一点の矢の衝撃が、波のように全身を通り過ぎて……受け止めて分かりました。貴方なら神すら射貫くと。

幕間の物語(男性鯖)

マシュ「マスター! 何かが接近してます!」

俵藤太「きたな!

いよいよ三上山の大百足のお出ましだ!」

「げえっ、源氏! なんで電車みたいに繋がってるの?」

俵藤太「大百足は再現できなくとも、一目見ただけで全身から汗が噴き出す緊張感はどうしても欲しくてな。

その点、このお三方なら申し分ない。

無理を言って、百足のように繋がって貰ったのだ。」

源頼光「……はい。

縄跳びで列を作り、息を合わせて走る……

幼児遊びのようで恥ずかしいのですが……

あの俵藤太殿の頼みとあれば断れる筈もなく。

魔性を演じることについては複雑な気持ちですが、この頼光、百足になります!」

牛若丸「これも主殿を楽しませる余興ならば……

今宵我らは三連星、存分に斬り結びましょう!」

金時「おう、頼光サンもたまには童心に返らねぇとな!

いっつも大将の仕事ばっかりだからよ!

そういうワケでミナモトライブfeaturingゴールデン、源氏トレインでぶっ込むんで夜狼死九!」

俵藤太「うむ。

自分で段取った事だが、こうして見ると恐ろしい。やりすぎた。

特に頼光殿がやばい。

遊びと本気の境界線が分かっていない。

(あの御仁、もしや幼少期にひとりも遊び相手がいなかったのでは……

ああいや、それは拙者が気に病む事でも気に懸けてよい事でもなし!)

いようし、怪物退治とはこうでなくては!

さあ藤丸、楽しむぞ!」

(戦闘後)

俵藤太「……一応確認しておくが、頼光殿の頭の飾りを射れば拙者の勝ちということだったな。」

頼光「もちろんです。

私の刀をすり抜け、見事皆中なされば、ですが。」

俵藤太「うむ、それは本物の大百足退治より難行かもだ!

ほっ!」

牛若丸「なんの!

私がいるかぎり、頼光殿に矢は届きませぬ!」

金時「へっ、頼もしいぜ。

そんじゃオレっちは攻撃に専念できるな。

オラッ!」

マシュ「前衛の防御は任せて下さい!

藤太さんは後衛から頼光さんを!」

俵藤太「なに、ここで決めるとも。

マシュ、そのまま構えたままでよい!」

マシュ「え……でも。」

俵藤太「そこがいい……

その盾の位置と角度こそ、まさに絶品!」

金時「ああん、どこを狙ってんだ俵の大将?

一か八かたぁアンタらしく——」

(矢を盾を弾く音)

頼光「なんと……。」

金時「マジかよ……マシュの盾で弾いて、大将の頭飾りに当てたのか!

弾丸ならともかく、矢ってのはそういう風にできた武器じゃねえぞ!?」

マシュ「……正確に言えば反射ではなく軌道修正ですが。

それでも、まさに一射必中の腕前かと……。」

俵藤太「なに。

マシュも盾の使い方が分かってきた、と言っていたのでな。

うまくいなすと思っていた。

加えて、流石は円卓の盾よ。

拙者の剛弓をたやすく流すとは、いやはや、自信を無くすのう!」

マシュ「いえ……とんでもないです、俵卿……。

一点の矢の衝撃が、波のように全身を通り過ぎて……

受け止めて分かりました。

貴方なら神すら射貫くと。

(でも……これほどの名手でありながら、なぜ普段は俵を投げたりするのでしょう……?)」

牛若丸「ふう。

これで百足退治演技も終わりですね。

最後は八幡大菩薩の神技にお目に掛かれて光栄でした。」

源頼光「はい。

外しの一射から、本命の二段撃ち。

正鵠を射る、とはまさにこの事。

お見事、俵殿。

幼子の頃から聞き及んでいた貴方の武勇は真実でした。」

俵藤太「なーに、拙者は少し意表を突いただけだ。

二度は通じぬ。

しかし流石は源氏の頭領だ。

今になって震えがきたぞ?

貴殿、拙者が外そうものなら一足で踏み込み、こちらの首を落とす気でいたな?」

源頼光「まあ。それは俵殿の思い過ごしかと。

仮にそうだとしても、私の踏み込みなど軽くいなして仕舞われたのでは?」

俵藤太「うむ。そういう事にしておくか!

このような身の震えも再現するためになるとは、拙者も考えてはおらなんだ!」

マシュ「身の震え……

本当に怖かったのですか?

あれだけの戦いぶりだったのに?」

俵藤太「そうだぞう。

拙者とて冷や汗もかけば肝も冷える。

後になってみれば神をも捕食する大魔虫との対決など、怖ろしくない筈がない。

だが、あの時はそれどころではなくてなぁ。

なにしろ天女のような者に拝まれたのだ。

まさに天にも昇る意気込み、恐ろしさより先にやり甲斐の方が滾ってきた。

冒険、死闘は若いうちでなければ出来ぬからな。

良い経験になったよ。」

源頼光「剛胆にして爽快。

そうでなくては龍神様が頼りにする筈もなし、ですね。」

金時「おお。

神喰い虫なんてアンタ、本来は通り過ぎるのを待つモンだ。

それを唾つけた矢だけで追っ払う。

俵の大将はこの通り、自分から偉ぶる人じゃねぇが本気をだすとマジモンの怪異殺しだからな?

なにしろあのマサ、」

源頼光「こほん。

ところで金時、歩けません。

頭を打ったせいでしょうか。

母を運んでくださいますか?

なんでも食堂に朝餉の準備があるとか。

戦いの後でみな小腹も空いておりましょう。

どうでしょう、皆さんでいただくというのは?」

「そうそう、俵印のおにぎりがたくさん」

金時「そいつはいい、握り飯なら大好物だ!

ビュッフェといこうぜ、マスター!

俵の大将なら海の幸も山盛りだろうしな!

では私もご相伴にあずかりましょう。

あら汁など美味しそうです。」

俵藤太「はははははは!

目ざとい連中よ、さりげなく注文までつけおって!

だがそれがいい。

戦いよりは美味い飯。

これぞ世の王道だ!

藤丸、マシュ。

大百足退治はこれにてしまいだ。

満足いくものであれば拙者も満足だ。

さあ、共に飯を食おうではないか!」

マシュ「はい!

ご馳走になりますね、藤太さん!」