私はおまえの恨みの具現。おまえが恥と感じ封じていたもの——。忠実な騎士ヅラをするために、おまえが怯えて逃げ出した“何か”だ。

幕間の物語(男性鯖)

マシュ「マスター、ディルムッドさんからお話があるようですよ。」

ディル「マスター、謁見の許可を戴き感謝します。

それにしても、この軍は素晴らしい。」

「何の話?」

ディル「私の顔を見ても、何も言わないことです。

今までは歩く事だけにも気を遣いましたから。」

マシュ「あ。

なるほど、ディルムッドさんの黒子ですね。」

ディルムッド「ええ。

愛というよりは呪いのようなものです。

この黒子のせいで、酷い目に遭い続けた。

……いえ、それでも後悔していない愛もあるにはあるのですが……。

失礼、話が逸れました。

マスター、お話というのは宝具についてです。

現在、私の宝具は『破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)』と『必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)』を使用しているのですが——。

二つの宝具を利用しているせいか、どちらも真価を発揮していない。

言うなれば封印された状態なのです。

これをどうにかして解放できれば、一層のことお役に立てると思ったのですが——。」

マシュ「宝具が満足に使えなくて辛い、というお気持ちは痛いほど分かります。

ドクターに手掛かりがないか調査してもらいましょう。」

(管制室にて)

ロマニ「ふむ、宝具が封印された状態か……。

大抵はその英霊が生きていた時代に何かしらの手掛かりがあるものだけど——

うーん。特に反応はないなあ。

元々ディルムッドが生きていた時代は相当に古いから、辿りきれないのかもしれないが……。

いずれにせよ、その宝具はむしろ君自身によって封印されている可能性もある。」

マシュ「どういうことですか?」

ロマニ「召喚の際の不具合か、はたまた無意識にサーヴァントが自分自身を縛り付けているのか——。

どうだろう。

もし宝具を解放したいのであれば、彼の心にダイブしてみるのは。

危険だけどね。」

ディル「危険……なのですか?」

ロマニ「何人かのサーヴァントと、マスターである彼も同行する必要があるからね。」

ディル「…………。

主を危険に晒す訳にはいきません。

この話は辞退させていただきます。」

ロマニ「だ、そうだけど。

藤丸君はどうしたいのかな?」

「探しに向かうべき。きっと大切なものだ」

ディル「おお、主よ……!

これほどの心遣いを向けてくれる主君に出会えるとは、身に余る幸運か……!」

ロマニ「よし。

それじゃあ、早速準備しよう。」

(中略)

ディル「もしも王がいるとすれば、この森だろうな……。」

「浮かない顔だ」

ディル「ええ……何しろここは私が死を迎えた場所なので。

王、フィン・マックールと共に猪狩りに出掛け、そして私はその猪——

魔獣に殺されました。

その後のことは、語るまでもないでしょう。

王の癒しは、私には与えられなかった。」

???「いかにも!

その通り、その通りだよディルムッド!」

ディル「王……!?」

フィン「そう、おまえの王、完璧すぎるマックールだ。

しかし……なんだ、その代わり映えのない態度は。

まったく奇妙な男だよ、おまえは。

この私が憎くはないのかな?

そう。

この森で、この場で、私は倒れたおまえに水を分け与えることを拒んだ。

本来救われることもできたおまえを、私は私の意志で見捨てたのだぞ?」

ディル「それは、私が——。

私が、悪かったのです。」

フィン「ははははは、さすがだな忠義の騎士。

しかし、それは嘘だな。」

ディル「なっ……!?

いえ、そのような事は……!」

フィン「親指の爪をかむかむするまでもない。

おまえの新しい主から、そこは察しているだろう。

何故なら——おまえは後悔をしていない。

仮にどこかの聖杯戦争に召喚されたとしても、おまえはこの不遇の死を覆そうとは望むまい。

その不遇は突き詰めれば、我が妃グラニアに起因するもの。

おまえはグラニアを愛し、私とも和解した。

それ故にこの結末も受け入れるべきである——

そんなことを考えているのだろう?」

ディル「む、無論です。

我が王よ、私は——。」

フィン「だが!

悪くないと考えながらも、真実のおまえは悔やみ、恨んでいる!

どうしてあのとき、水を注いでくれなかったのか!

どうしてあのとき、怪我を癒してくれなかったのか!

いったい、自分はあの時どうすれば良かったのか、とな!」

ディル「っ……黙れ!

貴様、王ではないな!?」

フィン「ふはは、いかにも!

私はおまえの恨みの具現。

おまえが恥と感じ封じていたもの——。

忠実な騎士ヅラをするために、おまえが怯えて逃げ出した“何か”だ。」

ディル「……っ!

こんな……ものが、俺の本心……だと……!?」

「そういうこともあるよ」

ディル「主……!

そうだ、過去の己がどうあれ今の俺はサーヴァント。

新たな主に仕え、敵を排除するが務め。

我が心が生み出した悪しきフィン・マックールよ。

騎士として、責任をもって仕留めさせていただく!」

フィン「フハハほざきおるわ優男が!

罪悪感に食い潰されずに持ち堪えられるかどうか——

その痩せた心を試させてもらおうではないか!」

(戦闘後)

フィン「——うむ。

うむ、うむ。これは知っている。

知っているぞ、ディルムッド。

これは迷いなき二つ槍。麗しの槍の冴え。

我らが誇りであった、ディルムッド・オディナの武だ。

では、投げるべき言葉はもう一つだけだな。

…………恨みはないのか、我が騎士よ?」

ディル「……あるのでしょう。

ですが、それは今ここで置いていきます。

私はそれ以上の“何か”を王から得た。

かけがえのない何か——

見失ってはならないものを。」

フィン「合格だ。

迷い道に入りやすいおまえにしては、今回は早い正解ではないか。

……まあ、迷いやすい、という点においては私もおまえの事は言えないのだがね。

……『破魔の紅薔薇』と『必滅の黄薔薇』は正しくその力を解放した。

行くがいい、ディルムッド。

その手に勝利を!」

ディル「感謝します、王。

感謝を……。

(消滅する音)

主、我がマスターよ。

貴方のお陰で我が槍が再び手元に戻ってきました。

もう迷いはありません。

この双槍で、あらゆる敵を打ち払いましょう。」