最大の利益がある。俺が見ていたのはそれだけだった。リスクなんて考えてちゃ、とても西には行けなかったぜ?

幕間の物語(男性鯖)

シバの女王「お金……お好きですよねえ〜?」

カエサル「ハハハ!

問うまでもなかろうが、富む事も好きと見たが?」

コロンブス「ああ、大好きさ!!」

シバの女王「うんうん。

やっぱりあなたに招待状を出したのはぁ、間違いではありませんでしたぁ。

というわけで、カルデア商人会へようこそ〜♪」

カエサル「経済会、と言い替えてもよい。

すなわちここは、カルデア内で行われる経済活動の担い手たちが集う場所だ。

情報を制するものは経済を制す。

さあ、ワイングラスを傾けながら密やかなる商談を交わそうではないか。

ここでは自然、世間話と儲け話が同概念に落とし込まれその輪郭を失う。

そこから何を汲み取り、また汲み取らないかこそが我々の腕の見せ所というもの。

無論、その経済の円環に振り落とされぬ——

いやさ共に回す者として信頼に足る手腕を持つと判断されたからこそ、貴君にも招待状が送られたのだよ。

これは誇りに思っていい事だぞ?」

シバの女王「あ!

ただし『ダ』のつく王は出禁でぇす!

あの人とはどうあってもウィンウィンの関係になれる気がしませんのでぇ!」

「なんて生臭い空間なんだ。これが……オトナの世界……!」

マシュ「同感です、先輩。

世慣れしていないわたしには、いささか難易度が高すぎる場かと……。」

コロンブス「ハッハァ、確かに嬢ちゃんには厳しい世界かもな。

財布の紐はきちっと締めといたほうがいいぜェ。」

マシュ「……なるほど、話は分かりました。

ですが、そろそろ指摘させていただきます!

このパーティー会場は何なのでしょうかっ。

こんな部屋は、カルデアにはないはずですが。」

シバの女王「もちろん、私の幻術ですう。

お金の話をするには、それにふさわしい場というものが必要ですからあ?

日替わりで、適当に豪華そうな部屋を映す事にしてるんですよぅ。」

「空気的に合ってる気はするけど。コロンブス、ここも?」

コロンブス「おうよ。

悪いな、女王サマにローマのお偉いさん。

せっかくのご招待だが、俺は断らせてもらいに来たんだ。」

シバの女王「ええ? ど……どうしてですう……?

これは本当に、裏切りとか出し抜きとかのない健全な商人同士の互助会のようなものを目指していましてぇ、マネーロンダリングの必要のない、安心で安全で綺麗なお金ガッポガッポの素敵な場になる予定ですよお……?」

カエサル「そして何より、このオリエンタルな美女と秘密の会合ができるというだけで男は心躍るものではないかね?

最愛の善き美女(おんな)、クレオパトラにも内密という事実から私の本気度も測ってもらいたいものだが!」

コロンブス「いや、ここが良さそうな場なのは分かるけどよ。

俺は……商人でもねぇかもなあ、って話でな。

商船に乗ってた事があるのは事実だし、そりゃ貿易商みたいなムーブもしてたけどよ。」

カエサル「む? ははは、そんな事か。

肩書きの話なら気にする必要はなかろう。

私とて商人ではなく独裁官だ。

ただその才があるというだけでな。

この女王においても似たようなもの。

つまりこれは——

ただの『在り方』の区分に過ぎん。

経済活動に興奮する。

そんなハイソな上級者たちのな?」

コロンブス「そう、その『在り方』の話だよ。

商人なら俺もよく知ってる。

大商会の権勢を笠に着た奴、慎ましい個人商、あくどい詐欺師、善良なだけのカモ……。

いろいろな奴らを見てきたぜえ。

だから商人の理想ってモンも分かる。

最小のリスクで最大の利益

それを求めるのがあんたらだろう?」

シバの女王「ええ……まあ、基本的にはそうでしょうねえ?」

コロンブス「ハッ。じゃあ違うな。俺は違う。

最大の利益がある

俺が見ていたのはそれだけだった。

リスクなんて考えてちゃ、とても西には行けなかったぜ?

