ミケランジェロの気持ちが今さらながら分かるよ。成る程。厄介な幽霊にもなる訳だ。一人になっても働かなくちゃいけないってのは、存外に堪えるもんなんだねぇ。

幕間の物語(男性鯖)

マシュ「…………無事、地下へ入れましたね。」

フォウ「フォウ!」

マシュ「はい、フォウさん。そうですね。

魔術協会はまだ完全に修復されてはいないようです。

地上部分の大英博物館こそ元に戻っていましたが、こちらはまだ以前のまま……」

ロマニ「助かったよ。

時代の修復がもっと進んでいたら、こんなに容易には侵入できなかったはずだからね。

この迷宮じみた場所は特にね。

彼ら魔術協会の秘中の秘だろうし。

ある種の兵器庫みたいなものさ。

それも特別大切な稀覯きこう本ばかりを収納した書庫だ。

それが、こうも簡単に——」

ダ・ヴィンチ「だからこそ、たちの悪いモノにも侵入されるんだ。

感じているかい、マシュ?」

マシュ「はい、前方に魔力反応を感知。

先輩、注意してください。」

フォウ「フォウ!」

マシュ「スペルブック型の敵性体であると予想されます!

もう、魔霧の影響はないはずなのに!」

ダ・ヴィンチ「本来、ブリテン島には色濃い神秘が眠っている。

現実が時代ごと修正されるだなんてイベントの最中なら、本が人が喰う・・・・・・ぐらいの事はいくらだってあるよ。

さあ、来るぞ!」

ロマニ「当然みたいに変なこと言われたけど、うん、戦闘だ!」

(戦闘後)

マシュ「敵性存在の全個体撃破を確認しました。

お疲れさまです、先輩。」

「マシュこそお疲れさま」

マシュ「……はい。」

ダ・ヴィンチ「自由に歩く、かぁ——

少ない人数で切り盛りしているカルデアにおいて、外部の攻性理論の組み立て
は私の仕事になってしまった。

まあ、特にどうという事もない作業だから苦ではないけど。

朝も夜もなく仕事仕事、仕事ばっかりで——

ああうん。

まあ、キミが契約を結んでくれてからはちょくちょく混ぜてもらえているけどね?」

マシュ「そうですね。確かに……

調査も戦闘もずっと一緒というのは珍しいです。」

ダ・ヴィンチ「だろ?

私は今、とっても楽しいよ。

ワクワクする!

フィールドワークならもっと嬉しかったなぁ。」

マシュ「フィールドワーク、ですか?」

ダ・ヴィンチ「野外なら色々と思い切りやれるからね。

ここのロケーションじゃあ、焚き火ひとつ難しいだろ?」

ロマニ「(まさかとは思ったけど、やっぱりキャンプ気分だなレオナルド……)」

ダ・ヴィンチ「小声でも聞こえてるぞーロマニ。」

ロマニ「あっごめん……

いや待って、今のはボク悪くないよね。別に。ボクは。」

フォウ「フォウ……。」

ロマニ「そんなことよりも、だ。

ロンドンに発生してる異常はこの迷宮でいいんだね?

ダ・ヴィンチちゃんには確信があるようだし、魔本にも遭遇したからまず間違いないんだろうけど、こちらの観測ではハッキリしないんだ。

魔術協会に本来あるハズの結界が再稼働して、カルデアからの干渉をある程度弾いてるのかもしれない。」

ダ・ヴィンチ「どうかな〜?

人を喰う本なんて自然に湧いてもおかしくない。

それにね、私だって間違えるかもしれないよ?

これでも一応は人の子だったんだ。」

マシュ「…………ダ・ヴィンチちゃんが、間違える?」

フォウ「…………。」

「冗談だね」

ダ・ヴィンチ「あはは。

見破られたか、その通りさ。

キミの言う通り、きっと私は間違えないんだろう。

私は万能だ。

多くの人々の望むがまま、まさに万能だ。

だから今回は少し残念に思ってもいる。

こんな形では再会なんてしたくなかったんだよね。

この私に並び立てる者は、私の時代にはいなかった。

何せ私は天才だ。

それもただの天才じゃあない、万能の天才・・・・・」だ。

私が生まれ持って有する才能は分野ひとつに留まらない。

絵画、彫刻、建築、兵器、木工、解剖、自然科学……

ああ、そう、魔術もそうだ・・・・・・

ありとあらゆる分野が私にとっての遊び場だった。

誰も彼もが私の隣にいなかった。

皆、私の後ろから付いてくる者ばかり。」

マシュ「……………………。」

ロマニ「……レオナルド。」

ダ・ヴィンチ「それでもね。

まあ、分野の幾つか・・・程度なら……並ぶ者もいたっけ。

たとえば、そう——キミとかね。」

マシュ「……魔力反応!

