強い信念と憧れがあるのなら理想は叶えられる。だが、それは凡人にとってイバラの道だ。理想は叶うが、引き替えに己の人生は失われる。

幕間の物語(男性鯖)

エルメロイ「レディ。

隠れるのなら、せめてその盾を地面に置くように。

砂浜に黒鉄の壁ができればイヤでも気がつく。

おまえもだ、藤丸。

マスターならそれぐらい指摘してやれ。」

マシュ「す、すみません。

なんだか話しづらい雰囲気だったので……」

フォウ「ンー……キャウ、キャーウ!」

エルメロイ「別に。海を見ていただけだ。

聖杯によって、この海はオケアノスと名付けられたと聞いてな。

しかし名前ばかりだな。

確かに見渡すかぎりの水平線だが、端と端が癒着しているだけだ。

巻物(スクロール)と同じだよ。

永遠に同じ場所を回る四方を封印された海。

航海は無限にできるが、その実、世界は切り取られた有限(はこにわ)だ。実に下らん。

こんなものが、俺が目指した最果てのものか。

オケアノスを語るには千年早い。」

マシュ「オケアノスを目指した……?

それは諸葛亮さんの言葉ですか?」

エルメロイ「……フン。

私の言葉だよ。失言にも程がある。

少々、センチメンタルにすぎたようだ。

ただの夢の話だ。

少年時代に憧れたものがあり、その場所に行くために経験を重ねた。

今の私は自然に辿り着いた姿じゃないんだ。

本来、私はもっと平凡な人間だった。

胃が痛いだけの教授職も、エルメロイの名を受けたのも、三流の魔術回路を鍛え続けたのも、すべて——

未熟な時に憧れた、成りたかった自分になるためだ。

その結果が、このいびつな魔術師像というワケさ。」

マシュ「いびつな魔術師像……ですか?

ミスター・エルメロイは一流の魔術師なのに?」

エルメロイ「役職だけは一流だな。

だが、魔術師としての腕前は藤丸と大差はない。

私は知識と経験、そして前準備でなんとか一流の怪物どもに合わせているだけだ。

そのあたりはDr.ロマンも見抜いているよ。

あの男はああ見えて、才能の査定に手心は加えない。」

「……つまり、自分の理想には届かなかった?」

エルメロイ「馬鹿は休み休み言いたまえ。

届いたよ。

その結果がこの姿だと言っただろう?

理想には届いたが、それは自然なカタチじゃないだけさ。

毎日が少しばかりハードになって、胃が痛むぐらいか。

藤丸、覚えておくといい。

強い信念と憧れがあるのなら理想は叶えられる。

だが、それは凡人にとってイバラの道だ。

理想は叶うが、引き替えに己の人生は失われる。」