私は、こうして立つ度に思い知らされる。私が力なき騎士である事実を。守るべき御方を二度も失った男である事を。そして…——もう二度と。

幕間の物語(男性鯖)

ベディ「……改めて失礼をお詫びいたします。

シミュレーターであろうと、主人である御方の安全を維持し続ける事こそ我が務めだというのに……

今回も空回りが過ぎてしまいました……

お許しください、藤丸。」

「許すも許さないも、大丈夫だったんだから問題ないよ」

ベディ「……ありがとうございます。

その優しさ、寛容さに私は救われています。

では………………………。

せっかくなので食べましょう。」

「はい? 何を言ってるのかよくわからない」

ベディ「私には生前の記憶があります。

たとえばそう、円卓、アーサー王語録、その八。

“栄養は ゲテモノ肉でも 変わりません!”

さあマスター。復唱を!」

「そうだった——ベディヴィエール、そういう人だった!」

ベディ「何の話です?

マスター、なぜ後ずさるのです……マスター!?」

ベディ「ですが、良かった。

見事に平らげていただけて。

マスターの味の好みは把握しましたから、次の機会にはもっと喜んでいただけるよう、技術を磨いておきましょう。」

「ところで、ここは……?」

ベディ「先ほどの海辺がトリスタン卿の憩いの場とすれば、此処は、私個人にとってのそのような場です。

故郷ブリテンの——

とある場所によく似ていて。

…………。

憩い……

いえ。確かに私は、此処で静けさと共に想いを巡らせ、誓いを新たにして賦活ふかつさせますが。

憩いとは、些か異なるかもしれません。」

「…………聞かせて」

ベディ「……はい。マスター。

我らが祖国ブリテンは安泰の国ではなく、幾度も、さまざまな脅威が襲い掛かってきたものです。

多くの者が犠牲となりました。

多くの命を、私は、この手で救えなかった。

——モン・サン・ミシェルの巨人。

ブルターニュのモン・サン・ミシェルに棲まう巨人種が、暴虐の末に、ブルターニュ王の姪御であるヘレナ姫を攫うという事件がありました。

我が王アーサーはケイ卿と私を供として直ちに出撃し、巨人討伐を行いました。

あの時——

実のところ、私は、お二人の役には立てなかった。

アーサー王とケイ卿は苛烈な戦いの末に巨人を斃し、ブルターニュに一時の平穏をもたらしました。

ですが、私は……。

………………姫を、お救い申し上げられなかった。

私は——無力さゆえ、間に合わなかった。

すべてが遅かった。足りなかった。

麗しさで知られたヘレナ姫は無惨なる骸となって、その若く瑞々しい命を散らしてしまわれた。

私は、大切な方をお救い申し上げられなかった。

そう——

一度目はヘレナ姫。

更にはカムランの戦いにあたり、我が王……アーサーさえをも……

一度ならず——二度までも————」

「……ベディヴィエール」

ベディ「…………此処は、よく似ているのです。

ヘレナ姫が最期を迎えられた場所に。

私は、こうして立つ度に思い知らされる。

私が力なき騎士である事実を。

守るべき御方を二度も失った男である事を。

そして……。

——もう二度と。

——同じ過ちを繰り返さないと決めた、自身の決意を。

マスター。

私は、円卓の騎士として語られるには力の足りぬ者。

それでも。

いいえ、であるが故にこそ、此度の現界という奇跡に際して誓うのです。

善き一日のため、過酷な戦いに挑む貴方を守る。

迫り来る敵がいかに強大であろうとも。

たとえ残酷な運命が立ち塞がろうとも。

貴方の命を、心を、体を。

すべてを守り抜きましょう。」

「ありがとう、ベディヴィエール卿。信じるよ」

ベディ「ご期待には必ずや応えます。藤丸。」