チッ。女子供に大人気だな、あの話は。頭のゆるい女どもへの当てつけで書いてやったものが、なんだってこうも美談にされるのか。

幕間の物語(男性鯖)

アンデルセン「俺に何か新しいネタか、なければ金をくれ。

退屈しのぎに酒場に行って遊んできてやる。」

マシュ「……先輩。

ミスター・アンデルセンの発言が、いつになく尊大かつ不良すぎます。

何か、彼の機嫌を損ねるような事でもしたんですか?」

「なにもしてないよ」

マシュ「先輩に落ち度はない、と。

ですよね。私もそう記憶しています。

ミスター・アンデルセン。

当カルデアには無駄遣いを許容する余裕はありません。

おとなしく新作の執筆など、どうかお願いします。

個人的には人魚姫の続編をですね……」

アンデルセン「チッ。

女子供に大人気だな、あの話は。

頭のゆるい女どもへの当てつけで書いてやったものが、なんだってこうも美談にされるのか。」

マシュ「な——

ミ、ミスター、いまなんと?」

アンデルセン「アレは俺の書いた話の中でも一、二を争う駄作だ、と言ったのだバカめ!

まったく。

これ以上ないほどわかりやすいオチにしてやったのに、やれ悲劇だの悲恋だの。

せっかく一目惚れから解放され、その報酬に魂まで手に入れたというのにな!

いいか。

恋心なんぞ自己完結しているうちが花だ。

少なくとも俺はそう断じる。

そんな俺に続きなんぞ求められたら、人魚姫を新たな絶望に追いこむだけだとなぜ解らない!」

アンデルセン「むっ……

なんだ、その世界が終わったような顔は。

…………。

終わった話の続きなんぞ求めるな、という話だ。

エンドマークの後を想像するのは読者の特権だろうに。」

アンデルセン「……まったく。

金がないのなら新鮮な教材だな。

どこでもいいから連れて行ってくれ、藤丸。

さしあたってはフランスがいいな。

何をしているマシュ、おまえも来い。

俺と藤丸だけではあっという間にのたれ死ぬぞ!」

マシュ「は、はい……!」

(中略)

アンデルセン「満足だ。

ご苦労だったな、藤丸。

おかげで今までにない体験ができた。」

マシュ「……やっと帰って来られました。

散々な目に遭いましたね、マスター。

様々な時代で無軌道に戦闘をする……

わたしたちはいい戦闘経験になりましたが、ミスター・アンデルセンはなぜこんな事を?」

アンデルセン「なぜもなにも人間観察の一環だよ。

その時代の人間がどんな武装をし、どう戦うのか。

原始的な戦いにすら人間の思想は反映される。

それぞれの時代の差違は十分に参考になった。」

マシュ「人間観察……

では、アンデルセンさんも人間が好きなのですね?」

アンデルセン「はあ?

バカめ、俺は人間に興味がある訳じゃない。

ただ資料が欲しかっただけだ。

今回は兵士たちだけでなくおまえたちの事もわかった。

気が向いたら本にしてやるさ。」

「遠慮しておきます」

マシュ「え……

で、ですよね。

断りますよね、ハイ。

……先輩はこちらの観察結果以上に生真面目な方でした……」

アンデルセン「しかしおまえたち、付き合いがいいな。

加えてノリもいい。

サーヴァントとして仕方なく契約していたが、俺も考えを改めた。

こんな無茶なフィールドワークをこなす仲間は得難いからな。

これからは俺も多少は気合いをいれるとしよう。

多少。多少だぞ。

ほんの少しだけな。」

マシュ「はい。

なんであれ、ミスター・アンデルセンの創作の手助けになれたのは幸いです。」

アンデルセン「……だからそれは別の話だとわからんのか。

これだから愛読者というヤツは……」