余人との距離を計り難いと言いつつもあの出で立ち。恐れながら何かの冗談かと勘繰ってしまいました。

幕間の物語(女性鯖)

虞美人「わざわざ来てくれてありがとう。蘭陵王。」

蘭陵王「いえいえ。

かくも奇異なる経緯にて、このカルデアにおいて再び知遇を得られたこと、この上ない喜びです。」

虞美人「……ええと、そうか。

貴方が私と最後に会った記憶って……」

蘭陵王「それは勿論、今際のきわを看取っていただいた折ですが?」

虞美人「そ、そうよね。

分かってはいたけれど、ああもう、ほんとサーヴァントって仕組みは紛らわしい……」

蘭陵王「ところで、何かご相談があると伺ったのですが?」

虞美人「そう。

ちょっと他の英霊には訊きづらくて。その……」

蘭陵王「マスターとの距離感を掴めない?」

虞美人「ええ。その……

当たり前の人間と、素性を偽らないままで付き合うなんて久しぶりだし。

サーヴァントになってはみたものの、いざ面と向かうと一体どういう態度で接したらいいのか分からなくて。」

蘭陵王「成る程。それでこの私に……」

虞美人「ええ。

かつて私の正体を知った上で臆することなく付き合った人間は、貴方ぐらいのものだったから。」

蘭陵王「承知しました。

なれば、まずはお召し替えを。」

虞美人「は? 服装?

ちゃんと話聞いてた?

それ、私の相談事となんの関係があるのよ?」

蘭陵王「——お召し替えを。話はそれからです。」

虞美人「わ、わかったわよ……

(か、かつてないほど強気じゃない……)」

虞美人「ほら、着替えてきたけど。

これでいいわけ?」

蘭陵王「はい。

余人との距離を計り難いと言いつつもあの出で立ち。

恐れながら何かの冗談かと勘繰ってしまいました。お許しを。」

虞美人「な、何よその言い様は!

正体なんてバレてるんだから、どんな格好してたって構わないでしょうに!」

蘭陵王「それです。

その極端な開き直りこそが問題の本質と言えましょう。

もとよりあなたは花の如く風の如く、天衣無縫なる気性のお方。

素性を偽り人の世に溶け込もうと努めた日々の心労は、察するに余りありますが……

だからといって不死の仙女と露見したが最後、どう振る舞おうともお構い無しという慎みの無さはいただけませぬ。」

虞美人「それは、だって……」

蘭陵王「正体を見破った相手は悉く殺し尽くす、という方針が身に染み付きすぎているのです。

人外化生としての在り方ならばいざ知らず、相手を生存させたまま継続的に交流しようというのであれば、自ずと相応の節度というものに心を配らねばなりません。」

虞美人「うぅ〜〜。」

蘭陵王「またそうやって『面倒くさい』という顔をする……

マスターは若輩ながらも高い徳を備えた寛容な人物。

あなたの在り方を拒み、害することなど決してないと請け合いましょう。

ただしその柔軟なる性根故に、貴人と見れば貴人として、変人と見れば変人として遇する方でもあります。

真っ当な関係性を築きたいのであれば、まずは当世の良識に照らして奇態と映るような振る舞いを、努めて慎むべきかと。」

虞美人「……いえ、そうじゃない、そうじゃないのよ問題は。

今さらあいつの人品について疑うつもりはないわ。

そういう話じゃなくてね、あいつとは、その……

ちょっと経緯が複雑というか……

ああもう、よりにもよって、貴方に一から説明しなきゃならないなんて厄介な……」

蘭陵王「経緯?

何か縁のある血族の末裔でしたか?」

虞美人「それどころか直接の面識があるのよね。」

蘭陵王「え? ……ああ、成る程。

時を越えた命の持ち主たるあなたであれば、そういう事態も有り得るのですね。これはまた、難しい。」

虞美人「例えばの話だけれど。

貴方もしサーヴァントとして高緯に召喚されて武帝と戦うよう命じられたらどう思う?」

蘭陵王「うわ、それは……

いえ、努めて粉骨砕身いたしますが……」

虞美人「今の私の立場も似たようなものと思って頂戴。」

蘭陵王「ううむ、これは些か人智を超えた難題とも申せましょう。

私ごときの狭い見識では如何とも……」