猫は鼠を捕るのが役割だが、では猫が鼠も捕るが人も喰らう、では駄目だろう。猫はまず可愛ければ、それで良い。なあ?

幕間の物語(男性鯖)

空は赤くて血のように。

赤い鴉が哭々と不吉を啼く。

槍から滴る血が赤い糸のよう。

結びつけば死に殺すまで手離さぬ。

——悦べ。

貴様への供物が出揃った。

無辜の者を殺そう。

子供、老人、赤子、這う者たちを。

理由は無論、槍のため。

槍は殺すためにあり、殺すことが槍のためになる。

虐殺の刻限だ。

「な、なんだコレーー!?」

プルガトリオ「カカカカカカッ!

キィ……キキキキキキッ!

痛快無比とはこのことか!

人を殺す度に技量が上がる!

ああ、思えば——

生前は何とつまらぬ人生を過ごしたものよォッ!

どうだ、見よ見よ見よ。藤丸!

死体が一つ積み上がる度、我が槍が冴え渡るのが見て取れよう!

さあ、ごろうじろ。

千人万人殺の果て、我が槍が神に届く様を!」

???「あー……

ご高説のところ、失礼する。

ランサー・プルガトリオ殿で相違ないだろうか。」

プルガトリオ「——ク、来たか。

宝蔵院胤舜……!」

胤舜「無論。

外道にも劣る悪逆の所業、耳にした以上は捨て置けぬ。

宝蔵院胤舜、見参。

いざ、尋常に勝負なり。」

プルガトリオ「ハハハ、何が胤舜か。

所詮は紛い物。

俺と貴様とでは、既に見ているものが違うのだ。

不殺の精神? 御仏の慈悲?

下らぬ!

下らぬ下らぬ下らぬゥッ!

自らを鎖に繋いだその縛りこそが、貴様の技の限界地点だ胤舜!

勝負になどなるものか!」

胤舜「殺せば殺すほど強くなるというのなら、戦国では達人であふれようが……ふむ。

マスター、こやつの所見、どう考える?

否、より端的に言うとだな。

彼奴と拙僧、どちらが強いと思う?」

「自分たちだ!」

胤舜「お、おう。

うむ、そこまで断言されると些か面映ゆいな!

しかし呵々大笑したいのは拙僧だ。

先ほどから槍の冴え、槍の冴えと、かしましいが……。

おまえは槍の冴えが欲しいのか、強くなりたいのか、どちらなのだ?」

プルガトリオ「なに……?」

胤舜「猫は鼠を捕るのが役割だが、では猫が鼠も捕るが人も喰らう、では駄目だろう。

猫はまず可愛ければ、それで良い。

なあ?」

「まあそうですね」

胤舜「そこを違えてしまっているのだなあ。

こやつは。」

プルガトリオ「貴様の、理屈は理解できん!」

胤舜「簡単なことだ。

槍の冴えが欲しければ、人を殺さなくとももっと良い方法がある。」

プルガトリオ「何……!?」

胤舜「もっと強い者に槍を任せれば良い・・・・・・・・・・・・・・・

それが一番楽だろう?」

プルガトリオ「笑止! 笑止だ、胤舜!」

胤舜「なのにわざわざ他人と自分を苦しめる必要があるのかね?

拙僧が殺めたのだ・・・・・・・・などと嘯きたいがためか?

浅はかにして愚か。

うむ、汚染されたは不覚であるが、その程度の認識で強くなったと自惚れていたのは片腹痛い!

よし、もう聞くべきことは聞いた。

もはや、後腐れなく立ち会うのみ。

なにしろ同情の余地がありすぎる!

ああ、哀れ哀れ哀れ極まる!」

プルガトリオ「ご託を並べて煙に巻くか、胤舜ッ!!

この腐り果てた魂に残されし槍の業。

最後に貴様に叩きつけてやろう!」

胤舜「ではマスター。

さくりと負かして、かるであに戻るとするか!」

(戦闘後)

プルガトリオ「ふはははは!

何をまだまだッ!

この肉体、この技に敵無——」

胤舜「よし、そこだ。」

プルガトリオ「な……!?

あ、あ、ああああああ!?

馬鹿な! 有り得ん!

そんな、猫の如き手打ちの槍を捌ききれぬだと……!?」

胤舜「己の限界を超えた力を大量に浪費すれば、当然隙もできようて。

おまえの体を一番分かっていないのは、今のおまえなのだよ、プルガトリオ。」

プルガトリオ「ふざ……ふざけるな!

武蔵あのおんなに、まだ報いを果たしていない!

いないのだ!

この奇跡のような復活で、今度こそあの女に——」

胤舜「いやまあ、対剣術の技を積み上げたろうから、少しはマシかもしれないが……。

それ以外の全てが穴だらけだぞ。

一つ勝る代わりに、一つ劣るようになった。」

プルガトリオ「な……。」

胤舜「人は仏にはなれても、鬼にはなれても、限界というものがある。

拙僧からすれば、なんとまあ、勿体ないとしか言いようがない。

槍の冴えなんぞと引き替えに、槍兵としては弱くなるとはな。」

プルガトリオ「お、の、れえええええええええぇぇぇぇぇっ!

許さん! 許さんぞ胤舜ッ!」

胤舜「さらばだ、プルガトリオ。

……ああ、それにしても。

堕ちた俺は、所詮はただの夜盗崩れに等しいか。」

プルガトリオ「……ぎ……ぐ……。」

胤舜「フゥ、終わった終わった。

いや、良きシミュレーターであった。

ではマシュ殿、解除を——。

……マシュ殿?」

「これシミュレーターではないのでは」

胤舜「……なんと?

拙僧は唐突に呼び出されたので、てっきり緊急トレーニングか何かだと……。

お、おおお……。

ま、まさかこれがマスターと共に見る夢、というやつであったか、不覚!

うーむ……ま、良いか。

殺めたとはいえ、他ならぬ自分の命だ。

俺が俺を殺したのだから、特に他に迷惑を掛けた訳ではない!

うむ、これぞまさに三方良し!

……だよね?」

「終わりよければ全てよし!」

胤舜「だよなー!

では、目が覚めたら早速武蔵殿と手合わせでもするか……。

プルガトリオの対武蔵に特化した技、使ってやらねば槍も無念だろうて。

そしてマスター、拙僧は確信したぞ。

どうあれ、今の俺が一番良いのだ、とな!」