一部が生き残ると——それはやがて、強固な幻想を纏うことになる。新しい邪竜の誕生、という訳だ。

幕間の物語(男性鯖)

ジークフリート「さて、何から話せばいいか……。

俺が“竜殺し”であることは知っているな?」

マシュ「もちろんです。

あの邪竜ファヴニールを倒したのですね?」

ジークフリート「ああ、そしてその後に血を浴び——

不死身の肉体を手に入れた。

とはいえ、その際にただ一箇所だけ血を浴びなかった場所がある。

それが背中だ。

……まあ、気付いてはいたのだが。」

「どうして浴びなかった?」

ジークフリート「色々あった、とだけ言っておこう。

……いかんな、どうも俺は説明が下手だ。

つまり、俺は邪悪なる竜(ファヴニール)の血を浴びたせいか——

あの竜と、共感している。

言うなれば、マスターとサーヴァントとの関係のようなものだ。

とはいえ、それは極々弱いものに過ぎない。

精々、互いの生存を確認できる程度だ。

フランスでの戦いの折り、確かにファヴニールは滅ぼしたつもりだったが……。

どうやら、蘇ったらしい。」

マシュ「な……あのファヴニールがですか!?」

ジークフリート「マスター、頼む。

フランスへ戻り、今度こそあの竜を滅ぼす。

俺を連れて行ってくれないか?」

(中略)

ジークフリート「俺はあのファヴニールを倒したことによって、伝説に刻まれ、英霊となった。

しかし、俺の存在は同時にファヴニールの実在を指し示すことにもなる。

ましてあの竜は一度この国(フランス)に召喚されてしまった。

完全にファヴニールを殺さないかぎり、あれは蘇り続けるだろう。」

マシュ「でも、既にマスターのジャンヌは存在しないのでは……。」

ジークフリート「竜種はただ呼吸するだけで魔力を生成する。」

ロマニ「——そうか。

幻想種の頂点である彼らは、魔力の枯渇など恐れる必要はない。

生きている。

ただそれだけで、魔力を生成することが可能なんだった……!」

マシュ「マスター、ワイバーンたちです!

徒党を組んで襲ってきます!」

ジークフリート「やれやれ、全く“竜殺し”も楽じゃない。

マスター、行くぞ……!」

(戦闘後)

ジークフリート「——ふむ。

このワイバーン、生まれたてだな。」

マシュ「生まれたて……?」

ジークフリート「ファヴニールのような大型の竜種になると、単体で仔を産み出すことができる。

つまり、こいつらだ。

この中のほとんどは死滅するが、一部が生き残ると——

それはやがて、強固な幻想を纏うことになる。

新しい邪竜の誕生、という訳だ。

それを恐れたからこそ、俺たち人間は必死になって竜と戦った。」

「勇気がある」

ジークフリート「ありがたいがマスター。

残念なことに、怖かったさ。

竜を退治したのも、まあ、頼まれたからだ。

俺はどうも、物を頼まれやすく——

断りにくいタイプでな。

もっとも、全ての戦士にとって竜殺しは不変の名誉だ。

……功名心に駆られたことも、決して否定できない。

そして、それを後悔するほどに怖かった。」

マシュ「でも、ジークフリートさんは勝利したんですよね?」

ジークフリート「ああ、だが前にも言った通り、どうして勝利できたのか自分ですら分からない。

気付けば血塗れの竜と、血塗れの自分がいた。

あれが巣にしていた洞窟中に赤い血が撒き散らされていた。

火傷で引き攣っていたはずの肌に、然程痛みはなかった。

……漠然とだが、勝利したという実感だけはあったな。」

「嬉しかった?」

ジークフリート「もちろんだ。

竜を倒した、その事実だけで俺は全人生を捧げてもいいとすら思った。

手に入れた財宝は、結果的に俺を不運に陥れたが……。

それに関しては後悔も逡巡もない。

悟ったような言い方は良くないとは思うのだが、俺の人生とはそういう事柄を受け入れるものだった。

誰かの願いを叶える。

誰かの喜びを、哀しみを、怒りも受け止める。

……ただそれだけで、人生は満ち足りていた。

だが——。

……!

どうやら無駄話は終わりだ。

奴の居場所を突き止めた——

つまり、奴もまた、俺の居場所を突き止めたということだ。」

ロマニ「来るぞ、極大の生体反応……。

間違いない、ファヴニールだ!」

ジークフリート「さあ、今度こそ決戦だ!

……いくぞ!」

(戦闘後)

ジークフリート「……さらばだ、ファヴニール。

今度こそ、滅びるがいい。」

マシュ「こちらマシュ。

ファヴニールの消滅確認しました。」

ロマニ「うん、こちらでも反応消滅を確認した。

追跡しているが、どこにも反応はない。

どうやら今度こそ、トドメを刺せたらしい。」

ジークフリート「これで、幻想大剣(バルムンク)も本来の力を取り戻したようだ。」

「さっきの話の続きは?」

ジークフリート「……続けるような話でもないさ。

また、語り合える余裕があるときにでも語ろう。

では、帰還しようマスター。

感謝する。」