彼に明日を託された君、世界と向き合う者よ。ともかく今は、行動しなくてはいけない。彼女の自我はとてもまずい状況にあるようだからね。

幕間の物語(女性鯖)

???「…………まさか、また会う事になるとはね。

それとも今回はノーカウントとすべきかな?

此処はどの時代でもなく、どの場所でもないようだ。

物質で構成された世界とはまったく違う。

たゆたう精神の海。君の夢だ。

そして、君と契約を結んだサーヴァントの記憶でもある。」

「その声は——どこかで聞いた事があるような、ないような」

???「……やはり。明瞭ではないんだね。」

アーサー「自己紹介はしないでおこう。

僕は、君と彼女の間には本来立たないはずの男だ。

どうやら、転移を続けるさなかに君の夢と意識が重なってしまったらしい。

……参ったな。

こういう事態は僕としても初めてになる。

君の縁ゆえか、それとも彼女との縁ゆえだろうか。」

「異世界の——」

アーサー「覚えていてくれたんだね。

凄いな、夢と記憶の結合の中で時系列を自覚するなんて。

でも、うん。

やっぱり今回はノーカウントといこう。

正式な再会はまたいずれ。

彼に明日を託された君、世界と向き合う者よ。

ともかく今は、行動しなくてはいけない。

彼女の自我はとてもまずい状況にあるようだからね。」

「契約したサーヴァントの誰かが危ないの?」

アーサー「その通り。

君と契約中であるサーヴァント。

それは——

…………いや。

言葉よりも行動が先だ。

反応を感じ取った。行こう。」

(移動後)

アーサー「このあたりのはずだ。

ここから先は、君の方が感じ取れるかもしれないね。

探すのは魔力でも何でもいい。

気配でも、ただの勘でも、君が手を伸ばすんだ。

僕は違う。

僕が彼女と結んだ縁では、戦う事しかできないだろう。

彼女を助けられるのは……君だけだ。」

「この感じ……この、困りますな感じは……」

アーサー「……!

流石は彼女のマスター。

雪の下か。

倒れたまま埋もれたんだ、すぐに掘り返そう!」

(救助後)

アーサー「……ランサー。

ランサー、聞こえるかい。

君のマスターが来ている。

いつまでも眠ったままでいるような君ではないだろう。

ランサー。ブリュンヒルデ。」

ブリュンヒルデ「————————はい。」

「雪の中に倒れてたけど大丈夫!?」

ブリュンヒルデ「マスター……はい。

私は……この私は、今は、大丈夫です。

ああ、マスター。

可愛い男の子。

私と契約を結んでくださったあなた。

マスターは私に声をかけてくださいます。

マスターは私に微笑みかけてくれる……

それが嬉しくて、愛おしくて、切なくて。

だから、私……

…………分かりますよね、マスター。

私、いつもあなたを殺そうとします。

あなたの事をシグルドと混同して……

いつも、いつも。」

「うん。割といつもそうだね」

ブリュンヒルデ「……はい。

だから、私はそれを止めたい。

私は混同したくない。

あなたは違う、シグルドではなくて、あなたという勇士です。

あなたはきっと世界を救うひと。

最も新しい英雄。

だからこそ、私、あなたに従うと決めたのに……

……召喚されたのも。

既に壊れてしまった・・・・・・・私がカルデアに至ったのも……

あなたを助けるためです。

なのに、私。

あなたをあいしたくてたまらない。

あなたをころしたくてたまらない。

こんな風に……

狂ったままでいるのは、嫌、だから……

私……

記録を再生したのです……いつもの夜と同じに。

氷のようだった頃の記録、戦乙女であった頃の記憶。

冷たさを心と体に呼び起こさせて、火照った心と体を冷ますんです。

熱を、冷ますんです。

そうすれば、ぎりぎり、マスターを殺さずにいられます。」

「毎晩、そんな事をしてたの……」

アーサー「——なるほど。

仕える者たる戦乙女である事を捨てた君、愛する者を失って心を閉ざしてしまったはずの君。

そんな君が、サーヴァントとして在るのは……

壮絶なる矛盾だ。

だからこそ、精神汚染も狂化も有さない身でも君は狂気を秘めている。」

ブリュンヒルデ「…………。」

アーサー「故に君は、狂気と戦っているんだね。

自分自身で精神のコンディションを調整していたのか。

戦乙女ならではと言うべきなのか、それとも君ならばこそか。

どちらにせよ、君は今も辛い道を歩いているんだな。

ランサー。」

ブリュンヒルデ「あなた、は————

いいえ。有り得るはずがありません。

あなたは異なる世界の……

ああ、でも、そうですね……

……此処は私の記録なのだから。

あなたという影が混ざり込む事もあるのでしょう。

優しいひと、セイバー。」

アーサー「ああ。

今の僕は、そういうモノなんだろう。

(……殺さずにいられる、か。

まさか、霊基そのものが壊れてしまっているのか)」

「ブリュンヒルデはもう大丈夫なの?」

アーサー「……いや。

現在の問題・・・・・が解決したなら、こうして出会って言葉を交わせば君は現実へ戻るはずだ。

具体的に言えば、夢から覚める。

けれど君はまた彼女の記録再生に巻き込まれたまま、雪原の光景の中だ。

つまり、まだだ。」

ブリュンヒルデ「はい。

セイバーの言う通りです。

私は……

緊急の自我切り離しに成功しました。

そして、ここで倒れていたのです。」

「一体何から、自我を切り離したの」

ブリュンヒルデ「……………………。」

「言って。大丈夫だから」

ブリュンヒルデ「……………………わたしから、自我わたしを切り離しました。」

アーサー「炎?」

ブリュンヒルデ「…………私の胸の奥底でくすぶり続けるモノ。

少しでも気を緩めたら、吹き上がってしまうモノ。

マスター。

あなたをシグルドだと思えば思うほどに、私は。

燃え上がらせるのです。

炎。炎。炎。

周囲のすべてを灼き尽くしてしまう……

スルトの剣よりなお熱い、それが私のすべて。」

「探しに行こう。それは多分、切り離しちゃいけないモノだよ」

ブリュンヒルデ「でも、マスター。

炎はいつかあなたを殺します。

困ります。

私、それだけは……したくない……困ります。」

アーサー「ランサー。分からないかい?

殺されないという自信があるんだ、この少年には。

狂気を秘めた君を受け入れる覚悟もね。

大したマスターだ。

そうだろう?」

(頷く主人公)

ブリュンヒルデ「………………はい。

素敵なマスター、です。

私が寄り添ってきた全ての人と同じように、彼は、英雄の心を持っています。」

アーサー「ああ。

話は決まった。

では、切り離してしまった君の炎とご対面といこう!」