昨日この夢を見てから、ずっと考えてた。なんでオレは今さらこんな夢を見たのか。もし選定の剣が抜けたなら、一体オレはどんな王になるのか。

幕間の物語(女性鯖)

「ここは……昨日の夢の?」

モードレッド「……ああ。

ようやく辿り着きやがったか。

今日は随分と手が込んでやがったな。」

「マーリン?」

マーリン「そうとも。

お馴染みのマーリンお兄さんだ。

選定の剣といえば私。

私といえば選定の剣だからね。

ま、案内役のようなものさ。

あまり気にしないでくれ。

では定型通り、言っておこうか。

——それを手に取る前に、きちんと考えた方がいい。」

モードレッド「カムランの丘で父上を倒し、あまつさえ選定の剣の前に立つ——か。

まるで、あの頃の夢全部乗せだな。

贅沢にもほどがある。

こんなに盛りだくさんだと、胸焼けしちまいそうだぜ。

——マスター。」

「なに?」

モードレッド「こっから先は独り言みたいなモンだ。

あんまり気にしないでくれ。

聞いたら忘れろ。

面倒なら聞き流してくれてもいい。

——オレは、王になりたかった。

簒奪した王位なんかでじゃない。

父上の後を継ぎたかった。

父上に——認められたかった。

ああ、そうだ。

オレが王になりたかったのは、父上が王だったからだ。

もしも父上が王じゃなかったなら、そんな夢は抱いていなかっただろう。

オレが昔この夢を見たとき、選定の剣は抜けなかった。

いや——

触ることさえできなかった。

まあ、そりゃそうだよな。

王になって何を為すかじゃなく、父上に認められるのが目的だったんだから。

……でも、昨日この夢を見てから、ずっと考えてた。

なんでオレは今さらこんな夢を見たのか。

もし選定の剣が抜けたなら——

一体オレはどんな王になるのか。

世界には数多の王がいて、それぞれの理想があった。

どれが正しいとか、間違ってるとか、そんなこと今は言いやしない。

どんな王道だろうと覇道だろうと、己の信念に従ってる分、オレよりは幾分上等だ。

——でも、オレはようやく思い描いた。

オレが王になって治める、理想の王国の姿を。

まあ、まだ全然ぼんやりとだけどな。

でも、なんていうのかな、それは——」

「もしかして……形は違えど、アーサー王の理想に通じていた?」

モードレッド「————!

…………。

なに言ってやがる、マスター。

オレは叛逆の騎士だぜ?

オレが作る王国は——

父上よりスゲーに決まってるだろ!」

「そうだね。楽しみにしてる」

モードレッド「おう!

そんときゃ大臣にでもしてやるよ!

まあ、仕事しなきゃ即クビだけどな!」

「モードレッド」

モードレッド「あ? どうしたマスター。」

「今のモードレッドなら、剣を抜ける気がする」

モードレッド「……ははっ。

何当たり前のこと言ってやがる。

『今の』ってのは余計だ。

いつだって抜いてみせるぜ?

けど、夢の中で抜いたって意味ねーだろ。

……でも、なんだろうな。

なんだか妙にスッキリした気分だ。

……さて、随分長く夢を見ちまったみたいだ。

そろそろ起きねぇとな。

……おっ、新発見だマスター。

夢から覚めようとすると、夢の中で眠くなるみたいだぞ。

……じゃあ、また明日な。

まったく期待はしてなかったけど……助かったぜ。

ありがとよ、マスター。」

「……………………で」

「モードレッドの夢に何かした?」

マーリン「いやいやいや。

夢関連だからって、全部が全部、私が原因ってことはないだろう?

だいたい、人工生命の夢はあまり美味しくないし。

今回の夢はあくまでモードレッドのものだ。

モードレッドは様々な聖杯戦争やカルデアでの戦いを経て変化を遂げている。

さっきの夢は、それが深層意識……いや霊基かな?

そこにこっそりと現れたようなものさ。

でも、そうだね。

もしも外的要因があるとするなら——

燦然と輝く王剣クラレントかもしれない。」

「モードレッドの持ってる剣?」

マーリン「そう。

不当に簒奪されて力を失いはしたものの、あれは本来、王位継承権を示すものだからね。

もしかしたらモードレッドの変化を、つぶさに感じ取ったのかもだ。

もちろん、完全に王の器を備えた……とまでは言わない。

それこそモードレッドには過ぎた夢だ。

でも、あの憐れな騎士こどもも、いつまでも立ち止まっている訳じゃない。

決してオトナには為れないとしても、心ぐらいは成長するだろう。

生きている頃は必要以上に介入はしなかった。

モルガンの匂いがきつくてねぇ。

けど、それがモードレッドには幸いしたと思うよ?

私が助言していたら、それこそ叛逆の前に自害していたさ。

おっと、モードレッドが目覚めようとしている。

夢の世界も、そろそろお終いだ。

それでは、また。

ごきげんよう、カルデアのマスター。」