私は本気、真剣ですよ。あの気高い克己心…体は無理でも心は成長するのだ、という心意気に打たれ…! と、いけないいけない。

幕間の物語(女性鯖)

マシュ「というわけで早速、犯人が武則天さんを呼び出した地点にレイシフトで向かったわけですが……。」

「遣唐使? 教科書に載ってたあれ!?」

武則天「くっふっふー。そうじゃ!

そなたの生まれた東の島国、日本(倭国)か?

そやつらが国として頭を垂れ、謁見を求めてきたのが妾であるぞ。

まあその遣い自体は太宗、さらには隋の時代から続いていたものとは聞くが。

ともあれ、この妾がとんでもなく偉大な古き女帝である事にようやく実感が湧いてきたのではないか? んー?

ほれほれ、我慢せずともよい。

平伏して妾を讃える言葉を述べたくなったり、はたまた妾の椅子になりたくなったりしたのであれば今すぐ遠慮なくやってみるとよいぞ?」

三蔵「あ、ねえねえ、ところであなたのことは何と呼んだらいいのかしら?

武皇后?

武照さん……は名前だから、あたしが言うのはまずいかな。」

「照ちゃん?」

武則天「こらっ、貴人の名をたやすく呼ぶでない!

不敬じゃぞ、不敬!

まったく……

今は武則天で通しておる。

こやつらにはそれが一番通りがよさそうなのでな。

天后、聖母神皇、聖神皇帝、則天大聖皇帝……

妾の事を示すカッコイイ称号は他にもある故、気分で使い分けるのもよいと思うがの?」

三蔵「多すぎて大変かも……。」

名詮自性とも言うし、あんまりバリエーションを増やしすぎても、って思うわ。」

武則天「だからこそである。

新しい『より良き名』になったのならば、自らも新しい『より良きもの』になろう。」

三蔵「あ、そういう考え方も素敵ね!

でも、今は皆と同じ呼び方が分かりやすいと思うから、武則天さん、にしておきます!

斉天大聖って言い間違えたら、なんだかお弟子を相手にしてるみたいになっちゃうし!」

マシュ「あの、お話が弾んでいるところすみません。

一つよいでしょうか?」

武則天「なんじゃ?」

マシュ「いえ、こう、いかにも幽霊が出てきそうな謎の洞窟の奥にどんどん誘われていますが、武則天さんは大丈夫かなーと。」

武則天「…………。

ばかものー! せっかく忘れておったのにー!

というか忘れるべく無駄話を続けておったのにー!」

マシュ「やっぱりそうだったんですね、すみません!」

武則天「うう、紫菜(ずーさい)のせいでまた気になり始めてしまったではないか……。

確かにひんやりとしてじめじめとして、ここはまるで墓穴のようじゃ。

幽霊がいつ出てもおかしくはなさそうな……。」

???「いかにも! 

いかにもですよ、中華の女帝!」

武則天「ヒエッ、出たーっ!?」

「あなたは……!」

ニトクリス「——ファラオ・ニトクリス、今回は冥界の神として崇高に登場です!」

マシュ「ニトクリスさん……?」

武則天「ぬうっ! さては貴様が手紙の主か!」

ニトクリス「先に答えておきますが、それは違います。」

マシュ「では……どうしてここに?」

ニトクリス「はい。

正直に言えば諸事情により雇われた、というところですね。

ですが!

今回の私をただの雇われサーヴァントだとは思わない事です!

私は本気、真剣ですよ。

あの気高い克己心……

体は無理でも心は成長するのだ、という心意気に打たれ……!

と、いけないいけない。

死霊の女王の役割はしっかりと。」

マシュ「……?」

ニトクリス「こほん。

さて、東の国の女帝よ。

此処に充ちるは、私が冥府より導きし死者の想念。

幽霊を怖がるような小心者がけっして通れる場所ではないと知りなさい。」

武則天「ぬ、ぬぅぅぅ。痴れ事を。

妾は怖くなどない! ……ないぞぅ!」

「(足がガクガクしているような気がする)」

三蔵「うん、怖がる必要なんてないわ。

だってここにはあたしがいるし、御仏のご加護もあるんだもの!」

ニトクリス「むっ、貴女は……。」

三蔵「彼女の旅のお供よ!

そう言えばあたしのほうが誰かについていくのって意外に新鮮かも!

あ、一応確認ね。

あの……つるっとしてかわいい、めじぇどさま? 

はさすがにどうにもできないんだけど、それ以外の子たちはビシバシ説法しちゃっていいのよね?」

ニトクリス「むむっ。

相変わらずキャスターのくせに物理攻撃を決める気ですか。

できるものなら、やってみるといいでしょう。

しかし私とて手加減する気はありません。

貴女が千の掌で私の可愛い死霊たちを撫でるのなら、私は万の霊を暗黒の鏡より呼び覚ましましょう。」

「本気で邪魔する気なんだね」

ニトクリス「はい、私は本気です。

玄奘三蔵一人では厳しいと思いますよ。

もし突破したいのなら……そうですね。

女帝本人の頑張りがあれば話は別かもしれません。

死霊が嫌うは強い前向きな意志です。

恐怖を捨て去り立ち向かう事こそが唯一の道筋。」

マシュ「(なぜ突然アドバイスのような事を……?)」

武則天「わ、妾は……妾は……。

…………。

(——幽霊は、でも、怖いものなのだ。

宮中に充ち充ちていた声無き怨嗟を、喉が支え息もできぬほど蟠る敗者の想念を、妾は知っているから。

妾こそが、国を手にするためにそれらを生み、積み重ねてきた張本人であるから。

幽霊は、いなければおかしい。

生者を取り殺すほどの怨念をもってしかるべき死者は、きっと妾を見逃さぬ——

ああ、だが、だが……)

……………………。

(妾がそうしたのは、何のためだ?

……決まっておる。大義のためじゃ。

妾が統治する、真に正しい国を作るため。

そして——)

(ここには——民がおる

自覚があろうがなかろうが、妾と同じ時代、同じ場所で生きたのならば、あれは妾の民じゃ。

その民の前で……小娘のように震えている様を見せるのが、正しき女帝の姿か?

——否。断じて否じゃ!)

〜〜〜〜っ、うううう!

や、ややや、やってやろうではないか!

妾が幽霊なぞ怖がっていないというところを見せてくれる!

どんどん出してくるがよい! かもーん!」

三蔵「わあ、凄い気合い!

善哉善哉!」

ニトクリス「……ふふふ。では行きますよ!」

武則天「何を笑っておるか!

ゆゆゆ、ゆくぞ!

いかな霊も妾の拷問で昇天させてくれるー!」

冷静に考えるとおかしな台詞だらけですが……

とりあえずわたしたちも手伝いましょう、マスター!」

(戦闘後)

マシュ「棒読みなうえに笑顔!」

ニトクリス「気のせいです。

ちなみにこの先にはもう手紙の差出人が待っています……が、ウィニングランのようなものなので特に気にせずに。

お疲れさまでした、それでは!

今回はいい仕事をしたと自分で自分を褒めてみましょう!」

武則天「はあはあ、も、もうおらんな?

幽霊おわりじゃな?

ふぅぅぅぅ……。

くっふっふー!

恐るるに足らず、であった!

女帝の歩みを阻むという大罪の報い、思い知ったかー!」

三蔵「平気?

まだ足がガクガクぎゃーてーしてない?」

武則天「し、しておらん!

まったくしておらんぞー!

さあ、最終目的地は近い!

いよいよ不届き者を成敗するときじゃ。ゆくぞ!」