英霊は憑依する際、自分に近い容姿、素養を持つ人間を選ぶからな。それが強くないハズがない。

幕間の物語(男性鯖)

エルメロイ「そういえば、面と向かっての挨拶はまだだったな。

私はロード・エルメロイⅡ世。

中華は三国時代にその人ありと謳われた天才軍師、諸葛孔明の霊基にされた、ただの人間だよ。」

「ロード?」

エルメロイ「なに、知らんのか?

アニムスフィアの当主はどんなマニュアルを作っていたんだ……」

マシュ「失礼します、エルメロイⅡ世。

ロードというのは、あの魔術協会における君主(ロード)?」

エルメロイ「そうだ。

魔術協会の中心、時計塔を運営する十二の貴族。

私はその一つの代表だよ。

最下位の十二位だがね。」

ロマニ「という事は、オルガマリー所長とは知り合いだった?

あ、いや、そもそもキミは何時の時代の人間だい?」

エルメロイ「私も藤丸と同じ、二十一世紀の人間だよ。

気がつけばこうして擬似サーヴァントになっていた。」

マシュ「擬似サーヴァント……

わたしと同じ、英霊に力を預けられた人間、ですか?」

エルメロイ「……結果は同じようなものだが、原理はまるで違うな。

君と同じ存在はいまのところいない。

デミ・サーヴァントなぞ、本来なら不可能な技術だ。

吸血鬼たちに混血(ダンピール)が生まれないようにな。」

ロマニ「さすがは時計塔の魔術師、そのあたりの不可能性は正しく理解しているんだね。

その通り。

マシュは極めて特殊な成功例だ。

偶然から生まれたのだから再現性はないんだよ。」

エルメロイ「それを聞いて安心した。

カルデアがそんなふざけた組織だったのなら、即座に解体を提案していた。」

マシュ「…………………。」

フォウ「フォウ、フォーウ!」

エルメロイ「……む。

すまない、失言だった。

レディ、君に罪はない。

今の発言は訂正したい。」

マシュ「い、いえ、デミ・サーヴァントが非人道的な試みだったのは否定できません。

貴方の嫌悪感は正しいものです、ロード・エルメロイ。

それが正義と道徳から生じているものなら尚更です。

それより、あの、話の続きいいですか?

擬似サーヴァントとは何でしょう?」

エルメロイ「ああ、すまない。

ではそちらの質問に答えよう。

擬似サーヴァントとは英霊に憑依された人間だ。

これは何らかの理由でサーヴァントになれないもの……

高次元の生命である神霊や、カルデアの召還式では霊基が作りづらい英霊だな……

そういったものがサーヴァントとして召喚されるされるために、人間の体を霊基(うつわ)にして顕現するケースがある。

これが擬似サーヴァントだ。

人間の体を触媒にした、強引な英霊召還方式だよ。」

「?????」

ロマニ「ああ、藤丸君が混乱している!

無理もない、かなり特殊なケースだからね。

ようはオバケに乗り移られた人間ってコト。

で、乗り移られた人間の精神はその英霊のものに書き換えられるんだけど……」

エルメロイ「私は逆だ。

諸葛孔明の役割だけを請け負った。

中華の合理性と西洋の合理性は相容れないからな。

人理を護るという大目的において、我々の利害は一致した。

その過程においてどちらが主導権を握るかを軍師殿と論議した結果、現代に聡い私が残る事になった。」

ロマニ「なるほど。

諸葛孔明らしい発想だ。

死せる孔明、生ける仲達を走らす、というヤツだね。

重要なのは自分が考案した計(さく)であって、自分が活躍する事ではない……

ようは、孔明の計を十全に使える人間がいるのなら彼は表に出る必要はない、と判断したのか。」

エルメロイ「そういう事だ。

数分しか話さなかったが、あれは史実以上の化け物だな。

人間と話している気がしなかった。」

「……ただの人間ってこと?」

フォウ「フォウ、フォーウ」

エルメロイ「ただの人間ならとっくに時代焼却で消えている。

私は英霊に憑依され、一体化する事でこの一時だけではあるがサーヴァントと同じになった。

付いてきたまえ。

その証拠をお見せしよう。」

(中略)

マシュ「戦闘、終了しました……

なんか……いつもの三倍ぐらい……疲れました……」

「……災難だったね、マシュ」

フォウ「フォーウ!」

マシュ「先輩、フォウさんも……ご無事で、なによりです……

あの野生動物たちの関心はお二人に向いていましたから、わたしも、とにかく必死でした……」

フォウ「フォウ!?」

エルメロイ「事は済んだな。

どうだった藤丸? 私は合格か?」

「人間なのに戦えてずるい」

エルメロイ「ずるい……?

ああ、おまえとの比較か。

同じ人間なのに前線に出られて羨ましい、と。

その後ろめたさは大切にしろ。

直接戦えない無力さに耐えるのも、強さの一つだからな。

ご覧の通り、私はサーヴァントとして戦える。

戦力としてはやや不満だろうが、そこは知力で補うさ。」

ロマニ「ああ、確かに彼は一流のサーヴァントだ。

そもそも擬似サーヴァントはみんな特例級だからね。

藤丸君の事だ、そのうち神さまと一体化した擬似サーヴァントにも出会えるんじゃないか?」

エルメロイ「だろうな。

……まあ、私は特殊なケースだ。

擬似サーヴァントに選ばれる人間(うつわ)……

魔術師は、もともと強力な力を持っている。

英霊は憑依する際、自分に近い容姿、素養を持つ人間を選ぶからな。

それが強くないハズがない。

そうして一体化した彼らは第三人格とも言える、新しい人格に転生する。

この手のサーヴァントは厄介だぞ?

なにしろ思考形態が神霊よりだ。

我々が及びも付かない我が儘、無茶振りを平気でしてくるだろう。

その時になれば思い知るだろうよ。

私なんぞ、まともな方の憑依英霊だとな。」

ロマニ「ははは……

ま、それは先の楽しみにとっておこう。

お疲れさま、マシュ、藤丸君。

ミスター・エルメロイⅡ世と一緒に帰ってきてくれ。

何もできなかった代わりに、お茶の用意をして待っているよ。」