さっきの大将はな…あの方——丑御前が顕れてるのとはだいぶ違って、なんつーのかな…エンシェントドラゴンのインヴァーススケイルだぜ。

幕間の物語(女性鯖)

(空間の激しい揺れ)

紫式部「な、何です!?

この凄まじいまでの魔力……!

私が符を用いて拡張していた空間が、軋んで……!

ああっ、いけません! いけません!

頼光様を寝かせていた客間が——

もう、保ちません!

砕けます!!」

酒呑「へええ。なんや派手やねえ!

なあなあ小僧、これから此処で何が始まるん?

この図書館みぃんな燃えてしまうのとちゃう?

それとも、ああ、此処も真っ赤な河が流れるんかねぇ。」

金時「黙ってろ。

あの方・・・かもしれねえんだ。

そん時ゃあ互いの手足の一、二本じゃあ済まねぇぞ。」

「……まさか丑御前?」

酒呑「多分て。」

(揺れ続ける空間)

金時「感じるかマスター!

この魔力、肌を灼き大気を揺らすこのビートッ!

なんともバッドゴールデンな昂ぶりだ!

久々に、ああ、あの方——

ん。待て。待て。待て待て待て!

こりゃあ何か違う、違うんじゃねえかこの感じッ……!

あの方じゃねえ!

こいつは!」

頼光「金時。

虫が。います。」

(頼光の攻撃を防ぐ金時)

頼光「……………………金時?」

金時「待った!

今のソイツはマスターの英霊だろうがよ!

大江山の鬼じゃねえ!

忘れたのか頼光サン!」

頼光「痴れ者。」

坂田「おおおおッ!

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!

圧し負けッちまう!

酒呑!」

酒呑「あら珍し。ええよ、手ぇ貸し——」

(首を斬られる酒呑)

「酒呑童子!? 頼光さん、どうして——!」

酒呑「ざぁんねん。

そらうちの酒で作った身代わりや。

甲賀望月の千代女はんみたいやろ?

ほな、まあ——

加減なんてしぃひんし。

殺してまうけどええんよねぇ?」

頼光「虫。匂うぞ。

虫だけでは、ない。

悪しきものがいる。

虫がいる。鬼がいる。

人を殺める魔性化生が此処には多すぎるな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

誅伐。せねば。」

紫式部「藤丸様! 私の後ろに!」

金時「——紫式部サン。頼む。

頼光の大将に憑いたモノを落としたい! 今できるか!」

紫式部「晴明様のあれ・・でございますか!?

え、ええと、わ、私は未熟で……その……」

紫式部「はっ、はい!

そも、こうなったのも私の不用意な発言のせいでしょう!

ならば己が霊基霊核全身全霊、すべて込めてみせます!」

金時「頼む! ってワケだ酒呑!」

酒呑「何がどういう訳なん——

っ!!

はぁもう話してる暇なんてあらへん!

はよなんとかしてもらわへんと、うち、なぁ。」

紫式部「では! 参ります!」

金時「行くぜ! 大将!」

「頼光さんをこのままにしておけない!」

金時「ああ!

そうだよな、そうだぜ! マスター!」

頼光「……ッ!」

金時「いくぜ! 相棒!」

金時「おう。

自我、しっかり保ってるみたいだな。

流石はマスターだ。」

「ここは、頼光さんの……」

金時「ああ。

いわゆる心象風景ってやつだ。

真っ暗なのは——

まあ、これはこれで分かりやすいよな。

何もかも見失っちまってるんだろうさ。

悪ィな、急に付き合わせちまって。」

「付き合うに決まってる」

金時「サンキュな、マスター。

今頃、アンタの肉体は眠りに落ちてるだろう。

いわゆるレムレム云々のあれに似ちゃあいるが……」

「たまにある、夢と何かが繋がるアレ……?」

金時「ソイツに似て非なるモノだ。

厳密には紫式部サンの術の効果だ。

つーか、あー、晴明のダンナが昔やってたやつの真似だな。

憑き物落とし、とかそういう類のアレだ。

やり方は色々あるらしいんだが、そのうちひとつがこんな感じだ。

憑き物にやられちまった奴の中に入るやり方で、確か、なんとか心観って言い方もあるんだったかな。

今のオレ風に言うとゴールデン・マインド・ダイブだな。

……オーケイ?」

「ざっくりしすぎ」

金時「……そうだな。

本来、サーヴァントみたいな存在に効く術じゃねえ。

相当の術者じゃなけりゃあ弾かれておしまいだ。

それが効いちまうってことは——

あんだけの魔力を発していても、頼光サンの霊基はとんでもなく不安定になってンだ。

むしろ、霊基どころか霊核や魂あたりを燃やして魔力変換しちまってるのかもしれねぇ。」

「それって、良くないよね。早く止めよう」

金時「だな!

