その想いは私にこそ向けられたもの。懐かしきダナンの香りに他ならない。ならば間違いなく。辻斬りは私を探しているのです。

幕間の物語(男性鯖)

マシュ「先輩。ディルムッドさん。

シミュレーター、問題なく起動しています。

リアルタイムでシステム全体の稼働状況を監視していますが、異常を感じたら言ってください。

現在、そのエリアにはNPCを配置していません。

本来であれば何も起こらないはずの空間です。」

「了解」

ディルムッド「かの辻斬りとはすぐに見えられるでしょう。

たとえ、無人と設定された領域であっても。」

マシュ「現在、先輩とディルムッドさんのいるエリアには、外部からのアクセス遮断処理を行っていますが——

そうだとしても、です。」

ディル「辻斬りとして彷徨うソレは恐らく探しているのです。

であれば、この好機を逃すはずもない。」

「……探している?」

ディル「————この私を。」

マシュ「それは一体……」

ディル「但馬殿がマスターにお会いにならなかったという事実。

それは何故なのか。

私には、分かるのです。」

マシュ「…………。」

ディル「辻斬りの正体は、そう。

一種の呪詛の類に違いない。

呪詛にまでなってしまった想いの類です。

それが、よもやシミュレーターの中で縁を辿って、この私を追い求めていようとは。

——清姫殿。」

清姫「はい! ここにおります!」

ディル「先ほどの清姫殿の肩には、ほんの僅かですが……

呪詛の残滓が香っておられた。

それは、辻斬りに遭遇した但馬殿とお話をなさったがゆえのこと。

但馬殿はマスターから縁を遠ざけようとしたのでしょう。」

マシュ「!?

管制室内のオートチェックには何も引っ掛かりませんでしたが……そんな……!」

清姫「そういえば確かに……

ちょっと肩が重かったような……。

あ、念のため後で灼いておきますね。その呪。」

ディル「流石です。

貴方であれば呪詛への対処は容易いと但馬殿はお考えになったに違いない。」

「呪詛といえば……清姫……」

ディル「いえ、その想いは私にこそ向けられたもの。

懐かしきダナンの香りに他ならない。

ならば間違いなく。

辻斬りは私を探しているのです。

皆様にご迷惑をお掛けすることなく陰ながら処理することも考えましたが、しかし——

今の私はマスターにお仕えする身。

命令なくば私が槍を振るうことはありません。

故に……」

「自分から言い出してくれたんだね。ありがとう、ディルムッド」

ディル「勿体なきお言葉。

お気をつけ下さい、マスター。

この香り。

——件の辻斬りが接近しています!」

マシュ「こちらからの観測情報には何も……

いいえ! 前方に敵性反応を検知しました!

これは……!」

清姫「まあ禍々しい!」

マシュ「異常なNPCデータです!

有り得ない数値を弾き出しています!

先輩!」

「とりあえずやってみるよ」

ディル「たとえ仮想空間であろうとも!

マスターには指一本触れさせはせん!

ディルムッド・オディナ! 参る!」