これではあらたな秘剣開眼にはほど遠いな。やれやれ。あの日のツバメを上回る難物に、拙はいつ出会えたものやら。

幕間の物語(男性鯖)

司会者「皆さん、お待たせしました!!

此度の挑戦者ははるか東方からやって来た『SAMURAI』と呼ばれる謎多き戦士!!

『コジュロー・ササゥキ』とその一行です!!」

マシュ「何でこんな事に……。」

ロマニ「陛下にうまく乗せられたね。

ちょっとコロシアムに遊びに来ないか?

とか言われてノコノコやってきたらこの有様だよ!

余興で命がけの剣闘に参加しろとかさすが歴史に名高い暴君ですね!!

そんなわけでたまたま参加させられた極東のSAMURAIから一言どうぞ。」

小次郎「ふむ、コロシアムか。

なかなか赴きのある会場ではないか。」

ロマニ「そして予想外に馴染んでいるね小次郎クン!?

物見遊山気分なのかい!?」

「落ち着いてるね」

小次郎「なに、剣の道を歩んでいればこのような事もあろうさ。

行往坐臥、一切これ全て修行と先人も申している。」

ロマニ「涼やかに笑ってるよ……

SAMURAIってスゴイ。」

小次郎「ん?

いやいや、それは違うぞ浪漫殿。

私は武士でも侍でもない。

ただの棒振り無頼にすぎぬ。」

ロマニ「えええええええ!?」

小次郎「刀以外にも鍬を持つ事もあった故な。

百姓仕事も乙なものだぞ?」

ロマニ「うほあ……それはそれで、どうやって英霊になれたんだって話だけど……。」

(中略)

司会者「圧倒的な実力です!!

いったい何者なんだ!!

東洋の戦士『SAMURAI』!!

だがその勢いももはやこれまで!!

続いての相手は剣闘士殺しの悪魔!!

我らのチャンピオン!!

『地獄の使者デーモンソード』!!」

ロマニ「どう見ても悪魔じゃん!!

おかしいよね!? おかしいよね!?

ローマの治世どうなってんの!?」

マシュ「落ち着いてくださいドクター。

あれは剣闘士が仮装しているようです。」

ロマニ「あー、なるほどー、剣闘を盛り上げるための演出ですねー、って、そんなわけあるか!!

羽とか尻尾とかおかしいですから!!

仮装とかいうレベル、超越してますから!!

皇帝もなんでこんなの雇ってんの? 馬鹿なの!?

うすうす感じてたけど、ローマ皇帝って馬鹿なの?

いくら小次郎クンがものすっごいサムライ……

いや、山育ちでも、あれはないよ!

もう武士道とかそういうの超越している相手じゃん!

小次郎クン、棄権しよう! それがいい!」

小次郎「はっはっは。

浪漫殿は心配性のようだ。

だが気遣いはご無用。

獣の相手なぞ、それこそ山では日常でござる。

見れば牛の頭、熊の胴、猿(ましら)の脚といったところ。

相手にとって不足なし、むしろつまらぬ。

浪漫殿はゆるりと楽しんでおればよい。

ではマスター、我らの腕前を披露とするとしよう!」

(戦闘後)

小次郎「む。

バーサーカーの如き不死身ぶり。

これは、ただの獣ではなかったかな?」

司会者「なんと、あれだけの攻撃を受けても倒れません!!

さすが我らのチャンプ『デーモンソード』!!」

ロマニ「まだ人間の兵士だって言い張るのか!

あとでネロ陛下に抗議してやるっ!」

デーモンソード「ウゴアアアアアアーッ!!」

マシュ「マスター、危ない!!」

小次郎「秘剣——ツバメ返し!!」

デーモンソード「ゴアアアアアアアアア……!!」

司会者「…………!!

な、何という事でしょう!!

あの、100戦無敗のデーモンソードがついに破られました!!」

小次郎「命の予備は今ので打ち止めか。

……はあ。

もしやの強敵と期待したが、これではあらたな秘剣開眼にはほど遠いな。

やれやれ。

あの日のツバメを上回る難物に、拙はいつ出会えたものやら。」

ロマニ「いやいやいやいや、あなたのところのツバメ絶対おかしいですよね、幻想種? 幻想種なの?」

司会者「ここに新たなチャンピオンが誕生いたしました!!

その名も東洋の戦士『SAMURAI』!!

会場の皆さん、新チャンピオンの誕生にどうか盛大な拍手をお願い致します!!」

(大きな拍手の音)

マシュ「なんだか凄いことになっちゃいましたね、先輩。」

「SAMURAIって凄い」

小次郎「ともあれこの歓声は悪くない。

雅さにかけるが、万雷の喝采もいいものだ。

藤丸殿にも手間をかけさせた。

どれ、勝利を肴に一杯といこう。

米の一俵もでるのであろう?

いやあ、武芸で金を得られるとは、よい街だなここは!」

ダヴィンチ「——その後、連勝に連勝を重ねた東方の剣士はローマ史に輝く偉大な剣闘士として、長らく民たちの間で語り継がれた……。

——とまあ、かのローマ剣闘士の歴史にしっかり記述が残っちゃってるわけだが。

なにかいう事はあるかい、小次郎クン?」

小次郎「いや、つい興が乗ってしまってな。許せ。」

「凄かったね、ツバメ返し100人抜き」

マシュ「小次郎さん大人気でしたからね。

グッズとかも凄い売れ行きでしたし。

ネロ陛下も大はしゃぎでした。

自分もでる、百人目は余だー! とか言い出して。

でも、歴史の変更がよくこのくらいの誤差で済んだというべきでしょうか。」

ダヴィンチ「いやあ、全然よくないでしょ。

ロマニ、この修正どうするの?」

ロマニ「ああ……歴史を戻しに行ったはずが、歴史を変えてしまったなんて……

どうしよう、フォウくん?」

フォウ「フォウ!!」

マシュ「『残業、全力で』とフォウさんは言っています。

ドクター、優勝賞品のウナギの蒲焼きはいりますか?」

ロマニ「いらないよ、ローマに返してきてくれ!」