じゃあまあ、降りてく・・・・か。

だいたいこういうのは奥に進むか降りてくかだぜ。

さっきの大将はな……。

あの方——

丑御前が顕れてるのとはだいぶ違って、なんつーのかな……あー。

エンシェントドラゴンのインヴァーススケイルだぜ。」

「なにそれ?」

金時「突かれたくない弱点だ。」

「……あ、逆鱗?」

金時「そうか。

どうしても突かれたくねェ弱点だ。

いつかこの話はしなくちゃならんと思っちゃいたが、いい機会だ。言っておく。

まず、頼光サンは——

本当は、オレっちの母親でもアンタの母親でもない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「……うん。そう、だね」

金時「……分かってるよな。

そりゃあ、アンタにはアンタのお袋さんがいる。

オレにも実母ってのがいた。

ま、頼光サンと出逢った頃には生きちゃいなかったが。

だが、頼光サンはあんな風になっちまう。

バーサーカーで召喚されちまったら特にあんな感じだ。

オレからすると、ありゃ、一昔前っつーか……

バリバリの優等生棟梁だった頃より前の頼光サンなんだ。

歳なんざ十も離れちゃいねえのに、母は、母は、って言っちゃあオレの面倒をみてくれた。

…………優しいヒトだった。」

「金時。言いにくいなら、言わなくてもいいよ」

金時「いや。言うぜ。

アンタには分かってもらいたい。

サーヴァントのマスターとしてってだけじゃなく、源頼光の傍らにいるヒトとして、知ってもらいてェんだ。

頼光サンはな、母君に命を救われ、しかし母君を知らずに育った。

どうしようもなく輝いちまってるんだ、頼光サンの中での”母親”って奴は。

……だからきっと、自分も誰かの母であろうとした。

だがよ。

頼光サンの父上、先代はそれを許さなかった。

源頼光は源氏の棟梁だ。

つまりは男だ。

つまりは女じゃねえ——ってな。

……最後には、棟梁の座を引っぺがした癖にな。」

「……………………」

金時「…………酷だよな。

後世の歴史でも源頼光は男だってことになってやがるし、多くの妻との間に多くの子を成したことになってる。

そいつを、な。

まだうまいこと呑み込めてねえんだ。

あのヒトは。

……根が童女なんだよ。

そのあたりの諸々のアレを、誰にも教えてもらえなかったからな。

だから、歴史上の息子だなんだの話は、禁句なのさ。逆鱗だ。」

「頼国、頼家って……」

金時「ま、そういうこった。

呑み込みきれず、折り合えず。

それでも源氏の棟梁として生きなきゃなんねぇあのヒトが、選んだ在り方が……さっきのアレさ。

丑御前とは違う。

完全な別物だ。

ウルトラゴールデンデンジャー仕事モードってえのかな。

京を守り悪を討つ、問答無用の荒ぶる武者だ。

口数少なく圧倒的パワーで敵を殺す。

ただただ殺す。

オレは、ああいう時の頼光サンをこう呼んでる。

——独武者ひとりむしゃ

武者の中の武者にして、まさに只一人の武者。

まつろわぬものを誅戮し続ける孤高の武辺者、ってな。

人みたいに何かを考えることもなければ、人みたいにものを食ったりもしねえ。

ただ戦う。

ただただ戦う。

戦い続ける。

究極的にゴールデンバッドな現実逃避・・・・——

言わば、何もかも忘れて務めだけをこなすモードだ!」

「ワーカホリック!?」

金時「それそれ。それだ。

嫌なこと忘れるのはいいが、あのままでいりゃあ遠からず死んじまう。

生前なら、ああ。

力尽きて死ぬまで戦い続けようとしたが、英霊の身なら、そうさな。

魔力尽きて消滅するまで戦い続けるだろうよ。」

「なら、止めなきゃいけない」

金時「迷いがねえな。

流石、グッドゴールデングッドだ大将!」