ああ、大事なことを忘れておりました。懇意にしている寺などがあるかどうかも——出来れば聞いておきたいですわ。

幕間の物語(女性鯖)

清姫「……あの旅の話ですけれど。

わたくしが見ていたのは、あの方の背中だけでした。

幻の背中。

わたくしを見捨ててただ逃げていく——

……一応言っておきますけれど。

それなりに反省はしておりますのよ、わたくし。

ただ、それでも。

それでもどうして。

あの方は、一言の謝罪がなかったのでしょう。

それもないのなら、いっそわたくしを罵って下されば——。」

「それは難しい」

清姫「どうしてですか?

わたくし、非難の言葉で手首を切るよう無様さはありませんよ?

確かにメル友のタマモさんは

『んー、アナタ、安珍に逃げられた根本の原因をそもそも違えてますよ?

彼はアナタを疎ましいと思ったのではなく、そこそこ憎からず思っていたのです。

そこそこですけどね。

だけど、アナタの愛は憎からず思っている程度の人間には重すぎます。

過ぎたるは猶及ばざるが如しですよ。

その好き(ゼロ)か嫌い(イチ)かのデジタル思考をまず何とかしなさいな。』

と言われたのですが……。」

「可憐だから」

清姫「わたくしが可憐だから——

酷い言葉を吐きたくなかった、ということでしょうか?

なるほど……。

……ふぅ。

でも、わたくしにはまだ男心がまったく理解できませんわ。

タマモさんは男女の仲ならお任せ、酸いも甘いも噛み分けた自分ならパーフェクトな答えを提供する——

みたいに言ってますが……。

何故だかあまり信用できません。

こう、イケ魂に真摯な表情で迫られたらコロリといってしまいそうな?

普段はあけっぴろげに好意を露わにするのに、いざ逆襲されると硬直(フリーズ)して流されてしまいそうな?

男なんて操るのはカンタンですよ〜、とか言っているのに本音のところでは、尽くして尽くすのが幸せ〜みたいな?

……こんな形の聖杯戦争になったことですし、一度オフ会でも開いてみた方がいいかもしれませんね。

自他共に認める引き籠もり、刑部姫が来るかどうかは分かりませんが。

あら、失礼しました。

わたくしばっかり喋ってしまいまして。」

マシュ「いえ、わたし今の話に凄く興味があるのですけれど。

メル友……オフ会……?」

清姫「わたくし、マスターのお話も聞きたいですわ。

どんな風に生まれて、どんな風に生きてきたのか——。

好きな食べ物は何で、嫌いな食べ物は何で、好きな女性のタイプは何で、好きな男性のタイプは何で、一日のスケジュールはどう動いて、浴場ではどこから洗い出すのか、身長・体重・視力・握力・速力・持久力・肺活量・フルマラソン経験の有無……。

ああ、大事なことを忘れておりました。

懇意にしている寺などがあるかどうかも——

出来れば聞いておきたいですわ。」

「それを、聞いて、どうする、つもり」

清姫「ひみつです。

ふふふふふ……。」

マシュ「マスター、顔が引き攣ってます……。」