……帰ってはいけないと思ったんです。だって、私は捨てたんですから。家族と、故郷を、何もかも。

幕間の物語(女性鯖)

マシュ「ジャンヌさんの故郷は、確かドン・レミ村でしたね?

ここから近いのでしょうか。

よければ、顔を出してみてはいかがです?」

ジャンヌ「残念ながら、フランスは結構広いですからね……。

数日かかる旅にお二人を付き合わせる訳にもいきません。

それに、戻ってはいけないと思います。

フランスを救うと決めたとき、故郷にはもう帰れまい、と覚悟をしましたから。」

マシュ「そうなんですか……。」

「帰りたいと思ったことは?」

ジャンヌ「……むむ、マスターは意地悪な質問を出しますね。

ええ、帰りたいと思ったことはあります。

何度も、何度も。

矢が刺さって傷口から熱を出したときは、特に。」

マシュ「でも、帰らなかったんですね。」

ジャンヌ「ええ、例えばもし——

何もかも上手くいって、私が故郷に帰っても何の支障もなくなったとしても。

……帰ってはいけないと思ったんです。

だって、私は捨てたんですから。

家族と、故郷を、何もかも。」

マシュ「そんな……。」

ジャンヌ「ふふ、どっちみち仮定でしかありません。

私は捕縛され、炎に消えた。

これはもう、終わったこと。

それを改変しようとすれば、あの時のジルのようになってしまいます。

——でも、何故かわからないですけれど。

判を押したように、皆さんには未練があると思われてしまうんですよね。」

マシュ「それは……仕方ないことなのかもしれません。

ただ単純に、若いというだけで——

人は生命を惜しむものですから。」

ジャンヌ「そうですね。

確かにそれは正しい。

時間、時間さえあればやりたいことがやれた、あるいはやれなかったことがやれた。

……どちらもなかったとしても。

やりたいことを見つけることができるかもしれない。

人間には無数の可能性があり、若ければ若いほどにその確率は飛躍的に高くなる。

それを平気で投げ棄てた私は、やはり愚者であっても聖女ではありません。」

マシュ「……そうですか。

なら、もしかするとわたしも——」

「マシュも?」

マシュ「あ、いえ!

……何でもありません。

それより、マスター。街の姿が見えます。

行きましょう。

この時代、この状況をまずは把握しないと——。」