「王ではなく英霊として戦う、巨人退治のダビデの姿。それがきみの思い出になるなら、それでいい。」「…ダビデ王?」

幕間の物語(男性鯖)

ロマニ「あー……

自分の成功体験が永遠に続くと信じて疑わないダビデ王、ダビデ王。

用もなく実体化してレイシフトしたなら、さっさと帰還してくれないか?

ほんと、レイシフトだってタダじゃないんですよ。

これ1回で職員1人の給料が飛ぶんですからね。

いや、用はあるとも。

電力は大切に、だろ?

僕だってそこは同感だ。

じゃ、そろそろ出発しようか、藤丸君。」

マシュ「……出発、ですか?

この山岳地帯の風景を見に来たのかと思いましたが……」

ダビデ「それもあるね。

ほら、僕の出番はあの大海原だっただろう?

だから、きみたちの活躍で修正された世界を1度、この目で見てみたかった。

それはこうして叶ったから、後は英霊としてのお仕事だ。

僕の用件は荒野にある。

もちろん、敵もいるだろうから気を付けよう。」

マシュ「敵……ですか?

獅子王の残党でしょうか。」

ダビデ「はは。僕の敵はそれらじゃないよ。

王ではないダビデの敵と言えばひとつしかない。

——巨人だ。」

ロマニ「巨人って言ったって……

13世紀のエルサレム周辺にそんなものいないよ?」

ダビデ「いるとも。

だから、僕が此処にいるんだ。」

ロマニ「(神殿どうこうって話はどこへ……)」

マシュ「(はい。

さっきは確かに、ダビデさんは神殿の建造と仰っていたはずですが……)」

ダビデ「もちろん、神殿を築く事はやぶさかじゃないが、今回はパスしたのさ!

だってアビシャグがいないからね!

格好つけても疲れるじゃないか!」

ロマニ「ねえ、今だから思うけど、普段なにを考えて活動(いき)ていたの!?」

ダビデ「ははは。

まあ、神殿造りはそれが得意なものに譲るとして、だ。

僕は僕の得意分野で、藤丸に性能をアピールしようと思ってね。

巨人というのはそういう種族だと思われがちだけど、必ずしも、そういう訳じゃないんだ。

幻想種としてのそれはね、種であるという以前に、荒ぶる力を示すものだ。

恐るべき力。

人の形をして、けれども人ではない。

神のようで神ではない——

あ、ここで言う神というのは、多神教で言う神だ。

天におわす御方のことではなくて、ね。

人ならざるもの。

人であるもの。しかして、力あるもの。

荒ぶるもの。逆らうもの。

たとえば——ほら、見てご覧。

ああいうものだ。」

マシュ「前方に魔力反応!」

フォウ「フォーウ!!」

マシュ「確かにあれは、大きな人型の……スプリガン!?

魔術によって形成された存在です!」

(中略)

マシュ「戦闘終了。

スプリガン、すべて撃破しました。」

ダビデ「……なんて物持ちの悪い巨人だろう……

もっとお宝を溜め込んでいてほしいものだよね……

その点、竜退治の英霊はいいなあ……

竜は財宝を溜め込んだメガバンクだからねぇ……」

ロマニ「そのおっさんの話は聞き流していいぞ藤丸君!

第二陣がキミたちに接近中だ!

注意してくれ、さっきより量が多い!」

ダビデ「おっさんとは失礼な!

お兄さん、あるいはお爺さん、と呼びたまえ!」

ロマニ「はいはい、お兄さん、お兄さんですね。

それならもう少し若者っぽい言動を心がけてくださいね!」

ダビデ「ああ、もちろんだとも。

僕はどれほど歳を取ろうと若々しいのが自慢なんだ。

……しかし、確かに数が多いな。

巨人の軍勢と言う訳だ。

神話の再現かな?」

ロマニ「本当にね。作為的なものを感じるよ。

ダビデ王、何か心あたりは?」

ダビデ「うーん。

割れ鍋に綴じ蓋、というヤツかな?