行けば必ず手に入る利益がある。

何年かかっても、どんな犠牲を払っても、諦めずに辿り着きさえすれば全部がひっくり返るくらいの利益がある——

考えてたのはそれだけだ。

いや、信じてたのは、だな。

手に入るであろう黄金の量と、航海に必要な費用……

その引き算を先にきっちりしてたワケじゃねぇ。

商人なら絶対にするはずの『見積もり』を俺はしなかった、ってワケさ。

てなわけで、お前さんたちの会に入るのは止めときたいんだ。

リスクを考えて歩みを止めなきゃいけねぇ事があるなんてどうにもムズムズしちまうんでね。」

シバの女王「ああ……なるほど……分かりました。

確かに、あなたの在り方は商人ではないかもですねえ。

その逆。あなたは——

ギャンブラー、ですね。」

コロンブス「ほう?」

シバの女王「より正確に言えばあ、期待値計算をしない、できない、報酬だけを見てリスクを無視する享楽主義のギャンブル狂!」

カエサル「ああ、いかん。それはいかんぞ。

何の勝ち筋もイカサマも用意せず大勝負に挑むものではない。

賽は投げられた、と言うときには、最低限、望んだ目が上を向くような仕掛けを施してからでなくてはならんのだ。

それが適正価格の設定なのか話術なのか軍隊なのかは、その都度変わってくるものだろうがね。」

シバの女王「ええ、ええ、いけませえん。

ギャンブラーは唾棄すべき存在です。

こちらの計算どおりの損得勘定で動いてくれない人が同じ市場にいるというのはとってもデンジャラス、逆にこちらの繊細な計算が狂ってしまいますう……!

一歩先にはこちらの、そ、そ、損が! いやああ!」

「計算に入れなければいいのでは」

シバの女王「そうしたいところですけどお……無視はできませえん……。

マスターにも、おわかりいただけますよねえ?

ほら、私が迷わず招待状を送ってしまうほどの、この人の周りに蟠る金(マニー)の因果律(オーラ)……!

良くも悪くも大きな金を動かしそうな気配!」

「(わかる。幸運EXのせいかな)」

シバの女王「絶対にこの人、放っておいてもカルデア経済に関わってきまあす。

そうなる以上、無視も放置もできませぇん。

ギャンブラーに商機を無茶苦茶にされたくないです……。

具体的には大損こきたくないですう……。」

コロンブス「だったら、どうするね?

俺は自分のやりてえようにやるだけだ。

……そっちが損をするかどうかなんてのは、正直、知ったこっちゃねぇんだがなあ。」

シバの女王「どうするかと問われれば、答えは一つしかありませえん。

あなたを、力ずくでもこの商人会の管理下において……性根を叩き直すのでぇす!

目指せ、清く正しく美しい商人魂!

まずはとっても綺麗なジャラジャラ音を出すようになる、正しい硬貨の磨き方から叩き込んであげますう!」

カエサル「フ、まちたまえ、クイーン・ドルセント。

美しいレディだけに苦労はさせられないとも。

このキング・ロスカットに手伝わせてくれたまえ。

もちろん、お望みとあらば私もローマ式弁論術による価格交渉からローマ式糖質無制限ダイエット法まで、ありとあらゆる金儲けの材料を伝授すると約束しよう。

——無論、お代はきっちりいただく!

おお、これこそ正しい経済活動!」

マシュ「やはりこんな流れですか……。」

コロンブス「ハハ、人をいきなり会に誘ってくる強引な野郎共だ。

こっちが断るのにも強引さが必要って事だろうよ!

さあ、もう一丁手伝いを頼むぜ、マスター!」

(戦闘後)

カエサル「ううむ、しまった。

オリエンタル美女との秘密の時間に浮かれすぎたというか、クレオパトラの追及をかわすためのアリバイ工作にかまけてこの勧誘自体への裏工作を怠っていた。

まだ賽を投げるべきではなかったか……。」

シバの女王「うう……。」

コロンブス「おっとそうだ、忘れてた。

さっきの説明は正確じゃなかったんでな、補足しとこうと思ってたんだ。

西に行った理由は、利益があると信じてただけじゃなかった。

他にも理由があったんだぜ。

……これをあんたに言うのもなんだかおかしな気がするがな。」

シバの女王「はぁ。それは……なんですかあ?」

コロンブス「いろいろまとめて一言で言えば、だ。

——神様のお導き、ってやつさ。」

シバの女王「…………。

それは……本当に、商人らしくないような……。

でも、ある意味では、とても商人らしいような……?

うーん、分かりませんねえ……?」