神代の頃から生きていると言われている幻想種には、無限の彼方より遠いだろうな。これなら、我々の国のコヨーテの方が幾分マシだろう。

幕間の物語(男性鯖)

ジェロニモ「ほほう。

結界の術式はさすがだな!

狭い島国だけあって、綿密に構築されている。

ペルシャ絨毯のような、複雑精緻さは素晴らしい。

我々の張る結界は少し大雑把だからな。

とはいえ、綿密に構築していても——

残念ながら、この結界を張った魔術師の力量が実に足りない。

これなら、私の方が遥かにマシだ。」

マシュ「な、何事ですか——!?」

ジェロニモ「こんな場所に結界を張っている輩がいたのでな。

ちょっと破壊してみた。

さてさて、鬼が出るか蛇が出るか……。」

魔術師「ここは私の縄張りだぞ!?

精密に築いた秘匿の術式を破壊しおって……!!」

ジェロニモ「通りすがりの観光客だ。

いかんなあ、こんな場所で結界を張っては。」

魔術師「な……何者だ、貴様?

この国の人間ではないな?」

ジェロニモ「そもそも人間ではないよ、今の私はね。

とはいえ、君とて魔術師のはしくれ。

人間を既に止めてしまった、と言えるのではないかな?」

魔術師「私の問い掛けに答えろ!

貴様は、何者だ!」

ジェロニモ「ところで、ここで結界を張る理由について教えて貰いたいのだが?

ふむ、例えば——。

君の後ろにいる子供たちを生贄にする儀式を執り行おうとしたとか?」

魔術師「……!!」

マシュ「生贄……!」

魔術師「……哀れな者たちだ。

観光客に手を出したくはないのだが、帰すわけにはいかなくなった。」

ジェロニモ「さて、それはどうかな。

哀れなのは、間違いなく君だろう。

他の魔術師であれば、儀式の成果を横取りこそすれ、邪魔はしなかったはずだ。

あるいは、ここが本当に君の縄張りならば邪魔をすること自体を避けたかもしれない。

どこの国でも、属する場所が異なれば戦いは回避しようとするものだからな。

しかし、だ。

君にとって非常に残念なことに、私も、私のマスターも。

人倫にもとる行為を見逃すほど、魔術師としての人格ができていないのだ。

で、あれば。

最早、交渉する余地などまったくない。

今すぐここで死ぬがいい。」

魔術師「ほざくな——!!」

(狼の遠吠え)

マシュ「え、変身……!?」

ジェロニモ「なるほどなるほど。

さすがロンドン。

人狼(ウェアウルフ)とはな。

しかしまあ、所詮は歴史の浅い魔術で浅い変身を行っただけのもの。

神代の頃から生きていると言われている幻想種には、無限の彼方より遠いだろうな。

これなら、我々の国のコヨーテの方が幾分マシだろう。

……まあ、突っかかるなら仕方ない。

——おいで。あやしてやろう。」