目視ではゴースト系と予測!」

ダ・ヴィンチ「さあ。やろうか。

私はね、キミに逢いに来たんだよ——

ミケランジェロ。」

(戦闘後)

ミケランジェロ「……………………」

(消滅する音)

ダ・ヴィンチ「さよなら、ミケランジェロ。

あくまで芸術のみの事ではあったけれど……

確かに、私に劣らぬ天賦の才を以て並んでくれた愛しき友よ。

よりにもよって、ねえ。

なんでまた魔術協会の書庫なんかをうろついたんだか?

或いは、あれかな……

特異点の異常のせいで大英博物館あたりに浮いた亡霊が、すてんとそのまま地下まで落ちたとか?

ははは。

まあ、意外とそういう下らないオチかもね。」

フォウ「フォウ、フォウ。」

ダ・ヴィンチ「とはいえ……

まあ、ミケランジェロ。

少し安心したよ。

キミが英霊として座へ収まらずにいてくれて、ね。

少なくとも、魂はこれで安らかに眠れるはずだ。

もう、おやすみ。

この私ならざる、もうひとりの万能の人ウォモ・ウニヴェルサーレ。」

ロマニ「…………。」

マシュ「…………ダ・ヴィンチちゃん。」

フォウ「フォウ……」

「もしかして彼とは特別な関係だった?」

ダ・ヴィンチ「ん——

さあ、ソレはどうだろうね。

他の人々よりも特別であったのは確かだけど、私たちの関係をどういう風に言ったらいいのかなぁ。

私は天才。彼も天才。

ミケランジェロといえばキミたちも名前は知ってるだろ?」

マシュ「は、はい。

ミケランジェロといえば、ルネサンスの巨匠として知られる芸術家です。

特に彫刻や絵画、設計の分野で天才的な才能を見せたと言われています。」

ダ・ヴィンチ「うんうん。

いいよね、ダビデ像とか。

私も好きだぜ。

……ああ、まあ。そうだなぁ。

好きだったんだ。

愛かどうかは分からないけど。」

ロマニ「………………。」

「モナ・リザより?」

ダ・ヴィンチ「————うん、それはないかな。」

フォウ「フォ、フォウ!」

ロマニ「即答ときたかー。

んー、哀れミケランジェロ。

いや、彼が何を思って彷徨っていたかは不明だけどね。

私のほうが先に死んだからねぇ、アレじゃないか?

想いが積み重なってしまったとか、色々あってねじくれてしまったとか、そういうアレ。

う、うん。

そういう解釈でキミがいいならボクも別にいいんだけど。

いつもと違う雰囲気に入った気がしたのは、まあ、ちょっとした見間違いとしておこう。

ともかく、特異点の微小な異常についてはこれで安定したようだ。

それじゃあ、帰還の準備を始めるとしよう。

みんなお疲れさま!」

マシュ「はい、ドクター。

お疲れさまでした。」

ダ・ヴィンチ「ふふふ。さあドクター。

私が手伝わなくてもレイシフトできるかな〜?」

ロマニ「できますよ、できますとも。

いつもやってるじゃないか……

ボクやってるよねえ!?」

ダ・ヴィンチ「いつもは私が陰でこっそり調整を——って、こほん。

うそうそ、キミは普段からやれてるさ。」

ロマニ「えっ、待ってくれないか。待て待て。

ボクはもしかして一人で機能調整やりきれてないのか!?」

ダ・ヴィンチ「あはは。

それでいいじゃないか!

キミは一人じゃないし、私もいるしスタッフだっているんだ。

勿論藤丸や、マシュもね!

私が言うんだから間違いないぜ。

一人で何もかも・・・・・・・やったって寂しいさ、楽しくやろう!」

ロマニ「い、いえそういう話じゃなくってですね!?」

フォウ「フォウ、キャーウ!」

ダ・ヴィンチ「……なーんて事があったのも、もう随分前になるかな。

第五特異点か第六特異点の修正後だったかな?

確かそうだ。

うん、まだウルクに行く前だったから。

ふう……。

ああ、すっかり思い出してしまったなぁ。

私からキミへの教訓のつもりだったのに、巡り巡って、私に直撃しちゃったじゃないか。

ああ……うん。

やっぱりこれは、直撃だ。

ミケランジェロの気持ちが今さらながら分かるよ。

成る程。厄介な幽霊にもなる訳だ。

あーあ。

一人になっても働かなくちゃいけないってのは、存外に堪えるもんなんだねぇ。」