人も、この山で喰ってはおらぬ…ウルクとやらでは生きられぬと逃げ込んだ弱き人間どもを、仮初めの配下として、吾は…吾は、ただ、生きていた…だけだ…

幕間の物語(男性鯖)

茨木「吾は、在るように在ったのだ……

人も、この山で喰ってはおらぬ……

ウルクとやらでは生きられぬと逃げ込んだ弱き人間どもを、仮初めの配下として、吾は……

吾は、ただ、生きていた……だけだ……

弱きものどもと……

見知らぬ異形の獣どもを、束ねて……それだけだ……

……………………ああ、だが。

そうだな。

吾はずっと、ずっと、物足りなかった。

弱き人間どもがいようと、獣どもが擦り寄ってこようと。

此処には誰もおらぬ。分かるか?

吾を知り、吾と語らってくれる者がおらぬ。

人間たちはやがて此処を去った。

ウルクの様子を見に行くだの、何だのと理由を付けて、去って行った。

そのままとんと戻らぬ。

きっと皆、死んだのだろう。

異形の獣たちも、日々弱っていく。

殺されずとも明日には死に果てていたろうよ。

……誰も彼も、怯えて震えていただけだ。

吾は、いわば焚き火の如き扱いであったのだ。

吾もまた……

奴らと変わらず、震えていたというのにな。」


「————」

酒呑「うん? 言うてええよ、茨木。」

茨木「酒呑……ああ、そこにいるのだな。酒呑童子……

見知らぬ山で、ずっと……

……ひとりきりというのは……寂しかった、ぞ……」

マシュ「茨木童子、消滅を確認しました。

魔物たちも同様です。」

小太郎「……金時殿。」

金時「ああ。これで仕舞いだ。

身内の後始末に付き合わせちまって悪かったな。」

小太郎「いいえ、そんな!

僕は何も……

お気になさらないで下さい。

金時殿もマスターも正しい決断をされました。

受肉した茨木童子は、歴史へ影響を与えうる存在かと。」

酒呑「せやねぇ。仕方ないんちゃう?

ま、いざ本気で殺し合うて殺されたんならそこまでやし。

それに、ねえ、ふふ。

ふふふふふ。

小僧がまさかほんに、あないにねえ。ふふ。

あーおかし、昂ぶって、どうにかなってしまいそやわぁ。」

金時「……何だよ。」

酒呑「身内、なんて二度も言うてくれはって。

カルデアに戻ったら、あっちの茨木・・・・・・にどう言うたろか。」

「そういえば言ってたね、うん」

金時「おい、それは……

それは駄目だろ、ゴールデンじゃなさすぎンだろ……」

酒呑「しらへんよそんなん。

あー、おかし。

さ、マシュ。

はよそっち戻して?」

マシュ「あっ、はい。

それでは皆さん、短期レイシフト終了です。

第七特異点からカルデアへの帰還処理を開始します!」

(帰還後)

茨木「……何だ。

吾は汝などに用はないぞ、消えろ。

これからニトクリスと会わねばならんのだ。

そこを退け、もしくは死ね。

死ぬがよい、坂田金時め。」

金時「うるせえ。

ソッチになくてもコッチには用があるンだよ。」

茨木「ほう??」

金時「だからな。えーとな……」

茨木「なんだ。はっきりせぬか。

もしや吾をからかって遊んでいるのではなかろうな……?」

金時「あー、だからな。

あれだ。悪かった。

ああだこうだ理屈を付けても、やっぱ寝覚めが悪ィんだ。

アンタに言っても意味はねえってのも分かってんだが、こうしなきゃオレの気がすまねえ。

だから、二重の意味ですまん。

この通りだ。」

茨木「たわけ! 訳が分からんわ!」

金時「……だよな。

じゃあ、コイツだけでも受け取れ。

そらよ。」

茨木「巾着?

なんだこれは。

何が入っている……(がさごそ)」

——にゃんと!

これはもしや……!!」

金時「アンタ好きなんだろ、チョコレート。

他にも色々詰め合わせた。

詫びの品ってのとは違うが……

とりあえずゴールデンな包装を選んでおいたから、まあ、気に入ったなら食え。

じゃあな。」

茨木「後から“やっぱり返せ”と言うても返さぬからな!

もごもご。」

金時「言わねえよ!」

頼光「な、な、な、な……!

なんですあれは、金時が虫なぞに贈り物などと!

驚天動地とはこの事、もはや一刻の猶予もありませぬ!

誅伐を執行する他に道はなし——ムググ!?」

「まあまあお母さん」

頼光「マスター、しかし……!

いけません。

情が移ってからでは遅いといいますし!」

酒呑「ふふ、なあに。

うちらは犬猫と同じなん?

そうかもしれへんけど、まあ、野暮はしいひんとき。

でもまあ、せやねえ。

人の子だか、犬猫だかと同じ扱いをしてるうちは——

——小僧もまだ、まっとうに人間ヒトなんやねぇ。」