愛あればこそ、嫌うこともあるのです。そして、愛あればこそ…嫌いたくない、嫌われたくないと願うのです。

幕間の物語(男性鯖)

アルテミス「ダーリン!

そんな……どうしてこんな姿に……!」

マシュ「(去年のバレンタインでも似たようなチョコを見たことがあるようなないような……)」

「タスケテ、と……訴えかけている……」

ブリュンヒルデ「その……私はシグルドを探しているのですが……

ナーサリーさんが、彼が王子様ではないか、と。

連れてきてくれまして……

違う、と言っても『今はクマチョコだけど、変身が解ければきっとシグルドになるから』と聞いてもらえず……

こうして、ただおろおろしていたのです……。」

「チョコを解く方法はあるの?」

ブリュンヒルデ「はい……。

ナーサリーさんが言うには……。」

「はい?」

アルテミス「ちゅー!?」

ナーサリー「ええ、そうよ。

ちゅーをすれば、チョコの呪いは解けるのよ!

クマの呪いも解けてくれるかもしれないけど、わたしの担当じゃないので知らないわ!」

マシュ「なるほど……。

自分が立ち去ると、呪いを解く人が現れないかもしれない。

それでブリュンヒルデさんはおろおろしていた訳ですね……。」

ブリュンヒルデ「ええ、困ってました……

この熊はシグルドではありませんが、間違いなく勇者ではありましょう。

どんな姿であれ、勇者を見捨てるのは元戦乙女的に、ええ……。」

アルテミス「…………。

ねえ、マスター。

どうしてダーリンは逃げちゃうのかしら?

結婚式とか、金婚式とか、本当はどうでも……良くはないんだけど。

ダーリンが逃げないで、一緒にいてくれれば……。

永遠、永遠に生き続けてくれれば……。

それだけで構わないのにねえ。」

「嫌いになるのが怖いから」

アルテミス「嫌いになるのが……怖い?」

ブリュンヒルデ「……そうかもしれませんね。

どれほど睦み合っていた男女でも、長く共に居続ければ、殺し合いに至ることも……。

それは決して憎悪だけではなく……

愛あればこそ、嫌うこともあるのです。

そして、愛あればこそ……

嫌いたくない、嫌われたくないと願うのです。

きっと、人の感情は不変のものではなく……

だからこそ、輝くのでしょうね……。」

アルテミス「……そう。

それが人間の考え方なのね。

神霊たる私には、絶対に理解できない思想。

どこまでいっても、寄り添えない儚さ……。」

ブリュンヒルデ「……そうですね、貴女には理解できないのかもしれません。

私も……理屈では分かっているはずなのに……」

アルテミス「永遠は退屈、か……。

もー、しょうがないなあ、ダーリンは!

こんなに私をやきもきさせるのが、好きでいたいからなんて!

いいわよ、それじゃあ永遠に追いかけ回してあげるわ!

気紛れにくれる、あなたの優しさに胸ときめく限り、私はダーリンに首ったけよ!

うんうん、私の乙女回路もギュンギュン回っているわ!

さ、ダーリン!

今、呪い(チョコ)を解いてあげるわね!」

(大きな衝撃音)

オリオン「いっだああああああああああああい!!!」

アルテミス「はい、おはよーダーリン!」

オリオン「え、あれ?

俺、チョコになって……。

げぇっ、伏兵(アルテミス)!?

に、逃げ出してすいませんでした! 出来心です!」

アルテミス「……うん!

良いわよダーリン、許してあげる!」

オリオン「え、マジで!?

いつもだったら、原子分解されるとかそういうレベルのおしおきが叩き込まれるというのに!?

俺、もしかして並行世界に迷い込んだ?

大丈夫? 剪定されない?

あ、でも並行世界なら……。」

アルテミス「さー、ダーリン。

金婚式の続きよ!

(戦乙女に近づくオリオン)

次はどこかしら、やっぱり金婚式だけに日本の金閣寺とか、いいわね!

それとも、ゴールデンゲートブリッジ?

何でもいいわよ、ダーリンとならどこだって楽しめるんだから!」

オリオン「おっと、そこな儚げなお嬢さん。

ギリシャになかなかいそうにないタイプですね。

どうです、私と愛の逃避行など。」

ブリュンヒルデ「あの……困ります……。

槍がどんどん軽くなってしまうので……。

このままでは……風船のように浮いてしまいそうです……。」

(一瞬でクマを捉える音)

オリオン「縮地!?」

アルテミス「よし、ダーリン。

金閣寺で着火されに行きましょう。

大丈夫、よく燃えるから!

ゴールデンゲートブリッジでもいいわよ?

その場合は、ヒモ無しバンジーね!」

オリオン「おっと、ヒモみたいな立ち位置だけにか!

……って上手いこと言ってる場合じゃないな俺!

やっぱりいつものアルテミスだったわ!

タ・ス・ケ・テーー!!」