アンタ、今、割と人間臭くなってるぜ。ま、それはマスターの性質もあるか。コイツは何とも人間らしい人間だからな。

幕間の物語(女性鯖)

クー・フーリン「おいおいおい。

何だこりゃ。

死霊たちを掻き集めて、軍団でも作る気か?」

スカサハ「いいかもしれんな。

それならば、無闇と孤高を気取らずに済みそうだ。

下がれ。亡者よ。」

クー・フーリン「……なんだそりゃ。

オレの軽口に付き合うなんざ、らしくないぜスカサハ。」

スカサハ「どうかな。

この魔境で門を護りながら、幾星霜。

あらゆる生とあらゆる死を見てきた。

いっそのこと、腐ればいい——と思ったよ。

だがこの身は腐ることがなく、魂は相変わらず、凍り付いたまま変わらない。

さりとて、邪悪の奥底へ堕落しきってしまうには私の在り方は真っ当に過ぎたらしい。

欲が薄れ、五感が伝えるのは静寂と永遠のみ。

…………そんな折だ。

呆気なく人理が焼け落ちた。

そうして私は、無限の退屈を慰める邂逅を得て……

正真正銘の死を得る、千載一遇の機会を得た。

まあ。

死して、この魂が何処へ至るのか。

その実分かったものではないがな?

英霊の座とやらか。

焼失した影の国か。

それとも——」

スカサハ「ともあれ。

私は、望んでしまうのだ。

エーテルのそれではあれ、肉があり骨がある。心臓も。

仮初めとはいえ、サーヴァントとしての命もだ。

ならば試してみたいと思ってしまう。

…………抑えても、抑えても、それは留まらぬ。

結果、このようにしてマスターと馬鹿弟子たちを巻き込んでしまったよ。

すまぬ。

謝罪で済むとは思わぬが、な。」

クー・フーリン「回りくどいやり方しやがって。

——しょうがねえ。引導を渡してやるさ。

嬢ちゃん、マスター。準備はいいな?

あれはスカサハの本気だ。

滅多に見れるモノじゃねえ!

ハラくくれ!」

スカサハ「では、殺されよう。

あるいは、殺そう。

ゆくぞ————

出来うる限り遠慮はせぬぞ!」

(戦闘後)

スカサハ「………………よく、戦うものだ。

此処まで至ったか。」

クー・フーリン「終わりだ、スカサハ。

呆けているならとっとと醒めな。」

スカサハ「まだ私は死んでいない。

お主たちも、生きていよう。

なぜ止める。

殺し合いは、始まったばかり。」

クー・フーリン「何故も何もねえだろう、スカタン師匠。

記憶の中で殺したところで、それは事実じゃねえ。

空想の死だ。

んなもん、余計に死にきれなくなる。

死ぬなら現世で死にな。

さらに贅沢を言うんなら戦いに負けて、だろ?」

スカサハ「……………………。」

クー・フーリン「そもそも何が、出来る限り遠慮はしねぇ、だ!

本気でも何でもねえ!

槍だけじゃねえだろう。

アンタが本気を出したなら、門のひとつも出すはずだ。」

マシュ「門——」

クー・フーリン「死溢るる魔境への門(ゲート・オブ・スカイ)。

見た事ねえか?

問答無用で、影の国の奥底へ相手を引きずり込む技だ。

影の国の底の底、ソイツはもう殆どあの世だ。

生き物なんぞはたちまち死に果てる。

それをまったく使わない、ってのはよ!

手加減でなくて何だ、スカサハ!」

スカサハ「…………む、むむ。」

クー・フーリン「図星を指されたって顔だな。

へえ、珍しいモン見たぜ。

……召喚されたせいかね。

アンタ、今、割と人間臭くなってるぜ。

ま、それはマスターの性質もあるか。

コイツは何とも人間らしい人間だからな。」

「人間らしい人間って?」

クー・フーリン「自分に出来る事を、出来る範囲で努力する。

出来ねえ事なら、出来る範囲に収めようとする。

先達の助けを借りて、未来を夢見ている。

絶望的な状況下でも、人間として正しく抗い続ける。

時折挫けそうになる——振り返りもする。

だが足を止めるのも振り返るのも一瞬だ。

な? 心当たりがあるだろう?」

スカサハ「…………参ったのう。

意識してはいなかったが、マスターに引っ張られていたのか、私は。」

クー・フーリン「さもなきゃこれほど弱々しくはならねえさ。」

「え——スカサハが、弱々しい?」

クー・フーリン「在り方ってのかね。

何を望むにしろ、スカサハが後ろ向きなのはらしくない。」

マシュ「それは……

何だか、わたしにも分かる気がします。

普段のスカサハさんと違うのは言動だけではなく、戦い方とか、そういうモノも含めて……」

クー・フーリン「嬢ちゃんもケルトのやり方が分かってきたか?

ま、そういう事だ。

スカサハ。

今、死を望むのは逃避だ。

アンタはそんなタマじゃねえだろう。

アンタは、ほら。

戦い抜いた最後の報酬としての、稲妻のような死を夢見ていたじゃねえか。」

スカサハ「好き放題言ってくれる。

だが、その通りではあるな。

よりにもよってこの現在、何もかも打ち棄てて死へと至らんとするのは逃避以外の何物でもない。」

クー・フーリン「やれやれ、割に合わないったらありゃしねえ。」

スカサハ「すまんな。そして忘れろ。

…………はぁ。なんとも…………

貴様なんぞに気弱なところを見せてしまった。

師匠として手ひどい失態をした。

うむ。

この失態を帳消しにするためには、貴様を三度死ぬまでしごかねばならん。」

クー・フーリン「そりゃただの八つ当たりだ!」

スカサハ「ばかもの、汚名挽回と言え。

返上する相手がいないゆえ、さらに酷い記憶で上書きするのだ。」

クー・フーリン「ひでえもんだ。

ホントに何も変わってねぇ。

だがまあ——

マスターのおかげで人間らしい顔は見られた。

貴重な体験をしたと思っておくさ。」

スカサハ「——ふん。

生意気な口を叩くようになったな、光の御子。」

クー・フーリン「これでもそれなりに修羅場を潜り抜けてきたんでね。」

スカサハ「そうか。

では、いつか私の前に立つのはやはり貴様なのだろうな。

さらばだクー・フーリン。

その朱槍が私の稲妻になるのは、もう少し後か——」

マシュ「……良かった。

周囲の死霊も消えました。」

クー・フーリン「まったく、無理難題を残しやがって。

あの女の息の根を止めるなんざ、それこそ神サマを切るだけの腕が必要だっての。

ま、何はともあれ夢から覚めようぜマスター?

スカサハとオレの望みはともかく、アンタにはアンタの正念場が待ってるんだからよ。」