貴方たちのお話を、物語を…真に理解し、私の中で正しく咀嚼するには。こうして“追体験”するしかないと、思うのです——

幕間の物語(女性鯖)

シェヘラザード「ここが……始まりの地、冬木。

聞きしに勝る、地獄のような状況ですね。

ここにいるだけで、死んでしまいそうです……。」

マシュ「無事にレイシフト完了です。そして——」

フォウ「フォウー!」

マシュ「勝手にフォウさんもついてきている、という懐かしい流れですね。

それで……そろそろ教えていただきたいところです。

シェヘラザードさんは、何が目的でここに?」

シェヘラザード「……お願いが……あるのです。

お話を、聞かせてはもらえないでしょうか。」

「……どんな話?」

シェヘラザード「…………。

ここであったことを。

貴方たちの歩みを。

貴方たちの——物語を

藤丸様の。マシュさんの。そして、

貴方たちの旅をずっと見守ってこられたかたの、物語を。

私は、知りたいのです。

聞きたいのです。理解したいのです。

……正しく、受け止めたい、のです。

そうでなければ、私は……。」

マシュ「……………………。」

「……………………。」

マシュ「そのためだけに、ここに?」

シェヘラザード「はい。

……その物語の“空気”を、できるだけ正確に知りたかったので。

それには実際の場で話を聞くのが一番だと考えました。」

マシュ「そうですね。

シェヘラザードさんのように臨場感たっぷりにお話を語れる人はそうはいません。

ですからその場に実際に行って、というのは手の一つではあるのでしょう。

ともあれ……わたしたちにしてほしい事は分かりました。

どうします、先輩?」

「知りたいなら話してあげよう。断る理由はないと思う」

フォウ「フォウ、フォーウ!」

マシュ「……先輩がよければ、それで。

わたしも、共に旅をした者として、できるかぎりお話のお手伝いをさせていただきます。

色々と記憶が曖昧な部分もあるかもしれませんので。

一人よりは二人、です。

ですが、こうして“ちゃんと喋ろう”と考えていると……

お話をする、という行為自体がなかなか難しい事のような気がしてきますね。」

シェヘラザード「難しく考えずとも大丈夫ですよ。

こちらから知りたい事があれば質問させていただきますし。

お二人は、そのときあった事、そのとき感じた事を、どうぞ思うまま言葉に乗せて語ってください。

それも立派な“お話”の在り方にございます……。」

シェヘラザード「全ての始まり。

レフ・ライノールによる破壊工作。

予期せぬレイシフト——

辿り着いた冬木での再会。

そして、新たな出会い……。

彼の助力を得て、貴方たちは冬木の歪んだ聖杯戦争を終わらせ、特異点を修正しようと戦い始めた……。

それは、なんと勇気の要ることだったのでしょう。

死んでしまいそうな状況に、経緯(ワケ)も分からず放り込まれたばかりの出来事だったのでしょうに……。」

「そうするしかなかったからだよ」

シェヘラザード「それでも……

その道を選べる事を、勇気、と呼ぶのではないでしょうか。

それ以外に選択肢がないと分かっていても、選べずにただ“終わってしまう”者も多いのですから……。

そうして……戦いの最中、マシュさんは自らの宝具を使う事もできるようになった……。」

マシュ「キャスター……

クー・フーリンさんの荒療治のおかげです。

あのときは、ドクターも喜んでくれて、所長が名前をつけてくださって……。

…………。」

シェヘラザード「……ではまた、物語の、先へ……。

歩きを進め、辿り着いたのは——

地下大空洞に秘されていた大聖杯。

そこに、一人の偉大なるサーヴァントが待ち構えていた、のですね……。」

「ちょっと待ってちょっと待って! なんか出てますけど!?」

シェヘラザード「……出しました。

無論、本物ではありません。

本来の英雄などには及ぶべくもない、ただの影。

私の宝具を応用して作り出した、貴方たちのお話の、単なる鸚鵡(おうむ)返しです。」

フォウ「フォウッ!?」

マシュ「襲って……きそうですよ……!?」

シェヘラザード「ご心配なく。

私がお相手します。」

マシュ「え?

シェヘラザードさんが、ですか……?」

シェヘラザード「はい。

それが、私のすべきこと。

貴方たちのお話を、物語を……

真に理解し、私の中で正しく咀嚼するには。

こうして“追体験”するしかないと、思うのです——」

(戦闘後)

シェヘラザード「はぁはぁ……

自分で語ったことではありますが、死ぬかと思いました……。」

マシュ「(シェヘラザードさんは……何より自分の死を嫌がっていらっしゃるはず。

そんな彼女が、どうして……?)」

シェヘラザード「……ふう。

ですがこれで、この地でのお話はそれなりに分かったような気がします。

ありがとうございました、マスター、マシュさん。

さて、それでは次の場所に向かいましょう。

フランス、でしたか?」

フォウ「フォウ……。」

マシュ「やはり、全部の特異点を回るおつもりなのですね……?」

シェヘラザード「貴方がたが刻んできたのはそういう物語のはず。

であれば、聞き逃すわけにはいきません。

それでは、ご案内、お手数ですがよろしくお願いします——」