先の二回は徒労に終わった。でも、この火刑だけは——どうすることもできなかった。

幕間の物語(女性鯖)

ジャンヌ「あ——

そんな、貴方は……!」

検事「くっ……!

いいから火を放て!

魔女を救いに来た悪魔など、諸共に滅ぼしてくれる!」

ジャンヌ「……だめ、やめて。

お願い。だめ……!」

「やっぱり見逃せない!」

ジャンヌ「ダメです!!

それは、間違っている……!

私は、ここで——」

「それでも!」

ジャンヌ「マスター……!

……私、は……。」

???「——願いましたね、ジャンヌ。」

ジャンヌ「え……?」

検事「言った、言った、言いました!

聞いた、聞いた、聞きました!

皆さん、聞きましたね?

皆さん、言いましたね?

藤丸は確かに助けると言った!

そして……。

ジャンヌ・ダルクは確かに助けを求めた!

さあ、ジャンヌ。

アンタは確かに闇を孕んだ!

道化の芝居もここまでよ!

さあ、正体を現す時間ね。」

ジャンヌ「何、が……!?

それに、貴方は……!」

メフィスト?「おやおや、おやおやおや。

ワタクシ、メフィストフェレス検事に何か用ですか?」

メフィスト「ありゃ、ワタクシが二体?

はて、似たようなことがあったようななかったような。」

ジャンヌ「……あの夢の続き……ということは。

やはり、貴女なのですね。」

???「あら、さすがにここまでやれば否応なく正体がばれるわね。」

ジャンヌ「黒のジャンヌ・ダルク……!

聖杯が回収された以上、あなたは消えたはず……!?」

ジャンヌオルタ「……ええ。

私が聖杯そのものであった以上、聖杯を回収されれば、私は消滅する運命だった。

だけど、聖杯はつまるところ私の魔力源であっただけ。

ジルの願いは、私という存在の創造。

聖杯が奪われて時代が修正されたとしても、聖杯に願った事実は変わらない——。

そして、願い事そのものが消えた訳でもない。

なら、存在は残っているのが必然でしょう?

といっても、私の力はもう残ってなどいなかった。

いえ、あのままであれば自然に消滅したはず。

だが——

ジャンヌ(アンタ)がそれを押し留めてくれた。

ジャンヌ・ダルクは自覚せぬまま、私という存在を認識した。

あるはずのない、己の暗い側面を見出してしまった。」

ジャンヌ「でも、私は——」

ジャンヌオルタ「そうね、アンタは私を認めなかった。

あるはずがない、と。

……それは正解。

でも、その一方で私は主張した。

私はここにいる

どんな創造方法であれ、私は産み落とされたのだと

……それでも。

私にできることは少なかった。

限定された世界を設計した上でメフィストフェレスを召喚して——

アンタの闇を刺激する、その程度。

……先の二回は徒労に終わった。

でも、この火刑だけは——

どうすることもできなかった。

ここはジャンヌ・ダルクの夢果つる場所。

彼女自身は諦めたつもりで、主にその身を捧げる気であったとしても。

第三者がいれば話は変わる

ジャンヌを救いたいと願い、それを実行してしまう誰か。」

「つまりそれは……」

ジャンヌオルタ「気付いたみたいね。

そう! 藤丸!

アンタは証明してしまった。

ジャンヌ・ダルクは救いを求めていなかった訳ではない。

最後の最期。

彼女は貴方たちに光を見出した。

助けて欲しかった

そう願った! そう考えた!

