ここで私は誤った。始皇帝が動かぬ、堕落した人間だと見誤った。彼は非道だが、同時に傑物だった。

幕間の物語(女性鯖)

荊軻「知っての通り、私はかつて始皇帝の暗殺に失敗した。

それでもなお、私を召喚し使役してくれる主には感謝の至りだ。

ただ、それに甘える訳にもいかぬ。

せめて仮想でも、成功させておかねばな。

この匕首(あいくち)で仕留めるには、まだ距離が足りぬか。

では、一歩足を進めよう。

……当然。兵士たちが殺到する。

始皇帝のときは、全員武器も持たぬ文官だったが、あんな上手い状況がそうそう出来上がるはずもあるまい。

では、まず彼らを仕留めよう。

可能な限り迅速にな。

ここから先は速度が全てだ。」

(戦闘後)

荊軻「そして、また一歩足を進める。

もし魔術師がいれば、王を守るために何かを召喚するだろう。

そうだな。

守りの堅いゴーレムあたりが適役か。

そしてこれもまた、一瞬で仕留めなければならぬ。

匕首の切れ味を、更に磨き上げる——!」

(戦闘後)

荊軻「そして、最後だ。

最早、残る仕事は王を仕留めるだけ。

……ここで私は誤った。

始皇帝が動かぬ、堕落した人間だと見誤った。

彼は非道だが、同時に傑物だった。

彼が動き、私に立ち向かうことを考慮すべきだった。

飛来した私の匕首を彼は叩き落とし、私の動揺を突いてすかさず逃亡した。

そう、これが最後だ。

王の首を獲る——行くぞ!」

(戦闘後)

荊軻「……よし、これで投了だ。

王の命、確かに詰ませていただいた。

無論、この状況下では私も滅ぶがそれは致し方ない。

仮想とはいえ、よくやれたものだ。

もちろん、これは所詮絵空事だ。

私はどこまでいっても、始皇帝暗殺に失敗した身。

しかしこの身を投げ出せば、幾許かは君の役に立つに違いない。」

「死なないで欲しい」

荊軻「……ああ、そうだな。

君の厚意は、本当にありがたく思うよ。

だが生憎と、私はそういう戦い方しか知らぬのだ。

そしてそれこそが、私が召喚された理由だろうさ。

君は私を使え。

そして私が消えて果てたとき、慟哭してくれ。

君の涙が、我が全て。

そうすれば、私は私が命を捧げただけの甲斐はあると思うのだ。

……何。

その日が来るとは限らない。

それまでは精々、酒を片手に現世を楽しむとしよう。」