私、実はその昔、モフモフ尻尾が九本ございまして、それはもう、あらゆるところでしっちゃかめっちゃか好き放題して暮らしておりました。

幕間の物語(女性鯖)

「どうしたの? ため息なんかついて?」

玉藻「マスター……申し訳ありません。

恥ずかしいところをお見せいたしました。

実は……いえ、マスターはもうお気づきなのでしょう?

私の体のことでございます。」

マシュ「体の……!?

ど、どういうことですか!? 先輩!?」

「お、落ち着け!?」

玉藻「盾子ちゃんも気づいていらっしゃるかと。

私が最近、足手まといになっている事です。」

マシュ「一体何をしたんですか、先輩!!

……って、足手まとい? 玉藻さんが?」

玉藻「左様でございます。

……実は私、とある事情で全力を出すことができないのです。」

マシュ「いや、全然そんな気はしませんが……。」

玉藻「いいえ、私の事です。

私が一番よくわかっていますとも……。

私、実はその昔、モフモフ尻尾が九本ございまして、それはもう、あらゆるところでしっちゃかめっちゃか好き放題して暮らしておりました。

まあそのあたりは若気の至り——

という事で話を飛ばしますが、そののち、海より深ーく反省いたしました。

悪しき尻尾を八本ほど封印しまして……

今のか弱い、一尾の狐と相成ったのでございます。」

ロマニ「有名な九尾の狐の逸話だね。

そのあと一尾になったってのは初耳だけど。」

玉藻「はい。

そんな訳で、マスターのお役に立てるよう、強くなりたいところなのですが……。」

マシュ「何か問題でもあるのですか?」

玉藻「ええ、私が強くなる=尻尾が増えていく、という流れになるのですが、何と言いましょうか。

尻尾が増えた私は、今の私とはもうそれは遠い存在となっておりまして……。

ええ、ぶっちゃけて言いますと、それこそ三千世界を滅ぼす大妖怪と申しますかなんといいますか。」

ロマニ「そ、そん……なに……?」

玉藻「はい、こちら比喩でもなんでもなく、まさに終末の大妖怪ともいうべき一大化生に近づいていくのでございます。」

「そうなんだ……でもそれがなにか?」

玉藻「そんな私をマスターに見られたらと思いますと、とても尻尾を増やす気にもなれませず……

だからといってマスターのお役に立てない私などただのしっぽモフモフ狐巫女ですし……

……この聖杯戦争の元凶はどうやらそのレベルの災害のようですし……

どうしたものかと苦悩していたところでございます。」

マシュ「過去の自分との葛藤ですか……。」

ロマニ「っと、すまない、話の途中だけど、またモンスターの反応だ……って、デカいぞ!?

さっきの悪魔エネミーよりさらにデカい!!」

フォウ「フォウ!!」

マシュ「先輩、ここは私にまかせて玉藻さんを!!」

玉藻「せめて一尾を取り戻せばあの程度の化生、ちょちょいのちょいですのに……、ああっ、秘められすぎた我が身の力が恨めしい……!!」

「別に尻尾が増えても玉藻でしょ?」

玉藻「そうでしょう、そうでしょう……、愛想が尽きたと——みこーん!?

ま、マスター!?

いま、今、何とおっしゃいましたか?」

「気にしないよ別に。玉藻は玉藻だし」

玉藻「なんと!?

となるとマスターはたとえ九尾を取戻し、自分でも『あー、これはないわー』って思ってる私でも変わらず接して頂ける、と、おっしゃるんです!?」

「そうだね」

玉藻「何という事でしょう……!

流れ流れて来たこの世界、袖すり合うも他生の縁と契約したマスターが、まさかのイケメン魂の持ち主でしたとは……!

あ、いえ、私の運命の方には落ちるのですが。

よーし、気合い入ったー!

タマモは更に本気度がアップ!です!

貴方様なら万が一の状況になろうとも、私の陰気を抑え、叱り、調伏してくださいましょう!」

マシュ「……あ、あの、それが結局どうなって。」

玉藻「盾子ちゃん、ご心配をおかけしました!!

本日この場より、この玉藻の前——

新生・玉藻の前!! そう!!

ニュー・タマモッチとしてお仕え致します所存です!

ささ、さささささ!! マスター!!

可愛いキャス狐ちゃんの晴れの舞台をご覧あれ!!

——いざや、遠からん者は音に聞け、近くばよって即・魅了!!

この身は黄帝陵墓の守護者にして、崑崙(こんろん)よりの運気を導く陰の気脈!

金色の陽光弾く水面の鏡なり!

水天日光、いざ、参ります……!」

(戦闘後)

玉藻「んー、タマモちゃん 大 勝 利 !!

いやー、絶好調!! 絶好調!!」

「ところで尻尾増えてないよね?」

玉藻「ああ、尻尾ですか?

そうですねー……、一尾取り戻すのにあと経験値が五千億ポイントぐらいでしょうか?

まあ、しばらくは一尾のままですねぇ。」

マシュ「え?

じゃあ、尻尾が増えるとどうこうっていうのは……。」

玉藻「ああ、私心配性でして、結構、先の事とか気になっちゃうタイプなんです。

でも、もう大丈夫。

マスターの信頼を得たいま、私に隙はありません!」

ロマニ「そもそも、前回とさっきの戦闘、とくに変わってなかったような……。」

マシュ「そうですね……なんだったんでしょう、さっきの話は……」

ロマニ「ほら、病は気からとかいうじゃない?」

フォウ「フォーウ?」

玉藻「浮き世は一時の夢、人の命は朝露の如し——

されども、私との契約は殺生石より確かなもの。

これからも全霊でお仕えいたしますね、マスター♪」