禅寂大悟、真の極みへと至った剣聖の果てを知る魂なのでしょうから。それならそれで構いません。私は私で、零のさらに先に在る剣を目指すまで——!

幕間の物語(男性鯖)

「シミュレーターの中に、何か……倒すべき敵がいるってこと……?」

柳生「然り。

文字通りの意味である。

五日前のこと。

この世ならざる妖物魔物の臭いをしみゅれえたあに感じ取ったはいいが、確証がまるでない。

予感程度で主君を煩わせる訳にもいかぬ、と臭いの元を探して彷徨っていた。」

柳生「うむ。」

ダヴィンチ「なんだろう。

シミュレーターに混ざり込んだウイルスデータか何かかな?」

マシュ「もしかして、さっきのエネミーデータは……!」

柳生「然り。

妖物の残り香、いかにも臭っていた。

……主殿。そして各々方。

改めて、相済まぬ。

此度は迷惑を掛けた。

主殿のためをと思っての探索ではあったが、しかし、嗚呼、慣れぬことはするものではないな。」

巴御前「我らは藤丸さまのサーヴァントなれば、すなわち同じ主君を戴く同士にございます。

同士は力を合わせてこそ、そう私は信じているのです。但馬さま。

ですので、そのように頭を下げられることはありません。」

柳生「心遣い痛み入る。

……まこと、木曽義仲公は良い妻を娶られた。」

ダヴィンチ「話してるとこごめんね!

一通りスキャンしてみたけど、見当たらないんだ。

ウイルスデータの発生源がどうにも発見できない。

どこに入り込んでるのかな——」

柳生「ああ、何。

すぐに何処へ姿を見せよう。

あれはどうやら主殿を狙っている模様にて。

姿を見せよ。化生。」

妖しき声「いやはや。いやはや!

剣士の勘というものはこれでなかなか莫迦にできぬもの。

ですが哀しいかなあまりにか細く頼りない。

是には、ンンンンンン拙僧も失笑を禁じ得ませぬなァ。

お久しぶりです、と申し上げておきましょうか。

柳生但馬守宗矩。」

「キャスター・リンボ!?」

柳生「でえたべえす・・・・・・なるもので目にしてはいたが——

彼方の果てにて暴れ回ったとかいう外法使い。

成る程。

悪しき外法で以て主殿を害さんと狙ったか?」

肉食獣じみた影「——はい。

仰せの通りにて。

人理の英霊、ひい、ふう、みい、よ。四騎か。

こうも雁首揃えてよくぞ我が術の前に歩み出て下さった!

くく。

くくふふふふははははははははははははははは!

宿業なきただの英霊如き・・・・・・・なぞ!

何するものぞ!

そうれ、そうれ輝き喰らえ我が五芒星!

まずは其処なる一騎、ただちに造り替えて差し上げる!」

ディルムッド「但馬殿!」

巴と千代女「但馬さま!!」

「柳生さん!!」

肉食獣じみた獣「捉えた!!」

マシュ「これは……!

呪詛と思しき複雑な術式が柳生さんの霊基を……!?」

肉食獣じみた影「一切鏖殺とまでは参りませんがンンンそうですね!

貴方たち四騎に宿業なり怨念なり埋め込んで差し上げる!

はははははははははははははははは!

この程度!

この程度か、柳生但馬守宗矩!

主を捨てて剣鬼へと走った心魂たる貴方は美しかったが、何、汎人類史にて生涯を終えた貴方はどうにも鈍い!」

柳生「ふ。

如何なおぞましくも畏るべき化生かと思いきや、この程度・・・・とは。」

肉食獣じみた影「ン、ンンンンンンンン!?

負け惜しみはいけませんねえ但馬守!

この私は!

式神ではあれど並の英霊如きより余程強力な霊基を——」

柳生「…………式神では不足だな。

本体を寄越すがよいぞ、外道。」

肉食獣じみた影「なッ!?」

柳生「我が心魂、美しく輝ける光にはあらず。

然して穢れの澱みもなし。

ただ在るがままに在るに過ぎぬ。

各々方!」

「みんな、いくぞ! はい!」

柳生「不埒なる化生!

此処にて、今より成敗仕る!」

(戦闘後)

肉食獣じみた影「ぬ、ぬう、ぬううううううッ!!

これは一体……!」

柳生「化生よ。

剣鬼へと堕ちた拙者がどうのと云っていたな。

成る程、それは余程の縁と出逢うたのであろうよ。

嗚呼。羨ましくも思うが——

未熟に過ぎる。

剣極まれば禅寂へと至るもの。

剣極まれば大悟へと至るもの。

我が心は不動。然して——

我が身、ええてる・・・・なる虚ろの影法師ではあれど、柳生但馬守宗矩としての生涯を既に全うしている。

意味は、分かるな?」

肉食獣じみた影「ンンンンンンそうかそうか、そうか! 貴様は! 真に!」

武蔵「そうなんだ。

但馬の爺さま、カルデアにいるんだ!

ふんふん。成る程。

それじゃあ今の私では負けてしまうかもしれません。

禅寂大悟、真の極みへと至った剣聖の果てを知る魂・・・・・・・・・なのでしょうから。

それならそれで構いません。

私は私で、零のさらに先に在る剣を目指すまで——!」

柳生「是即ち、真に、剣禅の果てへと至った魂であると知れ。

————『剣術無双・剣禅一如』。」

(砕ける音)

巴御前「……但馬さま。お見事。」

「勝負ありだね」

柳生「未熟の技にて、失礼。」

男「なあ、親父殿。

覚えているかい。

巷で、武蔵だ宗矩だと騒がしかった事があったろう。

江戸の民草ってのはどうにも噂好きだ。

江戸柳生の連中を通じて俺の耳にも聞こえてきたよ。

あんたは無視を決め込んじゃあいたが——

俺は知りたかった。

武蔵、宗矩、もし戦わば……ってな。

…………。

いや。いや。

俺が言いたいのはな、親父殿。

あんたは強かった。

少なくとも、この俺にとっちゃあ——

あんたこそが——」

以上。

正保三年四月某日、とある墓前にて。

——芍薬の花咲く、春の頃であったという。