私が貴女のその佇まいにどれほど勇気付けられたことか! 同じ女でありながら、ああも凛々しく太刀を佩かれる貴女は…とても、眩しく映ったのでございます。

幕間の物語(女性鯖)

紫式部「ああ、感激です。

このような時が再び巡ってこようとは——」

頼光「はい?」

紫式部「こうしてお話をするのは、ある夜の……

道長様のお屋敷からの帰り道、以来になりますでしょうか。

私、よく覚えています。」

頼光「まあ!

まあ、まあ!

まさか、覚えていてくださったなんて……」

紫式部「忘れる訳がありませんとも!

どのような殿方よりも逞しくして太刀を佩き、どのような女性よりも麗しく輝かれておられた御方。

まさか、まさか、その人物が源氏の棟梁と名高き頼光様でいらっしゃるとは。」

頼光「…………。」

紫式部「頼光様?」

頼光「流石に、恥ずかしいといいますか……。」

紫式部「何を仰います。

ええ、何を仰います!

夫を失い、道長様に無茶ぶりされて中宮彰子様にお仕えすることになった私が、貴女のその佇まいにどれほど勇気付けられたことか!

同じ女でありながら、ああも凛々しく太刀を佩かれる貴女は……

とても、眩しく映ったのでございます。」

頼光「いえ。いいえ。」

紫式部「……?」

頼光「源頼光は男にございます。」

紫式部「——確かに、藤原摂関家や宮中にはそういった暗黙の了解がありました。それは事実です。

後世でもそのように記録されていると聞きます。

ですが、貴女は貴女。

あの頃も、今も、私の見たままの源頼光様です。」

頼光「……ありがとうございます。

でも、本当に。

私は、立派な人物などではないのです。

実際のところは、ただただ、太刀を振るい、弓を引くだけのモノでございます。」

紫式部「頼光様。頼光様。

嘘いつわりなく、あの頃の私たちにとって、頼光様と保昌様は京の守りそのものでありました。

その体を盾として、そのお力をほことして、私たち京に生きるヒトを守り続けてくださったのです。

当時はお伝えしきれませんでしたが……

心より感謝しています。

死した後の影たる身でさえ、未来永劫変わらぬ想いです。」

頼光「…………! 

ああ。香子様——

……ありがとうございます。

ううっ、お恥ずかしい。

あまりに嬉しい言の葉を重ねてくださるものだから、私、感極まってしまいますっ!」

紫式部「頼光様!」

頼光「香子様!」

紫式部「頼光様っ!!」

頼光「香子様っ!!」

金時「へへッ。

なんだか泣けてきやがるぜ。

女同士の友情ってえのもゴールデンなもンだな!」

「ゴールデンだ!」

金時「おうさ! ゴォオオオルデンだ!」

酒呑「はー、あほらし。

付き合ってられへんわぁ。

藤丸はん、上戻って一献どない?」

金時「あっおい!

マスターはまだ酒ァだめだっつってんだろ!」

酒呑「はいはい。

はー、つまらへんねえ。」

紫式部「そうそう、頼光様!」

頼光「はい。なんでしょう?」

紫式部「実は、実は一度だけですが私、ご子息を遠目に見たことがあるのです!

貴女に似て凛々しくも麗しい立ち姿。

ええ、それはもう利発そうな美男子であられました——」

頼光「息子。

ああ、金時ですね?」

紫式部「頼光四天王の金時様!

あ、いえ、そちらの御方ではなくてですね。

ええと確か、頼国殿か頼家殿だったかと!」

頼光「頼国……」

紫式部「はいっ。」

頼光「頼、家……?

よ、より、頼国……頼家……」

紫式部「頼光様…………!」

頼光「あ、ぁ……………………………………………………——」

金時「頼光サン!!」

紫式部「わ、わ、私、私はもしかして何か……

余計なことを……口にしてしまったのでしょうか……」

金時「いや。アンタは悪くねェ。

悪かねえェンだ。

ああいった話題はいつ出たっておかしくない。

ひとまず頼光の大将を休ませてやりてえ。

悪ィが司書サン、寝床か何か貸してくれると有り難え。」

紫式部「は、はい!

すぐ裏に休める場所がございます!

こちらです——」