私は悪として作り上げられたもの。君は悪として当て嵌められたもの。ここに共通するのは、誰が、という主体を必要とする点だ。

幕間の物語(男性鯖)

コロンブス「さて、次で最後だ。

正直、これこそ本当に、何で俺が誘われたのかまったくわかんねえ会なんだ。

俺なりに言葉を尽くしてはみるがよ……

もし駄目だったらまた手助けを頼むぜ、マスター。

なぁに、次ばかりは荒事の加勢じゃなくて助け船の言葉が先に出るだろ。

あまりに俺との接点がなさすぎて、そりゃ断って当然だ、とマスターも話を聞いた瞬間に言い出して不思議はねえ。

……ひょっとしたら、ホントに何かの間違いなんじゃねえかなあ?」

モリアーティ「——カルデア悪人会へ、ようこそ」

「何かの間違いが……とか言ってました?」

コロンブス「おいおい、しっかりしてくれよ、マスター。

俺はこいつらとは違うだろ……違うよなあ?」

モリアーティ「ほう、そう来るかね。

計算外だとは言わないにしても、驚きではある。」

メフィスト「イッヒヒヒ!

これは悲しい、メッフィーとても悲スィー!

私たち、気の合う遊び相手が欲しいだけなのですがぁ!」

黒髭「チクショウ、酒臭いBBAが幅を利かせる海賊会なんてこっちから願い下げだっつーの!

メアリーたんのぷるつる二の腕から脇の下にかけてのホーリーゾーンは名残惜しいですけどね!

とにかく、バーソロミュー氏たちが来るまで拙者もここに顔を出しておく事にしたでござる。

ぬるま湯に浸かりすぎて悪事の腕が落ちる——なんて事がねえようにしとかねえとなあ。

まぁここの紳士たちとは好みがマッタク合わないのが玉に瑕でござるが!

どうして拙者秘蔵の漢の夢コレクションに興味を示そうとしないのよーーぅ!?」

マシュ「な、何を言っているのか分かりませんが、悪事はいけません、悪事は!」

「これは今のうちに潰しておいたほうが、カルデアのためかもしれない……」

モリアーティ「まぁ待ちたまえ、何か誤解があると思うヨ。

何もこれは、本当の反社会的行為に耽る悪の秘密結社という訳じゃあない

単なるごっこ遊びのようなものだからネ?」

マシュ「ごっこ遊び……ですか……。」

モリアーティ「人は誰しも夢を持つ——

そして鼻歌交じりに唱えるものだろう?

こんなのいいな、実現可能ならいいな、と。

我々は密やかにその夢を語り合ったり、頭の体操がてら机上で組み立てたりしているだけさ。

それなりのストレス解消にはなるものなのでね。

悪人とて居心地のいい場所というのは必要であろうという話だヨ。」

黒髭「我々、そこにいるだけで善側の奴らには警戒の目を向けられるのが当たり前だからよう。

食堂で落ち着いて美少女サーチ……

もとい、茶も飲めねえ日々だぜ。まったく。

ドリンクサーバーに黒髭スペシャル(コーヒー✖️オレンジ)を仕掛けるぐらいしかできねぇってワケさ……」

メフィスト「私は見て見ぬふりされるのが常の悪魔であるからして?

見られるだけでそれなりに興奮してしまうのですがねェ?

イヒッ、イヒヒヒッ!

はしたないメッフィーを見て、いや見ないで、やっぱり見てー!

え、もっとずっと見ていたい?

片時も目を離したくない?

でしたら眼球を預かりましょうか?

一つでも二つでも三つでも!

大丈夫、お代はいただきませんとも!」

モリアーティ「彼は私には計算できない類の悪だが、だからといって拒絶するつもりもない。

多様性は大事だ。

ちなみにジキル……いや、エドワード君にも誘いを出したが返事がなくてね。

無視されたか、別のおせっかいな誰かに破り捨てられたか。

アラフィフのガラスのハートが傷つくヨ、まったく。

ともあれ、ここはそういう懐の広いプレイランドを目指している。

みんなで賑やかにやろうじゃないか。」

コロンブス「お前さんたちのやってる事は分かったがよ。

やっぱり、俺はこの会にゃ入れねぇなぁ。」

モリアーティ「理由を……聞かせてもらおうかな?」

コロンブス「言うまでもねぇだろ?

