキドゥ「ああ、そうだとも。

だからこそ、僕は——」

モリアーティ「だが、君はキングゥ君とやらの欠片も責めようとしない。

キングゥ君のせいで君の存在が歪められたというのに、君は賞賛を持って全てを自らの霊基に受け入れた!

君は魂だけでなく、そのキングゥ君とやらが生み出した悲劇も憎しみも、纏めて背負うつもりなのだろう?」

エルキドゥ「……。」

モリアーティ「もう一度言おう。

君は愚かだ、土人形君。

善人でも悪人でもない、ただただ愚直な——『物語(えいれい)』だ。」

エルキドゥ「……!」

ナーサリー「あなたがわたしたちを気にかけた理由、なんとなく解るのだわ。

エルキドゥは、わたしたちととても良く似ている気がするの。」

メフィスト「おやおや、まさか気付いていないとでも?

悪魔として生み出されました私めに、物語として生み出されたナーサリー嬢。

そして稀代の悪役として世界の座に刻まれたアラフィフ老とくれば、想像するは容易き事です。

もっとも、アラフィフ老は些か趣が違うようにも感じられますがね。

如何ですアラフィフ老?」

モリアーティ「うん、まず『アラフィフ老』と呼ぶのをやめよう。

そして、私の実在不在の審議もとりあえず置くとしよう。」

エルキドゥ「……。」

モリアーティ「我々は皆、他者の手によって『そうあれかし』と役割を望まれて世界に焼き付けられた存在だ。

君の場合は、神々に役割を与えられ『そうあれかし』と大地に投げ打たれた挙げ句、その在り方を裏切った。」

エルキドゥ「……否定はしないよ。

僕は、生まれた理由を、生きる目的を裏切った。

キングゥとは違う。

魂を得たわけではなく、ただ、自分の在り方を放棄しただけだ。」

モリアーティ「しかし、だ。

我々のような存在を深く識りたいのは、君自身の救いを求める為。

私は最初そう推測した。

だが、その計算式は、この短い旅の間に修正したよ。

君は君ではなく、似たような誰かの為に、何かの救いを求めて私達から答えを得ようとしている。違うかい?」

エルキドゥ「……!」

モリアーティ「クク、エルキドゥ嬢(君)は意外と表情豊かだな。

ゆえに、私は君を愚直だと言ったのだ。

人形だろうと道具だろうと、人間だろうと英霊だろうとね。

ま、私は愚直な者は退屈だとは思うが嫌いじゃないヨ。

何しろ教鞭を執るのが本職だからネ。

下手に正義感を持たれてワトソンになられても厄介だし、蜘蛛嬢のように悪に染めあげてみるのも面白そうだ。」

エルキドゥ「……。

善悪のどちらに染まった僕か……。

興味深いね。

本当にそんな可能性はありえるんだろうか。」

ダヴィンチ「私も興味が無いわけじゃないけれど、レイシフトの準備が整ったよ。

エルキドゥ君が将来を考え込むのは、とりあえず後回しにしようじゃないか。」

マシュ「イシュタルさん、本当にありがとうございました。」

イシュタル「気にしなくていいわよ。

私たちの仲じゃない。

ただ、二度とそのポンコツをこの時代に連れてこないでね?」

エルキドゥ「君がこの時代から消えた方が早いと思うよ。

出来る事なら、人類史そのものからね。」

イシュタル「残念ね。

未来永劫、人類がこの世に続く限り、無理矢理でも守護神として残滓を残し続けてあげるわ。」

エルキドゥ「……。」

イシュタル「……。」

マシュ「お、お二人の笑顔が怖いので、レイシフトを開始します!

それでは、先輩、準備はよろしいですか?」

「準備万端だよ。またね、イシュタル!」

イシュタル「……。

行っちゃった、か。

結局顔を見せなかったわね、あの偏屈王。

……アイツも、絶対エルキドゥが来た事には気付いてる筈なんだけど……。

本当に面倒臭いわね、アイツら。

昔っからわけわかんない事ばっかりするんだから!

……ああ、思い出したら腹が立ってきた!

慰謝料として、早速ウルクの宝物庫から財宝と宝石を回収しなくっちゃね!」