眼前の異形に、自身と同種の輝きと誇りを見つけてしまった。人造の、畏怖されし魔獣。行き場がない故に、どこにでも放浪できる怪物。“我々は強い”。ただその一点を以て、魔獣は踊る。

幕間の物語(男性鯖)

「ロボ、追跡をお願い」

——同意した、という唸りを上げる。

この新宿のどこかにいる魔獣を追跡し、始末する。

臭跡を辿り、その獣を追い詰める。

それが、今回の任務だ。

ああ、だけど。

その様は、まるで——

犬のようだ、と獣は暗黒の中で嗤う。

エルキドゥ「見つけたらしいね。行こう。」

先を走ろうとする“泥”を制するように、獣は走り出す。

そうして。

ちらりと挑発するように、獣は己を世界に縛り付ける存在を見た。

マスター、藤丸、あるいは人間と呼ばれる者を。

この街の空気は心地よい、と獣は思う。

喰うには適さない、不味い者ばかりだけど。

だからなのか、噛み砕くことに躊躇いはない。

煌びやかな光は、いつか見た空の星より毒々しく、鮮やかで。

夜空の星より、寂しくはない。

人が作り、人が侵したもの。

自分が本来、いてはならない場所。

そこで獣は生きるしかなくなっていた。

ナーサリー「どうしたのかしら?」

樹を漉したような匂いがする少女があどけない表情で首を傾げた。

——何でもない、というように吼えて前を向く。

後ろには、しっかりと距離を取って続くマスター。

距離は近いが、遠かった。

——例えば。

嚙み殺そうとする気配を感じたらどうするだろう。

答えは簡単だ。

“泥”と“紙”の二人が、情け容赦なく獣を殺し尽くすだろう。

だから、この距離は適切だ。

論理的に正しく、理性的に合致している。

全身を震わせる。

見つけた。

エルキドゥ「よし、見つかった。

仕留めよう、マスター!」

ナーサリー「楽しくはないわね。

とても、とても悲しいわ。

山の羊、荒野の獅子、草むらの蛇。

そこで暮らしているだけなら幸福だったのに。」

——その通りだ、と獣も思う。

けれど眼前の異形に、自身と同種の輝きと誇りを見つけてしまった。

人造の、畏怖されし魔獣。

行き場がない故に、どこにでも放浪できる怪物。

“我々は強い”。

ただその一点を以て、魔獣は踊る。

エルキドゥ「おや、追いついたというよりは待ち伏せされた、ということか。」

——眼前に。

数えるのも馬鹿馬鹿しいくらいの魔獣たち。

ナーサリー「あら大変。

さあ、マスター。

どうか指示をくださいな!」

一瞬の同情を、即座に闘志へと切り替える。

異形の獣にまとわりつく、かつての同族・・・・・・

「へシアン・ロボ、いける?」

——いけるとも。

誰に向かって物を言う、マスター?

咆哮一つ。

使い魔のように周囲にいた同族おおかみたち。

その半数が畏れのあまり逃げ出した。

獣の本能が、主の忠義を見失わせた。

ならば残るは我が同族に非ず。

我が獲物に、他ならない——!

(戦闘後)

エルキドゥ「供回りは倒したが、想定した以上の強さだね。

僕たちの時代に匹敵するような霊基を持つ魔獣キメラ

技術の発展か、人々の欲望の蓄積か——

なんであれ、都市が成長するとはこういう事か。

これじゃあ確かにおかしな獣も生まれるかもだ。」