今ここにいる俺は、今ここにいる俺の事を悪人だとは欠片も思ってねぇからさ。」

モリアーティ「ほぅ……その断言は実に興味深いね。」

メフィスト「オホホホホゥ!?

これぞまさに爆弾発言、的な!?」

黒髭「mjd(マジで)? 冗談でなく?

拙者もカリブの海に生きた者として、氏が何をしたかはそれなりに耳にしてきたんでござるが。」

コロンブス「言いてぇ事は分かる。

航海の先の話だろ?

だが俺は、ただ“普通”にやってきただけだぜ。

そう、俺がやった事は、みーんな普通の話だ。

やっていいと思った事をやり、やっちゃいけねえと思った事をやらなかった。

やっていいと思った事は部下にやらせたし、やっちゃいけねえ事をやった部下は罰した。

それだけだ。善悪なんて考えた事もねぇ。

いや、違うな。

善悪なんて物差しを用意しては行かなかった、が正しいのかもな。

なんせ西回り航海は出発前から準備が大変だった。

余計な荷物は持っていけなかったもんでよ。」

マシュ「…………。」

「待った、マシュ。今の台詞が全部じゃないかも、だよ」

マシュ「先輩……?」

モリアーティ「なるほど、なるほど。

物差しねぇ。

ああ、理解はできるとも。

だから君は君の事を悪だとは思わない、思えない、と。

だが……君の説明には、ある視点が欠落しているように感じる。

それが意図的なものかどうかでまた論点は変わってくるわけだが、はてさて?」

コロンブス「んん? 何の事かなあ。」

モリアーティ「ほう。では言わせてもらおう。

あの名探偵と違って、私には解答を勿体ぶる癖はないのでね。

今ここにいる俺は、と先程君は言った。

そして、今ここにいる俺の事を悪人だとは思えない、と。

では——今ここにいる君は、過去の君についてどう思うのかね?」

コロンブス「……さぁな。

そんな酔狂な物差しも持っちゃいねえよ。」

モリアーティ「嘘はよくない。

物差しは——あるだろう、そこに?」

メフィスト「ありますねぇ!

ヤングでフレッシュでミートな、ごくごーく一般的なメイド・イン・ジャパンが!」

モリアーティ「ククク。

そう平然と嘯けるのは——やはり、悪なのさ。

見逃すには惜しい。

考え直して、我々の仲間になってはくれないかネ?」

コロンブス「悪いが断る。

どうしても諦めねえってんなら力ずくで来な。」

メフィスト「イッヒヒヒィ!

悪魔として、自分は違うとおっしゃる誰かを悪の道に引きずり込むのはたいそう快楽的です!

つまりやる事は一つだからして!

おやこんなところに素直になれちゃう爆弾(オクスリ)が!」

黒髭「なんか難しい事言ってるがよォ。

ぶっちゃけご同類でしょ、拙者と?

邪魔なヤツラは37564系でしょ?

気が合う上に腕のいい船乗りは喉から手が出るほど欲しいのさ。

いつかのっぴきならない大勝負が来るかもだからな?

そん時に負け組になるのは黒髭の流儀じゃねえ。

さあ、早くこっちに来て本性をさらけ出しな!

悔い改めるのは死んでからのお仕事ってなぁ!」

(戦闘後)

黒髭「ちい、ちっと古臭ぇがやっぱいい操船じゃねえかよ!

海賊なんぞよりよっぽど海賊だぜ、ジジイ!」

(倒れる音)

メフィスト「うーん、悪に倒される悪こそ本当の悪なのである的な?

イッヒヒヒヒ、期せずして私は燃える展開メーカーになってしまっていたようですねぇ!

またの採用、お待ちしておりまぁす!」

(倒れる音)

モリアーティ「…………。

私は悪として作り上げられたもの。

君は悪として当て嵌められたもの。

ここに共通するのは、誰が、という主体を必要とする点だ。

君にとっては、それこそが『物差し』なのだろう。

君がかつての時代と倫理の物差しをそのまま使うのか、それとも最新の物差しを使うのか見定めたくはあったが——

ま、それは次の機会にするとするかネ。

どうせ遠からずまた会う事になるだろうし。」

(倒れる音)

コロンブス「……やれやれだ。

教授ってのはどうにも、使うコトバが小難しくていけねぇな。」