いや微妙に違うな。

売り言葉に買い言葉?

ようはどちらも適正価格という事さ。

僕は『巨人を倒す者』だからね。

であれば、この世界にある『巨人とされるもの』が集まらない筈がない。

彼らは僕を倒す為にここに集まり、僕はこれを倒す為に奮闘するという訳さ!」

「巨人にモテモテじゃないですかー!」

ダビデ「そうなんだよねぇ。

でも巨人と縁があってもなあ。

僕は自分より背の高い女の子は、ちょっとね。

率直に言ってタイプじゃな、」

マシュ「来ました、ゴーレム複数体!

先刻のものよりも数が多いようです!」

ダビデ「おっと。

僕の美学を語っている時間はないか。

とはいえ、一方的に襲い掛かる事もどうかと思う。

巨人とはいえ知性があるなら聞かせよう。

きみには改心する権利がある。

この石を4度投げるまでは話し合いの余地がある。

ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ——

そうか、では仕方がない!

力劣る者であれ、正しい訴えは巨人を倒す。

それをこの小さな石で証明してあげよう!」

(戦闘後)

ダビデ「……さて、そろそろお目当ての親玉だ。

きみたちの活躍によって修正されゆく特異点。

元に戻るはずのこの大地。

そこに顕れて押し寄せようとする巨人の軍勢。

神の威光たるこの大地を破壊せんとするものども。

その首魁といったら——」

「何だっけ?」

マシュ「……ゴリアテ。

もしくはゴライアス。

イスラエル王国と敵対した巨人の戦士、でしょうか。」

ロマニ「ダビデとゴリアテの戦い。

第一サムエル記にある伝説だが、今は13世紀。つまり、」

ダビデ「本物のゴリアテじゃないだろうね。

それだったらもう少し大変な事になっているさ。

これは伝説の再現。

何かの象徴のようなものなんだろう。

だからこそ僕も此処にいる。

本物の、生前のイスラエル建国王ならざるこの僕。

なら、出てくるゴリアテも、それらしい偽物の——

(巨人の咆哮)

……来た! ほら、巨人だ!!」

マシュ「……いや、すいません少々お待ちを。

あれは巨人ではなく……。

巨大なゴーストと……魔猪と……ドラゴンでは?」

ダビデ「うん、ほらまあ3体とも全体攻撃かましてくるし……。

巨人みたいなもの、と言っていいんじゃないかな?」

「それが巨人判定なの!?」

ダビデ「うん、大きい奴は全体攻撃をしてくる。

これが僕の世界の常識だ。」

ロマニ「あー……

だから全体を守る技術に特化しているんだ、この王様……

てっきり羊を守る為の技かと思ってた……」

ダビデ「え? 同じだよ?

だって、どっちもうまく誘導すれば——」

ロマニ「うわああストップストップ!

それ以上は聞きたくなーい!」

フォウ「フォーウ!」

(中略)

マシュ「——はぁ、はぁ、はぁ。

竜種、魔猪、巨大ゴースト全て撃破。

戦闘終了です。」

ダビデ「神話の再現と言うにはちょっと足りないけれど、とりあえず役目は果たしたかな。

これで、この時代の修正はつつがなく運ぶだろう。

あー、疲れたねえ。」

「疲れたので帰還しよう」

ロマニ「そうだね……。

なんだか、今回はいつもより遥かに疲れた気がした。

主にダビデ王のせいで。」

ダビデ「そうしよう。

ではレイシフトをよろしく、ドクター。

神殿建設はまたの機会にとっておくさ。

今回は僕の格好いいところを見せるのが目的だったからね。

王ではなく英霊として戦う、巨人退治のダビデの姿。

それがきみの思い出になるなら、それでいい。」

マシュ「……ダビデ王?」

ダビデ「なに、なんでもない。

僕ともあろうものが、余計な事を口にしたものさ。」