同時にこうも考えた。

それは誤りであり、己の闇。

殉教という正しい行為を捨て去り、生を貪ろうとする——

その瞬間、彼女は私を孕んだのよ!」

メフィスト「おやまあ、何とまあ。

そちらのワタクシ、マジですか?」

メフィスト?「ええ、ええ。

おっと、わかりにくいので別の名乗りをあげましょう。

ワタクシは名前の後ろに(敵)がついたメフィストフェレス。

ジャンヌ・ダルクの異なる側面から召喚されたものでございます。」

ジャンヌオルタ「もちろん、多くの人間にとって『死を忌避し生を望むこと』は、誤りではありません。

けれど彼女は違った。

ねえ、ジャンヌ?」

ジャンヌ「ぐっ……!!」

「ジャンヌ! 無事!?」

ジャンヌ「迂闊、でした……。

こんな形で認めることになるなんて……。

話は後です、ともかく今は彼女を食い止めなければ……!」

ジャンヌオルタ「さあ、決戦の時!

メフィストフェレス!」

メフィスト敵「ええ。

申し訳ありませんねぇ、皆々様。

それでは——解放!」

ジャンヌ「くっ……!」

メフィスト「さてさて。

どうなさいますか、マスター?

ワタクシ的には『逃げの一手』もありかもですよ?」

ジャンヌオルタ「……そうね。

アンタには礼を言う立場でしょうし。

いいわよ、目を覚ましなさい。

それで全てチャラにしてあげる。

アンタのところには、ルーラーなんて存在しなかった。

それで全部解決。そうよね?

けれどもし、もしも。

有り得ないとは思うけれど!

私を倒そう、などと無駄に企んでいるなら——

命の恩人であるアンタであっても容赦はしない。」

メフィスト敵「逃げた方がいいですよ?

ホラホラ、そちらのワタクシも説得なさい!」

メフィスト「そうですねェ。

では説得を。

マスター、逃げた方がいいですよ。

ホラ、あの衝撃でジャンヌの力の大半がオルタ側に寄りました。

つまり、ワタクシを含めても向こうとの戦力差は絶・望・的!

人理を救うマスターとしての意義を、忘れてはいけませんなァ。」

「うん、忘れていない」

メフィスト「……では、お答えは?」

「助けて勝つ!」

ジャンヌ「うう、嫌な予感が見事に的中……!」

メフィスト敵「おやおやワタクシ、それ説得になってませんねェ?」

メフィスト「当然です!

カルデアのマスターを!

舐めないでいただきたい!

ヒュー! カァーコイイーー!

もちろん、言ってみたかっただけですよぉー!」

「どうでもいいけど、目がチカチカする!」

ジャンヌ「マスター。

よろしいですか?

今の私は力が半減しており、同じルーラーでも相手の方が上です。

メフィストフェレスも、恐らく互角でしょう。

まず、勝てません。

それでも、貴方は戦うのですか?」

「それを乗り越えてきたんだよね?」

ジャンヌ「……!」

ジャンヌオルタ「……!」

ジャンヌ「損な性分ですね、貴方は。

ですが、だからこそ私が召喚されたのかもしれません。

かつて存在しただけの、ただの亡霊であろうとも。

肩を貸すことくらい、許されるでしょう。」

メフィスト敵「戦いですか、残念ですねェ。」

メフィスト「平和主義なのですがねェ、ワタクシ!」

メフィスト敵「しかしまあ、いいか!」

メフィスト「何しろワタクシってば、悪魔も聖人も茶化すメフィストフェレス!」

メフィスト敵「ザッツライト!

それでは紳士淑女亡霊の皆様方、竜の魔女の焔に巻き込まれなさい!」

ジャンヌ「……それはそれとして、二人並ばれると、非常にややこしいですね!」

「同感!」

ジャンヌオルタ「……ったく、調子狂うわこの道化師。

ま、道化に道化をぶつけるのも悪くないか。

さて、ここに散らばっているアンタの記憶。

善良であると同時に邪悪な、民衆という名の怪物たち

ちょっと本物の怪物に変えてあげるわ。

さあ勝てるかしら。

今の私に、このジャンヌ・ダルクに!

勝てるかどうかはわかりませんが、戦うべきとこの旗が告げています。」

ジャンヌ「行きます、マスター!」