「感謝をするのは我ら風魔の方です。母上、良き旅路を」「母…はは…。ああ、その響きは…なんて、懐かしい——」

幕間の物語(男性鯖)

小太郎「——もうすぐ、風魔の里です。

この時代は比較的穏やかですが、僕の時代は激動でした。

日々は穏やかならず、行く末は不明瞭で。

戦い、殺し、奪い……。

戦い、殺され、奪われ……。

それでも、必死になって辿り着こうとしていた。

無明にして輝ける場所を求めて、ひたすら術を練り上げ——」

「後悔でもしている?」

小太郎「いいえ、まったく。

後悔など、欠片も。

主、あなたと同じように……。

僕も、後悔など無いのです。

……話が脱線しましたね。

もし、彼女がいるとすればこのような明るい場所ではなく、陽の射さない闇落ちる処でしょう。

彼女は太陽を好まなかった。

自分が軽蔑に価する存在だと信じていたからです。

……僕はそうは思わなかった。

美しい戦闘絡繰(にんぎょう)であり、唯一心を許せた人だった。」

マシュ「——マスター、小太郎さん。

反応が激しいです。

地形をスキャンしました、そこから五百メートル先に洞窟があります。

恐らく、そこです。」

小太郎「ありがとう。

では参りましょう、主。」

——明るい場所は嫌いでした。

——それを忍びだからと誤魔化していました。

子供でもわかるような嘘。

見られたくなかった。

ワタシは誰より、己を嫌悪していた。

でも、その嫌悪がなければワタシは忍びではない。

忍とは、何より心を基盤とするもの。

それがなければ、ワタシはただの置物に過ぎない。

……声。

……声がする。

ああ、人の声だ。

ここには入ってこないで。

大切なものが隠されている。

大切なものが封じられている。

ここを守らなければ、ワタシは加藤段蔵ですらなくなってしまう——

小太郎「——お下がりを。

どうやら辿り着いたようです。」

???「出て行って……出て行って……。

お願い。お願いします。」

小太郎「母上。」

段蔵?「誰……誰でもいい……。

ワタシは、ここを守らなければ……。」

小太郎「いいえ、守る必要はありません。

この墓は、もう時代の流れに任せればいいのです。

忍びは塵のように消えゆくが定め。

……ですが。

この彼女の未練が、唾棄すべき外法者に利用されてしまったのでしょう……。」

「戦える?」

小太郎「——無論。

そのために、僕は来たのですから。」

段蔵?「アナタは、だれ……?」

小太郎「答えは、あなたを斬った後に。

——参る!」

(戦闘後)

小太郎「——殺(シャ)!」

(消滅する音)

マシュ「敵性反応、消滅。

お疲れ様でした、マスター……。

帰還準備に入ります。

少々お待ちを。」

小太郎「いえ、まだ一つやるべきことが残っている。

進みましょう、主。」

「……ああ、そうしよう」

小太郎「……五代目、風魔小太郎。」

段蔵「……その名は……ああ……。

五代目……なのですか……?」

小太郎「僕のことを、覚えているのですか?」

段蔵「いいえ……。

ただ……風魔は……ここに……。

確かに……ここに……。」

小太郎「——墓ですね。

我々、風魔忍群の。

野晒しになった者、行方知れずとなった者、打ち棄てられた者、ただ死んだ者——

僕ら忍者の、無明にして無銘の墓。

ここを守り、次を育てるのがあなたの義務だった。」

段蔵「そう……だから……次の風魔を……。

育てなくては……。

それがワタシの使命、ワタシの生涯——」

小太郎「その必要はありません。

加藤段蔵、五代目頭領の名によって、その命令を解きます。」

段蔵「……拒否……します……。

アナタが、五代目頭領という証明が……なされません……。

顔も、声も、匂いも……記憶から……消えていて……。

真実が……もう……何も……。」

小太郎「ならば、僕に触れろ加藤段蔵。

この身は確かに、風魔が練り上げたもの。

触れれば、あなたならわかるはずだ。」

段蔵「…………。

…………ああ…………。

風魔……風魔小太郎……。

ワタシの、彼らの、願った完成形——

……ならば、最後の一刀を……。

本当に風魔小太郎ならば……わかるはず……。」

小太郎「——無論。」

マシュ「え……!」

(切り裂く音)

小太郎「介錯。

これにより、風魔小太郎は完成を見る。

風魔はここで終わっても良いと、ここが忍ぶ旅路の果てなのだと。

我らはそう確信できたのだから。」

段蔵「……そう……その通り……。

ああ……見えずとも……わかります……。

風魔は……ワタシは……確かに……辿り着いていた……。

良かった……全ての記録が欠落したワタシに……。

こんな結末があるなんて……。

ありがとう、五代目……。」

小太郎「……いいえ。

感謝をするのは、我ら風魔の方です。

母上、良き旅路を。」

段蔵「母……はは……。

ああ、その響きは……。

なんて、懐かしい——」

小太郎「…………主よ。

恐らくは、意味のない行為ですが……。

墓を掘っても、構わないでしょうか?」

「手伝おうか?」

小太郎「ありがとうございます、主。

ですが、これだけは僕一人でやりたいのです。

……石碑もなく、戒名もない。

無数の、名も無き忍。

だが、それは同時に誇りでもあるのです。

忍びとはそういう者。

高名であることに意味などなく、無銘であることに誇りを持つ。

僕の墓も、きっとこのどこかにあるのでしょう。

風魔小太郎ではない、名無しの忍として。

そこへ加藤段蔵も、ようやく加わったのです。

初代の術を修めた風魔の一人。

彼女は五代目頭領の育成をまっとうして、その終了を把握した。

満足です。

……ええ、本当に素晴らしい結末です。

あの人を、一人の忍者として。

僕たちの仲間に加えることができたのだから。

……ああ、でも。

最後の最後で……。

——母上と、呼んでしまったな。」