くっしないわ、おとなのふとーなぎゃくたいには、ぜったいにくっしないわー! その子にひどいことしちゃだめー!

幕間の物語(女性鯖)

ナーサリー「もー!

はいっちゃだめって言ったのにー!」

ジャック「言ったのに……。」

マシュ「あれは……?

百貌「ふう。やはりここにいたか。」

「あの子が、百貌さんの捜してた……?」

百貌「……はい。恥ずかしながら——

あれが、私の捜していた私でございます

あれもまた百貌のハサン。

紛れもない、我らの人格のひとつ——」

マシュ「で、でも……

なんだか、他の百貌さんたちとは雰囲気が違う、といいますか。

失礼ながら、ハサンっぽくもアサシンっぽくもない、というような感じで……。」

百貌「それはそうでしょう。

あの人格の役割は『何も知らず』『何も出来ない事にある。」

「それって、どういう……?」

百貌「暗殺者として、そうであったほうが効果的な場面が確かに存在する、という事です。

業腹であり屈辱であり、本来あってはならない話ですが——

たとえば任務に失敗し、敵に捕らえられたとき。

何も知らない人格ならば、いかような責め苦を負おうとも、知らないのだから喋れない——そういう事です。」

マシュ「そんな……

拷問を受けるときのための人格、なんて……。」

ナーサリー「そんなのひどいわ、ひどいわ!

この子はこんなに可愛らしいのに!」

ジャック「廊下をうろうろしてたこの子を見つけて、話を聞いたよ。

だからここに連れてきたの。」

ナーサリー「——そう、したくない事をする必要なんてないわ。

退屈で痛いだけの筋書きに従う必要なんてないわ。

だったらページをめくらなければいいのよ。

だからこの子はずっとここにいさせる事にしたの。

ここにいれば、仕事は楽しくお茶を飲んで楽しくおはなしする事だけ。

……まだあまりおはなし自体はしてくれないけれど、お菓子を食べる姿、とっても可愛いの! 子リスみたい!」

百貌「そやつが今まで世話になった事自体には礼を言おう。

だが——」

ナーサリー「この子をつれていくつもり?

あなたたちは他にもたくさんあなたたちがいるのに?」

百貌「同じ役目を負う者はいない。

そやつが我らの貌の一つである事は動かしようのない事実だ。

ずっとこの部屋にいられては困る。

さあ、こちらに来い。帰るぞ。」

ナーサリー「ダメよ。

この子はあなたたちのところへは行かせないわ!」

ジャック「うん。

ちょうど仲良くなりかけてきたところなのに、ここでおひらきは嫌だよ。

名前だってまだ聞いてないからね。」

百貌「……仕方ない。

どうやら先に聞き分けのない子供たちを折檻せねばならないようだ!」

マシュ「お、お手柔らかにお願いします、百貌さん!

まずは落ち着いて話し合えるような状況に持っていきましょうね!」

(戦闘後)

百貌「さて。

子供たちへのお尻ペンペンも済んだ事だし……。」

ナーサリー「くっしないわ、おとなのふとーなぎゃくたいには、ぜったいにくっしないわー!

その子にひどいことしちゃだめー!」

マシュ「百貌さん……あの……。」

「いろいろ勘弁してあげてほしい」

百貌「……マシュとマスターにまでもそんな目で見られるとは。

どうやら何か勘違いされている様子。

改めて言うとすれば……。

…………。」

(仮面を取って目線を下げる百貌)

百貌「まずはっきりと言っておこう。

ここ(カルデア)ではおまえの仕事はない。

おまえは拷問に対応する係ではない。

おまえは、ただの我らだ。」

???「…………?」

ジャック「ごーもんを受ける役目じゃ……ないの?」

百貌「そんなわけがあるものか。

純然たる暗殺者として動いていた生前ならともかく、今の我らはマスターのサーヴァント。

そのような事態に陥る事はありえまい。」

ナーサリー「じゃあ……

どーして連れて帰ろうとしてるの?」

百貌「我らが召喚されてから、こいつは一度も顔を見せなかった。

一度も、だ。

こいつも大事な我らに変わりない。

皆が普通に心配している、というだけだ。」

???「…………しんぱい?」

百貌「そうだ。

ゴズールにマクール、ザイード……

皆おまえを捜している。

一度くらいは皆に顔を見せて安心させてやれ。

そのあとで——

またここに遊びに来たいというのならば好きにするといい。

マスターのサーヴァント同士、交流を深めるのは悪い事ではなかろう。

ふむ、それがここでの新しいおまえの役割なのかもしれない。

私はこんな茶会になど、気恥ずかしくてとても参加できぬからな。」

???「…………ん。

じゃあ、かえる。」

百貌「ああ、帰ろう。」

ナーサリー「なあんだ……

それならそうと早く言ってくれればよかったのに。

ひどいことをされないのなら、そしておうちのひとが心配しているなら、一度帰ったほうがいいに決まってるわ。

あたしたちのお茶会は、このお部屋に来ればいつでも、いつまでも開かれているのだし。

ぜんぶの心配事を片付けて(忘れて)から、大人たちに押しつけてから、改めて全力でお茶会を楽しむのがあたしたちよ。

またね、おちびなハサンさん。」

ジャック「ばいばい。」

「まさかこんな百貌さんもいるとは……」

マシュ「そうですね。

素直に驚きです。

確かに小さくて可愛らしいかたでした。」

百貌「驚き、ですか。

それはこちらの台詞です。」

「?」

百貌「我らは群体でありながら個。

念話で意思疎通できるような繋がりは持ってはおりませぬ。

だからこそ、こやつを捜すのに皆でああして苦労していたわけですが……。

故にこやつは、マスターの驚くべき在り方を知らなかった。

あえてあの子供部屋から出ようとしなかったのは、そのためでしょう。」

マシュ「——なるほど。

これは、先輩がどんなマスターなのか、その子がまだ分かっていなかったからこその事件だったのですね。」

ちびハサン「…………………。」

マシュ「ふふ。

同じマスターと契約しているサーヴァントとして、わたしにも断言できますよ。

ここにいる限り、あなたが痛みを引き受けるような役目を果たす事は絶対にありません。

他の百貌さんたちも、きっと、昔のような汚れ仕事をする事はありません。」

百貌「まったく——

本当に、驚くべき事です。

正直に言えば、むしろ呆れているほどです。

我らという汚れ仕事に最適なサーヴァントを呼んでおきながら、けっしてそんな命令をしないマスターは。

これからも、けっしてそんな命令はしないであろうと確信できるようなマスターは……。

——フン。

率直に言って、おかしな方ですな。」

「ええー」

マシュ「(仮面に隠れてわかりにくいですが……

今のはきっと、笑いながらおっしゃっていましたね。

そんな優しい声音でした)

さて、カルデアに新しい仲間が増えたようなものです。

百貌さんたちだけではなく、他の方々にも紹介したり——

あ、カルデアの案内とかもしたほうがいいですかね?

ええと、小さな百貌さん、どこか行きたいところはありますか?」

ちびハサン「…………(こくり)」

マシュ「どこでしょう?

どこでも案内しますよ、遠慮なくどうぞ!」

ちびハサン「…………………………おしっこ。」

マシュ「!!」

百貌「あーはいはい、先にそちらだな、もう少しだけ我慢するんだぞ、いいかー?」

ちびハサン「…………(こくり)」