現存する最古のサガが9世紀であるのも、その影響さ。人類は長い時間をかけてやっと掻き集めたんだ。在りし日の神代北欧の姿を語る、サガやエッダを——

幕間の物語(女性鯖)

マシュ「——ブリュンヒルデさんとアルテラさんには、伝説上では関係性が存在しています。

アッティラ王をモデルとしたフン族のアトリ王は、ブリュンヒルデさんの実兄であると伝わっているんです。」

アルテラ「以前にもそんな話を聞いたが、私にはなんとも言えないな。

確か、ジークフリートだかシグルドだかと死に別れた姫と私が結婚したという話もあったか。

さっぱりだ。

私は戦うモノであり、破壊するモノ。

妻という存在のこともよく覚えていない。

妹というのも覚えがない。

フンヌの長老たちは私の後継者をどうするか頭を悩ませていたようではあるが、うん。

私にはとんと分からない。」

マシュ「……その、妙というか、不可思議な点があるんです。

アルテラさんはアッティラ大王——

五世紀頃の人物とされています。

一方で、北欧のサガやエッダに語られる伝説や、後年にワーグナーが綴ったブリュンヒルデさんの物語が、果たして同年代の出来事なのかどうか……」

「もしかして、年代が合わない?」

マシュ「はい。

そうなんです、伝説や物語そのままだと年代がどうしても合致しません。

まず、北欧神話には終末の伝説が存在しています。

ラグナロクと呼ばれるモノですね。

神々と怪物たちが最後の大戦争を繰り広げ、世界は炎に呑まれ、大地は海に沈む。

その時点で、神々も怪物も、巨人たちも姿を消します。

一種の“神代の終わり”と言えますね。

やがて北欧世界には人間による新たな時代が始まる……

ブリュンヒルデさんについての伝説が、この終末の以前なのか以後であるのか……

それが分からないんです。」

ダヴィンチ「そうなんだよねえ。

彼女ブリュンヒルデが大英雄シグルドと出逢い、死ぬまでの物語——

ソレがもしも西暦以降、いわゆる神代以降の出来事であるなら、ブリュンヒルデやその出自である戦乙女ワルキューレたちは、既に終わった最終戦争のために魂を集めていた事になる。

有名だろう?

北欧の戦乙女は、最終戦争の時のために大神の軍列に加える“勇士の魂”を集めるモノたちだ。

ならばラグナロク以前、神代こそブリュンヒルデの時代なのか、というと——」

マシュ「……そこでも幾つかの矛盾が発生するんです。

代表的なのがアルテラさん、アトリ王の存在です。

五世紀の人物であるアルテラさんが、西暦以前の神代に、五世紀のエピソードそのままにフン族の王として登場するのは無理があります。

ですから……」

ダヴィンチ「神話や伝説をそのまま素直に受け止めるのは難しい。

何かしらの解釈や発見が必要、ということなんだろうねえ。

そもそもラグナロクの正確な年代は、隠された真実を探求する魔術の世界に於いてさえ諸説ある。

最も有力なのは、紀元前1000年頃という説だ。

紀元前1000年頃に発生したカトラ山の大噴火こそが炎の領域ムスペルヘイムの顕現と暴走であり、それに連なる形で発生したラグナロクによって、北欧世界に存在した古き神々や巨人は滅びた——ってね。」

アルテラ「…………北欧文明の滅び、か。」

ダヴィンチ「神代を文明のひとつと捉えるなら、そうとも言える。

だが。

地誌的な記録で言えば、カトラ山の大規模噴火には西暦930年より以前の記録が存在していない。

なにせ、テクスチャごと消えてしまった・・・・・・・・・・・・・・からね!

星を覆う薄膜……

生態系が息づく現実テクスチャが一枚まるごと消え失せた。

現存する最古のサガが9世紀であるのも、その影響さ。

人類は長い時間をかけてやっと掻き集めたんだ。

在りし日の神代北欧の姿を語る、サガやエッダを——」

ホームズ「……ふむ。

魔術の世界では、そのように言われているらしいね。

長きに渡る魔術的調査の結果として、かろうじて、魔術師たちは大噴火の痕跡と北欧神代の消滅を知った訳だ。

だが、それさえ不確かなものだろう。

仮説と推論を重ねて導き出したもので、事実かどうかは断言できない。」

「……なるほど?」

マシュ「(じ、実はわたしもです。先輩!

わたし、自分で話題を振っておきながら、ムスペルヘイムのあたりでよく分からなく……)」

ダヴィンチ「そりゃあね。

未知の伝承保菌者ゴッズホルダーあたりが突然出てきたら、通説はひっくり返されてしまうかもだ。

まあ、神代の多くはそんなモノだけどねえ。

完全に実証できる神代なんてそうは多くないんだぜ?」

ホームズ「確かに。」

ダヴィンチ「……当時を知るかもしれないブリュンヒルデも、そのあたりは口にしてくれない。

英霊や神霊ってのは割とそういうトコあるよね。

かくいう私もあんまり他人をどうこう言えないんだけど。」

ホームズ「ははははは。」

ダヴィンチ「はははじゃないだろう。

まさにキミもだよ、キミも!

ふう。なんとも真実は遠い……」

マシュ「は、はい……。」

アルテラ「ふうむ、難しいのだな。

いや。並べてみれば単に時代のズレがあるだけだが。」

「アルテラとしてはどう?」

アルテラ「いや。なんとなく。

こうなのでは? という予感はある。」

マシュ「予感、ですか?」

アルテラ「…………。

私の由来・・・・が関係しているんだ、恐らく。

それも断言はできないが。」

マシュ「アッティラ大王の……アルテラさんの、由来……?」

ダヴィンチ「ほうほう?」

アルテラ「私自身、はっきりとは把握していない。

なんとも説明しにくい事柄なのだが——

そうだな。こう考えるといい。

つまり、サンタはワルキューレのお姉さんなのだ、と。

サンタクロース、空飛ぶトナカイに乗る。

ワルキューレも、空飛ぶ天馬に乗っていたはず。

ほら似てる。むしろそっくり。

はい論破!」

マシュ「(ジャンヌ・オルタ・サンタ・リリィさん風の言い回し……!)」

「いや伝説的にはさして関係ないはず……」

アルテラ「ともかく今はサンタパワーの補充が肝要じゃよ。

ほら、そこにみつけたぞ!

(エネミーの声)

きたなクリスマスの精霊!

私に、もっとクリスマスの気配を思い出させるのだ!

微熱もないのにこの格好をするのはちょっぴり恥ずかしい、その恥ずかしさを——

——消し飛ばしてくれ! 精霊たち!」

(戦闘後)

アルテラ「…………よし。

こんなところだろう。

ドゥームZがいなくては、流石の私もただの仮装をした私かと焦ったが、アーチャーとしての在り方も取り戻せた。

取り戻せた。気がする。」

マシュ「気がする……!」

アルテラ「サンタパワーは充分だ。

これで、ブリュンヒルデに贈り物を届けられる。

ではゆくぞ!

ここからが本番だ!」