一体の人形を間引くだけで、その被害は何倍にもなる。人間の考える神さまってヤツが、世界を作った後に手を出してこないのはそういう事よ。

幕間の物語(女性鯖)

マシュ「人形の王様を倒してくれ、ですか?」

メディア「ええ、簡単に言えばそういう事になるわね。

アナタたちを見込んでのお願いよ。」

「人形の王様……? 話が見えないんだけど……」

メディア「……はあ。

何度も説明させないでちょうだい。

いい? いま持ってきた直径五十センチの大地模型ジオラマ

これが私が作った箱庭よ。

わかりやすく言えば魔術における固有結界の亜種みたいなものかしら。」

マシュ「いえ、その……

どう見ても小さな家の模型にフィギュアが並んでるだけなのですが……。」

メディア「失礼な人間ね。

これは私が毎日少しずつ細かーい魔術を積み重ねて、積み重ねて。

ようやくつくりあげた至高の魔術結界なのよ。

まあ、貴方みたいなのに解らないでしょうけどね。」

マシュ「……はい、まったくわかりません。

わたしの勉強不足です、反省します。」

「問題ない、きっと誰もわからないよマシュ」

マシュ「……やはり。

薄々そんな気はしていました。

これはメディアさんだけの趣味……

自宅に籠もって独り鬱々と没頭する、いわゆる御宅趣味、なのではないかと。」

メディア「あのね。その言い方は止めなさい。

傷つく人がいるから。

少なくともいま、確実に私が。」

マシュ「そうですね、前言を撤回します。

この模型はただの模型ではありません。

たいへん精巧な模型です。」

……あの。

人形の王、というのは、もしや——」

メディア「ええ。この小世界のの話よ。

この模型の内部は、いわゆる異空間なのよ。

貴方達みたいな素人にもわかりやすく言うなら、人形の世界とでも言えばいいかしら?

この家のなかの人形たちは文字通り生きているの。

もちろん私が手塩にかけて毎日コツコツ作った人形だからこそなのですけどね。」

「神代の魔女っていったい……」

メディア「そこ、なにか言ったかしら?

ここまで言えばわかるでしょう。

貴方たちに頼みたいのはメンテナンスよ。

この世界の管理者として権限を与えていた人形が私の指示書を無視して、勝手に動き始めたの。

まったく、作ってあげた恩を忘れて噛まれるとはこのことだわ!!」

マシュ「……あの。

よくわかりませんが、外からその人形だけ抜き出せないのですが?」

メディア「それができればやっているわ。

でも下手に外から介入したら何もかもが壊れてしまう。

増築したり付け加えるのは簡単でも、取り除くのはその何倍もの技術とセンスがいるのよ。

完成した小説を加筆する人は多いけど、登場人物を消していく人は少ないでしょう?

一度完成したモノから要素を引く、というのはそういうことなの。

一体の人形を間引くだけで、その被害は何倍にもなる。

人間の考える神さまってヤツが、世界を作った後に手を出してこないのはそういう事よ。

どんなに被害が広がっても、創造主そとのものは外から見ているしかないの。

異常の原因を最小限の被害で済ませるには、中に入って当事者になるのが最適という事よ。」

マシュ「それはごもっともですが……

この中? にどうやって入れば……。」

メディア「安心して頂戴、そこは私が案内するわ。

さあ、気を楽にして……、フフフフフフ。」

「全然安心できないのですが……あ、何か気が遠く……」

マシュ「先輩!? ……せんぱ……!!……!!」