わ、わ、わ、私が母親——ですか!? オジマンディアス様の! それはあんなコトやこんなコトも許されるのですか!

幕間の物語(女性鯖)

ニトクリス「あら、マスターにマシュ。

どうかしましたか?」

マシュ「わたしたちは偶然通り掛かったのですが、ええと……

ここで何をしていらっしゃるのですか?」

ニトクリス「見ての通り、酒宴ですが何か。

私はあちらのファラオお二人にちょっと誘われて——

いいえ、むしろ自ら望んで酌をしているのです。」

マシュ「しかし、どうして管制室(ここ)で?」

ニトクリス「その問いの意味が場所の事であれば、ここが王の宴にふさわしいとファラオ・イスカンダルが。

もしくは、目的の事であれば……」

イスカンダル「そんな端で何をしておるか、ニトクリスよ!

飲め。杯を空にし、そしてまた飲め。

これはファラオの集い。

貴様も主役の一人なのだぞ。

クレオパトラめも呼び付けたのだが、あれは感激と萎縮の板挟みになって伸びてしまってなぁ。

となれば最早、カルデアの女ファラオ代表として貴様が堂々と我らの向かい合う他にあるまい!」

ニトクリス「——畏れ多くも、そういうわけです。」

マシュ「言われてみれば確かに、みなさんファラオとして名を有している方々ばかりですね。」

「イスカンダルもそうだっけ?」

イスカンダル「む、よく見れば我がマスターとマシュではないか。

さては酒の匂いに惹かれて来たな?

うむ、かまわん!

我ら共通の友として特に許そう!

貴様らも飲めぇい!」

オジマン「ファラオの集いを安くするつもりか?

それに確か、あれらは飲酒を避ける年頃であったような。

……まあ、そもそも貴様がファラオかどうか怪しい。

年齢にも目角を立てまい。

許す。飲めい!」

イスカンダル「はは、手厳しいな。

しかし余にもきちんと即位名がある。

メリアメン・セテプエンラーというものだ!」

オジマン「ほう?

ふん、余も同じくセテプエンラーの名を有している。

ファラオに多き名ではあるがな。

上下エジプトの王、ウセルマアトラー・セテプエンラー。

ラーの息子、ラムセス、アメンに愛されたる者。

それこそが余、太陽たるオジマンディアスである!

許す。

霊核と霊基に深く刻み付け、記憶せよ。」

イスカンダル「なんと!

ではまこと兄弟のようなものではないか! なあ!」

オジマン「ええい、兄弟ではない。

ないが、ふうむ——」

ニトクリス「大王様は、妾的には、確かにファラオです!

……とクレオパトラあたりであれば言いそうですね。」

オジマン「ほう。

余の意向に刃向かってみせるのか、貴様?」

ニトクリス「い、いえ、ファラオ、決してそのような事は!

彼女であれば言いそうだと脳裏を過り、つい……」

オジマン「確かにあれは言うであろうがな。

女ファラオ同士、いつの間にか親しくなっていたか?」

ニトクリス「お戯れを……

どうかお許しくださいませ。

我が主は太陽王のみ、同盟相手は藤丸のみ!

彼女は、そう……

年の離れた、手のかかる妹のようなもので——」

イスカンダル「ははは。

そう虐めてやるな太陽王。

クレオパトラであれば確かにそう口にするであろうが。

あれは地上に於ける最後のファラオ、であればそう、我らが孫娘のようなものではないか。」

オジマン「否定はせん。

血の繋がりなぞなくとも、確かにあれはファラオと神々を継いだ最後の者だな。」

イスカンダル「そうであろうが。

うむ、しかしそうすると——

ニトクリス。貴様だ、貴様。」

ニトクリス「は、はい?」

イスカンダル「我らの中では最も古きファラオは貴様だな。

つまりはあれだ、母親のようなものとは言えまいか?」

オジマン「ん。

確かにこれは、古きホルスの化身だな。」

ニトクリス「わ、わ、わ、私が母親——ですか!?

オジマンディアス様の!

それはあんなコトやこんなコトも許されるのですか!

母であるからには、息子に対して……

お料理をしたり膝枕をしたり!

あまつさえ、昔話を聞かせたり怖い話を聞かせたり!

い、いいのでしょうか私、子供だって産んだコトないのに……」

マシュ「ニ、ニトクリス……?」

ニトクリス「い、い、いえ、あまりに畏れ多いというもの!

そう、畏れ多すぎます。

たとえばイスカンダル——

貴方は私より遙かに多くを為したファラオ。

地上を駆け抜け、多くを制覇した征服王。

私など足下にも及びません、本当に。」

オジマン「国を広げるだけ広げて滅ぼした王に何を見る。

余こそが神であり太陽であり、真のファラオであるぞ。」

ニトクリス「ファラオ・オジマンディアス!

それは、もはや私などが言うまでもなき事……!

貴方は王の中の王、神の王たるファラオ。

比較の天秤に乗せようと試みる事すら烏滸がましい、尊き存在であらせられる……

……ファラオ・クレオパトラもです。

私は彼女ほど真摯に、国を守ろうとはしなかった。」

「クレオパトラは確か……国を滅ぼしてしまったんだよね?」

オジマン「滅ぶというなら、真のファラオである余を失った時点で既に上下エジプトの滅びは不可避であったのだ。

余が統治しておらぬ以上、誰がファラオとなろうと不完全な治世にすぎぬ。

ナイルの流れが如く、そこへ辿り着くは必定。

期待もしておらぬ。」

イスカンダル「ははは、前にも言った気がするが——

滅ばぬ国というものはない。

余のマケドニアですらな。」

ニトクリス「はい。

いつか滅びるが必定であるならば、彼女は立派にファラオの役割を果たしたのでしょう。

でも、私は…………………………。」