ああ、まったくもって余は恵まれていた。もっとも、楽しかったのは旅の始まりだけだ。シータを攫われてからは、ただただ過酷だった。

幕間の物語(男性鯖)

ラーマ「試練、か。

考えてみれば、我が半生は試練だったなあ。」

ロマニ「『ラーマーヤナ』によれば、ラーマ君はまず王子であった頃に追放されたんだっけ。」

ラーマ「うむ。

異母であるカイケイーが、余が王となってしまうと不遇をかこつのでは、と疑心暗鬼に駆られてな。

大抵の陰謀は、そういう疑心から始まるもの。

殺されなかっただけ、マシかもしれぬ。

幸い、弟であるラクシュマナもついてきてくれた。

追放された、というよりは長旅に出たという感覚だったな。

そして何より、シータと共にあったことを考えれば、余は決して、あの追放を悪いものとは思わない。」

マシュ「確か、王になるはずだったバーラタさんも即位を拒んで、待ち続けたんですよね。」

ラーマ「ああ、まったくもって余は恵まれていた。

もっとも、楽しかったのは旅の始まりだけだ。

シータを攫われてからは、ただただ過酷だった。

……なあ、マスター。

この戦いは人理修復のためのもの。

これに命を懸けることに迷いも惑いもない。

しかし、もし余が真っ当な聖杯戦争で召喚されたなら、もしかすると余はこう願うのかもしれない。

『どうか過去を変えて欲しい』

『シータが攫われなかった過去を』」

マシュ「ラーマさん……。」

ロマニ「もちろん、普通の聖杯戦争ならばその願いを叶えられるかもしれないけどね。

色々な歪みが生まれる可能性があるよ。

例えば、シータは攫われずとも呪いは解けないままとか。

あるいは、君たちが救われた分の反動が、君の国を違うものにしてしまうかもしれない。」

ラーマ「……歪みか。

後から手を加える、とはそういう事だろうな。

……まあ、いずれにせよもしもの話だ。

今は試練に集中するとしよう。」

マシュ「海岸に到着しました。

ここから、ボートでアルカトラズまで向かいましたね。

少し懐かしい気もします。

あの時のご老人はお元気でしょうか。」

???「——息災のようだ。

だが、今から戦場になるので避難してもらった。」

マシュ「!」

ラーマ「試練の英雄か!」

???「いかにも。」

ラーマ「余はコサラの王ラーマである!

試練の英雄よ、どうか姿を見せてくれ!」

カルナ「——了解した。

と言っても、元より姿を現す気ではあったがな。」

マシュ「嘘……カルナさん!?」

カルナ「第一の試練はオレだ。

眼力……いや、佇まいの教示とでも言うべきか。

真の英雄は眼で殺す。

我がブラフマーストラ、受けてみよコサラの王よ。」

ラーマ「応とも。

第一の試練が貴方であれば不足はない。

こちらの力量を限界まで引き摺り出す。

行くぞ、マスター……!!」

(戦闘後)

カルナ「……見事だ。ここまでだな。

おまえの『不滅の刃』は見せて貰った。

英雄として未熟な時期で召喚されたが故の愚直なまでの勇猛さ——

見習いたいものだ。

第二の試練に進むがいい。

気をつけろ。次はこうはいくまい。」

ラーマ「感謝する、カルナ殿。

名高き英雄と刃を交えられて、光栄だった。」

カルナ「第二の英雄に比べればオレなど取るに足りぬ試練だ。

そこの船で行くがいい。」

ラーマ「……あのカルナが己のことを取るに足りぬ、と言うほどの英雄か……。」

マシュ「謙遜ではないでしょうか?

カルナさんは控えめな方ですし……。」

ラーマ「——それだけだといいのだがな。

何しろ試練として用意された英雄の一人。

……次は恐らく……。」

マシュ「マスター、退がって!」

ラーマ「この矢……すると次はアーチャーか!」

アルジュナ「——いかにもその通り。

第二の試練、私が番人を務めさせて戴きます。

ご安心を。

この私は、貴方がたに対する感情は持ち合わせておりません。

過去に何かあったとしても、そちら側に私がいたとしても、全くお気になさらずに。」

ラーマ「今度はアルジュナか……!」

アルジュナ「さあ、貴方の『不滅の刃』見せて貰いましょうか。

それを統べるに足る存在なのかを——!」

(戦闘後)

アルジュナ「……まあ、及第点でしょう。

些かもの足りませんが、それは仕方のないこと。

私と比べてしまえば、いかなる英霊も物足りないのですから。

……ですよね?」

「そんなことないあるよ」

アルジュナ「気になる……。

あるのかないのかどちらなのです……!

おっと。

少々、大人げありませんでした。

しかしラーマ殿、我々からすれば不思議です。

貴方は生前の時点で、幾つもの試練を乗り越えた。

そして乗り越えた貴方は英雄としての完成形。

これほどまでに若い召喚でなければ、試練を乗り越える必要などなかったでしょう。」

ラーマ「かもしれんな。

だが、それで召喚されるのはシータのことを思い出として割り切り、王として完成された余であろう。

マスターとの相性次第では、そちらで召喚される可能性もあったろうが——

どうやら、我がマスターはこちらの姿を望んでくれたらしい。

そしてそれは、余としても嬉しいことだ。」

アルジュナ「ふむ、微笑ましい。

いえ、失礼。

だからこそ、強くなる必要がある。

サーヴァントといえども。

故にこその、この試練。

強くなりなさい、ラーマ殿。」

アルジュナ「では私はこれで。

最後の英雄が待っています。

……紛れもなく最難関です。

彼は一切の手加減をしないでしょうから、ね。」